第37話 猫ちゃん探し?(二度目)
二度目開始直後。
一度目よりも手短に襲撃者と監視役を排除。
「助けに来た。しばらくおとなしくしてて」
とだけ告げて、近辺の襲撃者も探知して、命やら有用な記憶やらを奪っていく。芋蔓的にお仲間の位置情報なんかも積み重ねつつ、前回ミミリアの命を奪った連中も片づけ、セリカにアマラへの説得役を任せながら約30分かけ、一通り辿れる限りの敵(転移された町中のは)全滅させてから、さきほどミミリアが殺されてアマラが泣きながら看取った場所で、映像も見せながらさらに説得。
「信じてもらえないかな?」
デジタルビデオカメラの映像を確認できる液晶画面から、ミミリアの死骸を抱きしめ、泣き叫ぶ自分の姿と、信じてと言われた俺の姿を見て、アマラは、こくりとうなずいてから、尋ねてきた。
「でも、どうして?どうして助けてくれるの?」
「そういう使命を負わされたから。詳しくは、ミミと合流できてから話すよ」
アマラは再びうなずいてくれた。
ここまででおそらく第一段階が完了。
まだ探知魔法にミミリアの反応は無い。
「さて、そしたらミミリアを探そう。だいたいの方向はわかるから、ミミに呼びかけてもらえないかな?」
「わかった・・。ミミー、ミミー!もう出てきて大丈夫だよー!」
最初に出現した地点と、ミミが殺された地点をつないだ直線を延ばした先の方へと俺達は向かった。
宵闇に包まれた街中。道行く人影はどちらかと言えばまばらで、ミミの両側に俺とセリカが立って周囲を警戒した。
そして15分くらい歩いた先にはどでかい貴族の屋敷があった。
門番の兵士が二人立っているのに、アマラはお構いなしに鉄門扉にとりついて、その奥に広がる庭園に向かって呼びかけた。
「ミミー!いるなら戻ってきてー!」
衛兵達がアマラに手をかける前に、俺は彼女の体を門扉から引き離して、
「この子の黒猫を探してるんですが、ご存知ないですか?」
と兵士達に問いかけてみた。
兵士達は微妙な視線をかわした後、門扉の前に槍をかざして警告してきた。
「知らん。失せろ」
「スェイ様ー!アマラです。ミミが、ミミがここにお邪魔してませんかー?」
「失せろと言っている」
兵士が槍先を向けてきそうになったので、俺はアマラを抱き抱えて耳元で囁いた。
「ここの誰かもミミの事を知ってるのか?」
「うん。ミミを譲ってくれって言ってきたお貴族様の一人」
「いったん退くぞ。心配するな」
ミミがおとなしくなってくれたので、兵士達も槍先を戻し、俺はしばらく道を戻ってから脇道に入り、アマラに尋ねた。
「ミミは有名になって、いろんな人に欲しがられていた。あそこの貴族様が、その一人ってわけか?」
「うん。スェイ様は、私もミミも助けてくれようとした、んだけど・・・」
「だけど?」
「教会の枢機卿からミミを差し出すよう命令されちゃったから、守れなくなっちゃった。ミミと逃げてって言ってくれたんだけど・・・」
「アマラのご両親は?」
「パパはミミを売ろうとして、ママはミミを教会に差しだそうとしたの。だから、あたしはミミを連れて逃げたの」
ここまでで1時間経過。残り1時間。半径1キロ内にミミリアの反応無し。もちろん、あの貴族の館を含めて、だ。
「ハルキ、どうするの?」
「最終手段はあるけれど、まだ焦る段階じゃない」
俺はピンホールカメラのようなポータルを町上空に展開し、全体像を把握。まだ探索していないエリアにポータルを開いて移動しつつ探知魔法でミミを探し、どこにも反応が無い事を確認してから、さっきの貴族の館の屋根の上へ移動。空き部屋を探してさらにポータルで移動してから、ピンホールカメラで館内をくまなく探索したけど、ミミは見つからず、アマラに尋ねた。
「ミミは、どんな事が出来たの?」
「うんとね。姿を消したり、どこかに閉じこめられてもひょいって出てきたり、人とお話ししたり」
