第19話

「よいか黒いの」


「轟音が聞こえたのはこの廃教会!恐らく鎧の魔物がいるとみて間違いないだろう!」


oh…何てことだ。今から黒いシスターに情報を話そうとしたというのにシスター二人との乱痴気騒ぎを聞きつけて先の冒険者集団が戻ってきてしまったようだ。ひとまず落ち着く時間が欲しい。そう切に願うアイアンゴーレムであった。


「各員戦闘態勢ぇ!突撃用意!」


「なっ!?どうして冒険者がここに!?」


そりゃああれだけ騒音を立てた上に建物の一部を崩壊させればどんな馬鹿だって何かが起こっていることに気付くだろう。それにしてもこの状況は不味い、先の戦闘で身体は満身創痍。神経をすべて自己修復に回しても間に合ってコアを纏える程度といった所。


・・・・詰んだか。


「何勝手に諦めてるのよ!一旦逃げるわよ!」


「何だ、我の事を助けてくれるのか?」


「あなたがシラスの病について知ってるから仕方なくよ。話はあとでゆっくり聞かせてもらうから」


どうやらこのシスターたちも追われの身のようだ。確かにこんな場所を住居にしている時点で何か問題を抱えているのは目に見えていたようなものだったか。


「もちろんだ。無事にこの場から逃げおおせた暁には我の知っていることを全て話し、その改善にも力を貸すことを約束しよう」


「ふん、魔族の約束ねぇ・・・」


「魔族が約束をするというのは変か?」


「・・・・」


含みのある言い方をする彼女に聞くが何故か無視された。我は悲しい。

そんなことを思っていると体が宙に浮く感覚を感じる。どうやらシスターが我の事を拾って持ち上げたようだ。心なしかコアがミシミシと音を立てているような気がするがこやつかなり手に力込めてないか。


「はぁ、折角いい場所だったのに残念ね」


その言葉の意味は今の我には理解できなかったが、その表情は憂いに満ちているようにみえた。

彼女はシラスと呼んでいた白のシスターを抱え上げ、ぽつりとつぶやくとその場を後にした。


「「突撃ぃぃぃぃぃ!!」」


そしてアイアンゴーレムとシスター二人がその場を後にした後すぐに冒険者たちが号令と共に入教会へとなだれ込むがそこには当然誰の姿もない。隅々までくまなく探した冒険者たちだったが最終的に見つかったのは外装の欠片だけ、結果捜索は打ち切り、何だかんだで我は冒険者集団から無事逃げ切る事‘には‘成功したのだった。


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