第38話 90日で終わらせる対宇宙帝国反乱戦 その1

 えーと。どう解説したらいいかな?

 SF超大作!と銘打たれる映画の紹介トレーラーやクライマックスで流される、宇宙戦艦や宇宙戦闘機が入り乱れ、ビーム光線やミサイルの破壊光が絶え間なく瞬く宇宙空間に、はい、真紅のドラゴンが放り込まれました!


 いや、メディアミックス?B級映画とかまで探せばあるのかも知れないけど、無理が無いかな?

 とか思いつつ、まずは全身を結界で覆った。


「セリカ、息とか大丈夫?」

「息は大丈夫だけど、これは・・・・・」

「まぁ、うん、とりあえず背中にしがみついてて」



 視野には大きく分けて、だいたい紅白の軍勢が混在して戦ってた。白緑に塗り分けられた艦艇とかと、赤黒ぽく塗り分けられた艦艇とか。他にも黄色や水色ぽいのも若干混じってたけど、白緑対他の色混合との戦いに見えた。勢力比は白緑が5に対して、その他が2から1くらいでかなり劣勢。見てる間にもどんどんやられていってた。


 猫魔獣ニャロザウロから奪った透明化を発動して、自分の姿を背景に溶け込ませた。皆さんとりあえずお忙しそうだったので、突然現れたドラゴンを見たとしても、正気を疑って余所見してから二度見するまでの間に見えなくなってたら、やっぱ気のせいだったよなー、あははーって感じで流してくれたらしい。


 とはいえ、物理的に消えてる訳じゃないから、結界に当たって弾いてるレーザーとかを不審に思ってる人達も中にはいるかも知れない。


<急いで下さい>


 視野には、ヘルプ機能さんから進行方向が矢印で示されてた。戦闘には手出しせずになるべく急いでそちらに向かうと、白緑の艦艇に取り囲まれた一際大きな赤黒い戦艦がいた。

 その姿は、まるで首をまっすぐ相手に伸ばしてブレスを吐こうとしてる大きなドラゴンに見えた。ジャンボジェット機を何機もつなぎ合わせたくらいには長くて、両翼に当たる部分とか胴体とかもかなりぶ厚かったのだけど、あちこちが爆発炎上してて、複数の白緑の小型艦に接舷されて、その内の一つにターゲットの矢印は向いていた。


「はいドーン!」

 て感じで結界を解き、両足の鉤爪で小型鑑を鷲掴みにして、中にいた白緑系の兵士達ぽい皆さんをポータルで宇宙空間にぽいしていった。こういうの小型揚陸艇とかいうんだっけ?突撃艇?まぁどっちでもいいや。


――ここの敵、全部片づけていいんだよね?


<ここから離脱する事を推奨しますけどね>


――どうせ後から全部つぶさなきゃいけなくて、味方はとっても少ないんでしょ?だったら有効活用できるよう助けておかないと


 ヘルプ機能さんのため息が聞こえた気がしたけど、気にしない!

 再び全身を(つかんでる小型艦も含めて)結界に包んで、透明化を解除!


 SFの世界に、突然ファンタジー生物が紛れ込んできたら混乱するよね?その合間にドラゴン・ブレスをため込んで、結界の内側に展開した赤ポータルへ吐いて、結界の外側に展開した青ポータルから発射!

 吐き続けたドラゴン・ブレスを青ポータルの角度を巡らせる事で赤黒側の旗艦周辺にいた敵艦を一閃して爆発炎上させていった。

 シールドぽいものも張ってたみたいだけど、ほんのちょっとの抵抗が引っかかったくらいで貫通撃破出来た。

 これで完全に戦場の関心を一身に集めたらしく、白緑の戦闘艦や戦闘機は一斉攻撃してきた。光線ぽいのも、ずっと照射してくるようなのや、断続的に打ち込んでくるのや、色も赤や青や白や緑とか、それぞれにSF的性質の違いがあったりするんだろうけど、中二未満の13歳に違いはわからん!(いやもう実質14歳にはなってるかもだけど、戻ったら時間経ってない可能性もあるのでノーカン!)