「他には?」
「わかんない・・・」
残り45分。
仕方ない。思いつきだけどやってみるか。
赤ポータルと青ポータルを背中合わせにくっつけたのを部屋の形に合わせて、天井から床までゆっくりと移動。
そこにいる自分達や家具などは影響を受けずに、赤から入ってそのまま青から出てくるだけ。
「ハルキ、これにどんな意味があるの?」
「スキャニングっていうのかな。これを建物ごとに行ってみる」
敷地上空にセットしたピンホールカメラ映像を元に、建物毎に屋上から地下までをゆっくりとスキャンしていく。五つある建物を終えても反応が無く。残りは20分を切った。
これでダメなら最終手段!とばかりに、がっと敷地全体の広さにポータルを展開し、一気に地面下までスキャンを実施。
そして、おそらく馬屋の藁の山に埋もれるような形で、反応があった。そいつもスキャンされてびっくりして藁山から跳ね起きたけど、その足下に開けた双方向のポータルから手を伸ばしてがっちりと姿の見えない何者かをキャッチ。胸元に引き寄せてポータルを閉じた。
「無礼者!何をするのにゃ!?」
ばりばりばりっ!と顔を引っかかれたけど我慢。龍神だからね。猫精霊に引っかかれたくらいじゃ傷はつかない。
「ミミ!ミミ!やっと会えた!」
「アマラ!?どうしてここに?」
「いろんな人に襲われて殺されそうになってたのを、この人たちが助けてくれたんだよ」
「うう、自分が離れればアマラは狙われないと思ったんだけど、甘かったのか。ごめんにゃ、アマラ。それに、アマラを助けてくれたお前達も」
「ま、いいさ。とりあえず二人を助けて確保するのが目的だったし」
確保、という言葉がいけなかったのか、ミミリアをアマラが俺の腕の中から奪い取り、後ずさろうとして、俺がその足下に開いた紫ポータルの先に落ち込んで姿を消したところで、いったん紫ポータルを閉じた。
「クリアになってる?」
「ああ、残り時間15分てとこだ。次のミッションの準備考えるとぎりぎりだな」
俺とセリカが改めて火山中腹地下室への紫ポータルを開いてセリカと移動すると、ソファの上に落とされてたミミリアとアマラが呆然としていた。
「ここはどこにゃ?いったいお前等は何者なんだにゃ!?」
ニャロスの時の事を思い出して、高級猫缶でもまた出そうかと思ったら、俺が背後で閉じた紫ポータルとは別に、以前も見た事があるやんごとなき系のポータルが開いて、白銀の毛並みに尾が七つもある堂々とした体躯の猫さん、いや、王冠みたいの頭に乗せてるし、これ猫王、いや猫精霊王っていうのかな?が、現れた。お付きの猫てか猫精霊みたいのもぞろぞろついてきた。
それなりに広いリビングスペースが猫で埋まると、猫精霊王が俺に話しかけてきた。
「手間をかけましたな。礼を言います」
「いえ。まぁ。その、こいつを迎えに来たんで?」
「はい。こいつは我らの世界を抜け出しただけでは足りず、人と縁を結び、災いを呼ぶのをわかっていてその力をひけらかした。連れ戻り、罰を与えねばなりません」
ミミリアとかいう猫精霊は、顔色はわからないものの、がくがくと恐怖に震えていた。
「あなたのわがままが、避けられた筈の何十もの死をもたらした事を思い知りなさい、ミミリアよ」
「は・・・・、はい」
「ちょ、ちょっと待って!ミミを連れて行っちゃうの!?」
「はい。あなたも、あなたの家族の元へ戻るべきでしょう」
「でも、パパもママもミミを売ろうとか引き渡そうとしてたし、それに」
「ミミがいなくてもまた狙われるかも知れないよな。俺もずっとはついててやれないだろうし」
「ふむ。ならば、家族を捨て、我らとともに来ますか、人の娘よ?人の世から離れるという覚悟があるのならば」
アマラは、俺やセリカの顔、ミミや猫精霊王の顔を見比べ、何度も視線をさまよわせた果てに決断した。
「はい。私も行きます」
「良かろう、着いてきなさい。そして、ミミリアを確保して下さったあなたに、どのようなお礼をさしあげればよろしいでしょう?」
「あー、ちょっと待って下さいね?」
残り時間は7分くらいか。
ミッション目的が完了状態になっているのを確認してから、俺はいったん原点回帰のスキルを外してからセットし直し、尋ねた。
「特にこれといったものは思いつかないので、いったん、あなた達の世界を訪れさせてもらってもいいですか?そうすれば、私はまたそこを訪れられますし、アマラがもし人間の社会に戻りたくなった時に、連れて戻る事も出来ますので」
「良いでしょう。ついてきなさい」
「ありがとうございます。こちらの都合ですみませんが、いったん訪れたらすぐにまた戻ります。次の何かにまたすぐ飛ばされると思うので」
「わかりました。あなたには重ねてお礼を」
猫精霊王が俺に頭を下げてからまた大名行列チックな猫精霊?達を引き連れてポータルの先へと戻っていき、俺もその向こう側へと足を運んでから自前の紫ポータルを開いて戻ると、猫精霊王によって開かれていたポータルは閉じられていた。
「これで、今のミッションは終わり?」
「みたいだな。家出した子供の捜索兼連れ戻し依頼みたいな感じだったのか」
「次のミッションまでは残り何分?目的はどんな感じなの?」
「残り5分未満。んで・・・」
――これ、マジ?
<マジです。宇宙空間ですね。さっきのと同じ感じでより大規模な戦争のまっただ中に放り込まれます>
――えーと、某超有名SF映画大作の宇宙艦隊戦みたいのの中に?
<おおよそご想像の通りです>
――セリカは連れていける?
<交換所から、お勧めの宇宙服を購入して着させておいて下さい>
――残り4分も無いんですけど!?
<仕方ありませんね。着付けはサービスしておきます>
超速で交換所からお勧めされた宇宙服をセリカ用に購入し、手元に取り出した時点で、セリカに頭からつま先までフルセットで装着されていた。
「ハ、ハルキ、これはいったい何?」
「説明時間が足りないんだけど、宇宙空間でも活動できるようにする服だよ!って俺の分は?!」
<言ったでしょう?艦隊戦のまっただ中に放り込まれると。そのまま宇宙服を着てても流れ弾に当たって殺されるだけです。竜化しておいて下さい>
「くっそ、セリカ、外に出るぞ!」
「宇宙って何なのよ?」
「宇宙は空の先に広がってる空間。だだっ広くて果てがあるかどうかも今の人類にはわかってない、えーと、星々の空みたいな感じのとこ!空気が無いからそのまま放り出されるとすぐ死んじゃうんだよ!」
俺はセリカの手を退いて急いで外に出て竜と化し、セリカにはポータル経由で背中に乗ってもらった。
ここまでで残り2分無いくらい。
「それで、次のミッションはその宇宙ってとこなの?」
「宇宙を行き交う船ってか軍船同士が戦ってるとこに放り込まれて、そこにいる反乱軍だかのお姫様を助けて、えーと、その本拠地まで届けて、そこからの反乱戦争を助けて成功させるんだって!」
「それ、かなり、壮大な話になるんじゃないの?」
「・・・・・そうだね。期限はなんか三ヶ月になってるんだけど、某映画シリーズでさえ全部で数十年かかってたような気もするよ!」
<あなたのスキルを使いこなせればいけます>
「ヘルプ機能さん曰く、やれる事やれば出来るってさ!」
「無茶ぶりがすぎないっ?!」
「同感だよっっっ!!!」
<時間です>
竜として、むなしい咆哮を上げたと思ったら、はい。宇宙戦艦や宇宙戦闘機とかがレーザーやミサイルとかでガチで戦争してるところに、俺とセリカは叩き込まれましたとさ。(続く
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