第14話
「——てこい!魔族——!」
何やら外が騒がしい。
久方ぶりに人が気持ちよく眠っていたというのにいったい何事か。その騒音から逃げるように布団を頭まで深くかぶる。
床は冷たくとも掛布団の暖かさは健在、ゴーレムとはいえ暖かさは恋しいものだ。
「いる―――かっている!人を襲う――め!」
しかしどれだけ無視を決め込んでも家の外の騒ぎは一行に収まりそうにない。それどころか入り口のドアをたたく音まで聞こえ激しさを増しているようにも思える。
一体我が何をしたというのか、気が進まないがこのまま無視を続けていたらドアを蹴破ってきそうな勢いなので仕方なく重い体を起こして玄関へと向かった。
「はいはい、どうかされましたか?」
ガチャリと玄関のドアを開ける。すると玄関先には多くの人族の姿があった。数は数十人とかなりの人数がいるようで、そのうえそれら各々が剣や弓、杖といった得物を手にし尋常ならざる様子。
「スタンドードの街を襲撃させたのはお前だな、鎧の化け物」
恐らく冒険者と思われる人たち(以前勇者一行とであった時にも似たような格好の人たちがいたしなぁ)の中から一人の男が両手剣の切っ先をこちらに向けそう言う。
というか誰が鎧の化け物か!我はアイアン・ゴーレムだゾ。
そのことはどうでもいいとして、このガタイのいい強面おじさんは何のことを言っているのだろうか。スタンドードの襲撃を裏で操っていたのが我だと思っているようだが全く持ってそのようなことに加担した覚えはない。
「悪いがそんなものは知らん、人違いだし帰ってくれんか」
「ふざけるな!お前が魔族だという事は既に知れている!」
どうにも話ができる相手というわけではなさそうだ。それにどういうわけかまだ人族では姿すら見せていないというのに魔族だという事がバレてしまっているようだった。やはり人族に馴染める容姿ではなかったか?
何にせよ非常にまずいことになった、この場をうまく切り抜けなければ我が魔族だという事がスタンドード周辺地域以外にも知れ渡る可能性がある。そうなってしまっては最後、魔族と人族の両方から指名手配されることになるだろう。
「まぁ少し落ち着くのだ、どこからそんな情報を強いれたか知らんが我は最近ここに来たばかりで本当に知らん。ここも知人の家で―――」
そこまで言ってある事に気付く。このような騒ぎになっているというのに何故かノイムとアイアン・メイデンの姿が見えないのだ。街へと足を運んでいるのかとも考えたが、人族以外街へ入れない今ここらに居を構えてるノイムはどうなのかわからんが、アイアンメイデンまでいないのは不自然。
「情報提供者はお前を泊めたノイムという少女だ」
「なん・・・だとっ・・・」
やはりそういう事だったか、なんかおかしいと思ったんだよなぁ。昨日ノイムの様子も途中からおかしかったし、いつも我が寝るまで監視しているアイアンメイデンもそれをしなかった。
やはりあいつらが何の裏もなく我に付いていたのを疑うべきだったか、あ奴らも魔王の手先だったという訳になる。まさか人族をあてがうとは考えたものだ。理由はどうあれそうなるとここをどう切り抜けるかだが、殺してしまうのは論外なので仕方ないが逃げるしかないようだ。
「すまんな冒険者諸君!我とて無実の罪で殺されるわけにはいかないのでな!」
「な!?壁をぶち抜いた!?」
身を翻し冒険者たちに背を向けるとそのまま壁をぶち抜いて全力で走り出す。その後を冒険者たちが追いかけるが一瞬呆気に取られて反応が遅れたためアイアンとの距離は大分離れてしまっていた。
「追え!追うんだ!」
こうしてアイアンと冒険者たちの追いかけっこが始まったのである。
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