第15話

「・・・いったい何の真似ですか、ノイム」


ガタガタと揺れる馬車の中、アイアンメイデンがノイムへと不満げに問いかける、その表情は何時にもまして険しい。


「聞いているの?本当ならあの方の傍を一時たりとも離れたくないというのに、あなたがどうしても二人きりで話したいことがあるというからこうしてついてきたの。早く要件を話して頂戴」


「も~そんなに焦らなくてもいいじゃないか~」


そんな彼女に反してノイムは普段と変わらない様子、しかしアイアンメイデンが目的について話すよう急かすので渋々といった形で話す体制をとる。


「まぁじらしても仕方ないしねぇ」


「単刀直入に言うけど、あの男とは離れるべきだ」


その一言で空気が凍る。

先ほどまでの少し重い空気とは違う、明確なる殺気を放つアイアンメイデン。もし周囲に一般人がいるのなら卒倒してもおかしくない。そのレベルの敵意を友人へと向ける。


「二人きりで話したいこととはそのような下らないことと捉えていいのかしら?賢いあなたがそのような下らない事を言い出すとは思いたくないのだけれど?」


「ううん、それが言うんだよね~・・・・大切な友人のためならさ」


2人は一触即発、ノイムは真剣な表情をしつつもまだどこか余裕のある喋り方をするがアイアンメイデンは違う、一瞬にして馬車の中はいつ殺し合いが始まってもおかしくない状況へと変貌する。


「ねぇメーちゃん、もう何かに縛られて生きる必要はないんだよ」


「っ!・・・・何を」


一瞬アイアンメイデンの表情が歪む。しかしノイムは話す手を止めない、それが彼女のためだと信じて話を続ける。


「確かにあの魔王軍幹部のゴーレムはメーちゃんをあの村から救ってくれた恩人かもしれない、でももうあの男は魔王軍でもないしもう十分恩は返してきた。これ以上村の奴らやあのゴーレムに縛られる必要なんかない、自由に生きていいんだよ【メディシア・サークリス】」


「やめて!そんな名前はあの村を、あいつらの元を離れた時に、アイアン様についていくと決めたその時に捨てた!私は誰でもないあの方の傍に仕えるただのアイアンメイデン・・・・二度とその名前を口にしないで」


今までに見せたことのない程に怒りの表情を露わにするアイアンメイデン、話を切り出したノイムもこうなることは心のどこかで分かっていたはずなのに彼女の表情を見て顔を俯け曇らせる。


「ノイム、あなたは何か勘違いをしているようですがアイアン様に仕えているのは全て私の意思、そこにアイアン様の強制など微塵もありません。私を救ってくれたあの日から私のすべてはあの方の物、何なら私が縛ってしまいたい程にね」


(そういうところが危ういんだけどな~)


アイアンメイデンの過去を知っているからこそのノイムの心配。お節介と言われればそれまでかもしれないが、それでも彼女にとって大切な友人を思うが故にこのように行動している。簡単に引き下がるわけにもいかない。


「そこまで言うなら賭けをしようじゃないか」


「?」


「もしあの男がメーちゃんの言う通りなら突然いなくなったメーちゃんを探しに来るはず、本当に障害を乗り越えてでも来たならばあたいは金輪際この事については口出しをしない。でも探しもしないようなメーちゃんに相応しくない奴なら・・・」


「あたいがこの手で殺す」


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