 ミサイルにも大きいのや小さいのや、とっても大きいのはあれはミサイルじゃなくて魚雷なのかな?とりあえず大半は赤ポータルで受けて、まとわりつく戦闘機とか敵艦に青ポータルでお返しして、敵勢の数をとにかく減らしていった。


――やばい攻撃だけ警告して!あと、敵の旗艦の位置を教えて!


<光学系兵器は打たれたら少なくとも結界には当たると考えて下さい。あなたの結界も絶対的な防御だと過信しないように>


――だからそれを貫通してくるようなのだけ警告して!あとガイドよろしく!


<・・・・・>


 受けて、返す、だけじゃなく、ちょっと返すのも大変そうな状況になった時は、近くにいる一番大きな敵艦にドラゴン・ブレス発射!たいていはそれでシールドが剥がれて貫通するので、そこに突撃!貫通してなくても表面は抉れてるので、結界のまま突貫して艦体をぶちぬくと、たいていはそのまま爆散してくれたし、俺に追い縋ろうとしてた戦闘機とか実弾系攻撃とかもまとめて始末してくれた。

 そうやって近場の勢力比を1対5から、1対4、1対3くらいにまで落としていく間に、かつて勇者からもらった奪った千里眼で、おおよそ100キロくらい先にいる敵本隊と旗艦の位置に極小の青ポータルを展開し終わった。


<敵旗艦にロックオンされました。結界で受けきれない攻撃が来ます。発射まで後十秒。カウントダウン開始されました>


――相手は味方ごと撃ち抜くつもり?


<そのようです。発射まで、7、6>


 敵影のなるべく濃いところに突っ込んで、同士討ちさせるのでも良かったけど、ただでさえ数が少なくなってる反乱軍側も巻き添え食うのは目に見えてたので、旗艦側に待機させてた青ポータルへと赤ポータルをつなげてサイズ拡大して転移。


<3、2>


 で、相手主砲。2門あった巨大な砲門の前に赤ポータルをぴったりサイズくらいで展開。美味しそうな主砲攻撃をたっぷりと全て頂きました!

 それらをすぐに旗艦に向けてお返し?いえいえ、そんなもったいない事はしませんとも。

 一辺が1キロ以上はありそうな、巨大なひし形はんぺんみたいな敵旗艦に結界張ったまま着地。シールドも強力みたいだったけど、結界と相殺した感じで、艦体に着地。


「全ての動力をポータル飛ばせ


 と唱えて、艦としての抵抗力を全て奪った。うん、こんなの、人力とかで動かしてるわけ無いからね!続けて情報収集とかもしつつ、脱出艇の類もポータルしたり、相手の指揮官の位置をヘルプ機能さんにターゲットしてもらって、ポータルで拉致したら、


「船内にいる全ての生命体、機械ロボットを船外へポータル飛ばせ


 で、人間的乗員や警備ロボットその他が、何千人だかって何万人だかって単位で宇宙空間に飛び出してきました!そしたら仕上げ!


「この艦体を収納!」


 はい、どこまでいけるのか不明だったけど、無限サイズなら、キロ単位の大きさの構造物だって収納できちゃうよね!


 旗艦周辺にいた護衛艦の類も、ほぼ同様の手順で撃破したり無力化したり。艦影が無くなったら、反乱軍を放ってこちらに急行してきた敵艦も以下同順。

 ここまでしたら流石に反乱軍が戦況を逆転して、生き残った敵軍艦艇は三々五々にどこかへ逃走したみたいだった。


 たぶん、白緑側はドラゴンなんてUMAが現れて味方を潰走させられたとか、赤黒側はドラゴンに救われたとか、そんな通信が飛び交ってるんだけど、浮かれる暇は無い。


 出現した戦闘宙域に戻って、なるべく無事そうで、なるべく大きめの赤黒の艦艇の甲板に着艦。シールドのすぐ上でしばらくホバリングしたら、シールドを解除してくれた。SF世界の人々も空気読んでくれるみたい。空気の無い空間でも。


 それはともかく、足で掴んでた小型艇を収納。その中で小結界に個別に包んでた反乱軍のお姫様と敵司令官は直前で外に出しておいてから、自分も竜化を解いて、自分とセリカを個別に結界で包んだ。


「ハルキ、お疲れ様」

「セリカも無事で何より。てかまだ一息つけないから、その服は着たままでいて」


 反乱軍のお姫様は、白い衣装、ではなく、やっぱり赤と黒の、竜の鱗とか体躯をイメージしたような衣装に身を包んでいたし、敵の司令官は、コーホーとか呼吸音漏らしてそうな黒い宇宙甲冑?みたいなのとフルフェイスマスクではなくて、どちらかと言えばエルフぽい民族衣装を身につけた人間の男性に見えた。


 けど―――


「この、悪竜めが!」


 てつぶやいたと思ったら、手元から青白い光が伸びて、閃光が結界を切り裂いたとほとんど同時に、自分の首筋に閃光が迫っていた。


――時間をポータル飛ばせ


 自分の肌に閃光が触れるか触れないかというタイミングで、世界の時間が止まった。

 スキルレベル100になって得たボーナスが、この時間停止。コストは、止めてた時間の100倍の寿命。俺はとりあえず相手の体に触れて全ての武装と、全ての有用な記憶と情報を抜き取って、再び小結界に閉じこめてから、時間の動きを戻した。


「ハルキッ!」

「大丈夫だよ。いやまじもんのジェ○イとかシ○までいるとは思わなかったけどいたのか。とりあえずそこのお姫様」

「は、はい。私の事でしょうか?」

「えーと、自分はこれから帝国の前線基地とか艦隊兵力とかを潰しに行きますから、同行願います。あなたと、そうですね。この近くにいる反乱軍首脳部の何人かには同行して欲しいので、最低十人くらいは乗れる小型艦みたいの準備してもらえませんか?10分、は無理か。30分以内に」

「潰しに行くとは、お一人で、ですか?手勢は?ここにいる残存艦の動ける者達だけでも」

「いらない。ここの戦いの残務処理だけでもまだまだかかるでしょ。それに」


――ヘルプ機能さん。ここからちょい離れた誰もいない場所に、さっき収納した敵旗艦出して


<サービスしておきます。ただし、警告しておきますが、あなた一人で帝国を倒してはいけません。その場合、ミッションは失敗と判断されます>


――さっきの司令官が認識してた前線基地全部潰すのはセーフ?


<それで勢力比が82対18くらいだったのが、63対37くらいですから、許容範囲です>


――どこまでがライン範囲


<五分五分以上に持ち込んではいけません>


――帝国首都惑星落としても?


<却下です>


――じゃあそこの星というか星系?の守備兵力をぎりぎりまで削るのはセーフ?


<ある程度余裕を残しておく事を、強く、推奨します>


――わかった。ありがと、ヘルプ機能さん


<どういたしまして>


 俺はヘルプ機能さんのガイドに沿った位置に敵旗艦を取り出して告げた。


「あれもあげるから使い物にするといいよ。捕虜も相当数得られるだろうけど、最優先で準備するのは、敵の前線基地潰しへの同行準備だから。イムジェリアさん」

「一つだけ、聞かせて下さい、ハルキ様」

「なに?」

「あなたは、失われし竜の神、なのでしょうか?」

「んー。たぶん、あなた方の神であった誰か、ではないでしょう。けど、竜の神っぽい誰かではあるかも知れません。とりあえず、そんな話はまた後で。準備、急いで下さい」


 艦体の中から現れてきた団体さんがお姫さんを取り囲んであれこれ質問攻めにしたり、よくぞご無事でとか感涙に咽んでたりしてたけど、その内の何割かは、ファンタジー的には竜人ドラゴノイドと呼ばれるような竜頭人身だったし、お姫さんの頭部にも後方に向けて左右から二本の角が生えてたし、背中には翼、お尻には尻尾も生えてて、その大半は鱗に覆われていた。

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