第13話
「そういえば人族に馴染むなら人族らしい名前が必要だよね~」
ノイムの家で一晩世話になることになったアイアンゴーレムたち、そんな二人にノイムがふと疑問に思たことを問いかける。二人としては街に入ってから考えるつもりをしていたが、街に入れなくなった以上その手は使えなくなってしまっていたので先送りにしていた事柄だった。
「その通りだ。必要になるだろうとは思っていたがどうやら間違いないみたいだな」
「そうねぇ、メーちゃんはそのままでもいいだろうけど君は種族名しかないよね?」
「む?その通りだが、我だけでなくこ奴も種族名しかないぞ?」
ノイムの言い方からするにアイアン・メイデンには種族名や二つ名とは別に名を持っているというように聞こえる。しかし魔王軍にいた時からそのような話を聞いたことは一度もなかった。
「えっ?メーちゃんもしかして・・・」
アイアンが疑問に思ったことをそのままぶつけるとノイムはわかりやすく困惑していた。それと同時にアイアンメイデンのポーカーフェイスが僅かに崩れたのを察する。理由までは理解できないが、恐らく種族名ではない真名に何かしらの思いがあるという事は少なくとも理解できる。
「まさかこの我を何年も騙していたとはな、やはり何を考えているかわからぬ奴だ」
「・・・・申し訳ございません」
今まで散々揶揄われてきたので皮肉を多少込めて冗談交じりに話す。いつもなら「あなたに~」などと更に上から皮肉を言ってきそうなものだが、どうやら想像以上にこの話題は重い様でいつになくしおらしい。
「ちょっと!そんな風に言わなくてもッ!メーちゃんだってその、訳があって話したくないことの一つや二つあるだろう」
こんな状態のメイデンも珍しいものだななどと思っていると、横からノイムが怒った様子でこちらに詰め寄ってきた。メイデンと彼女が本当に親しい仲というのは疑いようのない事実なのだろう。ここまで必死にかばうというのも納得がいく。
しかし状況から見て我が悪い風になっているのはどういうことなのだろうか?この話題を振ったのは彼女だと思うのだが・・・・とここで言ったところで意味はなさそうなのでぐっと心にしまっておく。
「別に責めているわけではない。勿論理由を話せという気もないから安心しろ」
「宜しいのでございますか?」
「あぁ、話す気のない者から無理に聞き出そうとするほど我は愚かではない」
実のところ話せば長くなるタイプの話題なのは確定なのプラス精神的にしんどくなりそうなので聞きたくないだけなのであった。あのクールを決め込んでいたメイデンがここまで崩れる話題なんてろくでもないに決まっている。それが彼の本心だった。
なんてひどい男なのでしょう
「まぁそういう事だからノイムよ、我ら二人に名前をくれんか?」
「え!?なんであたい!?」
という事でこの話題は終了、本題であった人族に馴染める名前を決めるというところに戻るのだが、これに関しては人族にある程度の見聞があるノイムに考えてもらうのが一番だろうと話を振ると当然だが彼女は驚愕して困った顔をする。
「私からもお願いするわ」
「うぇ、メーちゃんまで言うんだ~・・・・でも分かったメーちゃんにそこまで言われたら考えるしかないね~」
アイアンが言うだけでは渋っていた彼女も親友の頼みには弱いのか渋々といった感じで了承する。しかし彼女も他人の名を決めるなど初めてなのだろう、提案を飲んでからぶつぶつとあぁでもない、こうでもないと呟いている。
――――数分後
「どうだ、いい名は思いついたか?」
「うっさいな~、そんなすぐ思いつくわけないだろう~」
軽い気持ちで聞いたところ怒られてしまった。
どうやらこれは思っていた以上に時間がかかりそうなので少し早いが我は就寝することにした。久しぶりに暖かい布団で寝れると思ったが、この家は多少広いとはいえベッドはノイムと客人用に1つづつしかない模様。消去法でアイアンは床で寝ることになってしまった。
アイアンメイデンは壊れたラジオのように「私は一緒で構いませんよ」と繰り返していたが、ゴーレム種は元より感覚が鈍いのでこの三人の中で床で寝るべきが誰かは一目瞭然だったので丁重にお断りした。
・・・・別に寝てる間に食われるのが怖いとかじゃないからね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます