第36話 猫ちゃん探し?(一度目)
次のミッションへの転移直前までにセリカとも良く話し合って、スキル原点回帰を転移直前にセットしておく事にした。
そうして放り込まれた先で、改めて今回のミッション内容を確認する。
主目的:猫精霊ミミリアの確保
副目的:猫精霊ミミリアの
制限時間:2時間
2時間て最初のミッション並に短いけれども、それだけに難易度は高そうだった。
依代がどんな存在なのかは、転移すればわかりますと言われてたので、若干の覚悟はしてた。けどさ!
狭い街路。薄暗い路地で左右から不審な男達に逃げ場を無くされ、片手で口を塞がれ、もう片手に握ったナイフで首をかき切られようとしている少女、いや幼女?がいた。
ナイフはすでに首に押し当てられて、引かれ、始めて血が吹き出しかけてって、どんなタイミングやねん!ヘルプ機能さん、もうちょい早くても良かったんじゃ!?なんて心の中でわめきつつ。
少女か幼女の頭上3メートルくらいの位置に唐突に出現した俺とセリカに男達は驚いて、ナイフを引く手は一瞬止まってくれたけど、そのまま横に引かれようとして―――
次元斬。
ナイフの刃を根本から落としてから、男の両腕も切り落とし、着地と同時に悲鳴を上げかけた男の首も切り飛ばしておいた。
「何者だ!?」
とか言いつつ、俺に切りかかる奴が二人。少女にナイフを投げる奴。俺たちをまとめて焼き尽くそうと魔法を唱える奴。
とりあえず切りかかってきた男達の剣先を赤ポータルで受けて、それぞれの首もとに青ポータル出して二人を片づけた。ナイフと火の玉も赤ポータルで受けて、それぞれの背後に出した青ポータルからナイフ使いは火の玉で焼き尽くされ、魔法使いは背中にナイフが突き刺さって地面に倒れた。
一瞬の内になにがなんだかわからない状況が展開されて声も出ないでいる少女の首の傷を回復魔法で癒して消して、まだ息のある魔法使いの両手足を次元斬で切り飛ばし、何かわめこうか唱えようとしてた魔法使いの頭を地面に足で押さえつけ、自分に有用な何かを全て
魔法使いの記憶から、少女が誰なのか。なぜ狙われて殺されそうになっていたのか。必要な情報は引き出していたけど、尋ねた。
「初めまして。自分は、ハルキ。君の大切なミミリアを探してるんだけど、協力してもらえるかな?」
少女は、殺されそうになって、突然現れた俺達に助けられて、混乱の極みにあったろうけど、地面にへたり込みながらも、何とか答えてくれた。
「ミミリアって、ミミの事?」
「たぶん、そうだね」
「あなた、ハルキも、私からミミを取り上げようとするの・・・?」
腰が抜けた状態なのかな。それでもじりじりと手で後ずさって、壁に突き当たって止まった。
「違うよ。ミミも君も助けに来たんだ」
どうしようか迷っている少女、名前はアマラ。彼女やミミリアに関する記憶をもうちょっと洗い出したいのだけど、ここを監視してる奴がまだ残っているらしい。探知魔法で、さっきの数倍の人数がここに向かってきているのがわかった。
監視役の奴の位置まで極小の青ポータルを移動させ、後頭部からセリカの魔法を溜めておいたのを放って殺し、死体は収納。ここを視界に収めてる相手がおそらくいない状況で、紫ポータルを出して、少女を抱え上げてポータルの先へ。セリカも素早く続いてきたらポータルを閉じる。
移動先は、いつもの火山中腹地下室。ここまでで開始後5分経過。
「え、え、え? ここ、どこ?」
「安全などこか。とりあえず追っ手がまだまだ来そうだったからね。避難しておいた」
「あなた、誰?どうやって?ミミの事も、それに」
「話すと長くなるんだけど、時間があまり無いんだ。自分にはポータルって
ローテーブルに置いてあったコ○ラの缶を手元から落とし、赤ポータルで受けて、手元の上に開いた青ポータルから出して、再び手元でキャッチ。似たような事を何度か繰り返して、ようやくポータルについては理解してくれたみたいだった。
「あたしは、アマラ。助けてくれて、ありがと。でも、あなたも、ミミを狙ってるんじゃないの?」
「少なくとも、ミミも君も助けたいと思ってるけど、それじゃダメなのかな?」
「あたしも、それからミミも、あなたを知らないと思う。なのに、どうして?放っておいてくれれば、それで、良かったのに・・・!」
そうしてぼろぼろと涙を流して泣き始めてしまった。ソファに座らせた彼女の隣にセリカが座って、彼女の肩に触れながら、背中を優しくさすってあげた。
――ヘルプ機能さん。どうして助けるの?って聞かれてるんですけど?
<あなたが言っていたように、そういう
――その使命の目的を聞かれてるんだけど?
<今は非開示情報です。ご容赦を>
――了解。たぶんここで議論しても時間の無駄なんだろうし。
<そうですね>
俺は心の中でため息をついてから、魔法使いから奪った記憶を参照。ミミリアが普段は黒猫にしか見えない事。姿を消したり、人語を解したり、不思議な力を持つ猫として有名になり、これまでも商人や盗賊や貴族達に狙われてさらわれるも、いつの間にか戻ってきている事から、猫神様とも敬われるようになった事。
評判が広まるにつれて、この世界の主神の聖職者達から邪神の手先として認定されてしまい、アマラともども狙われて何度か切り抜けてきたが、ミミリアが囮になって追っ手を引きつけて逃げたものの、アマラが別働隊に捕まって殺される寸前になっていたようだ。
アマラがセリカに宥められ、自分が魔法使いの記憶を探ってる間に10分が経過。
ほぼ十歳くらいに見えるセリカと視線を合わせる為に腰をかがめて、簡潔に伝えた。
「詳しい事はまだ言えないくてごめん。だけど、ミミも君も助けに来たんだよ」
「ごめんなさい・・・。まだ、信じられない」
「どうして?」
「前にも、助けてくれた筈の人に、騙された事があって・・・・・」
あちゃー、マッチポンプかよ。
<ハルキ>
――ん、何?
<確保対象が殺されました。やり直しますか?>
――え”えっ?!
<先ほど、探知魔法を使った際に、ミミリアの反応は無かったでしょう?>
――確かに。でもそれが?まさか
<そうです。依代がミミリアのいる世界から消えて、そのままではミミリアも消滅するしか無かった。だから姿を現して、アマラが消えた地点へ向かう途中を狙われたようです>
――死体はまだ残ってる?
<消えかけてますが>
俺は急いでデジタルビデオカメラを交換所から買って、アマラの手を掴み、見張り役の男がいた場所へ紫ポータルを開いて戻った。
そこで探知魔法を使い、消えかけてるミミリアの反応を見つけて、そこへつながるポータルを開き、また二人で飛び込んだ先に、普通の黒猫に見える何かが、体に矢のようなものを受け、事切れていた。
アマラは俺の手を振り払い、ミミリアの元へ駆け寄った。
「ミミ、ミミ、ミミーーーー!」
黒猫の死体を抱き寄せて泣き崩れるアマラの姿をビデオカメラで撮影しつつ、俺は俺とアマラとを結界で包んだ。次元斬にも竜の吐息にも耐えた特別製だ。
魔法やら毒矢やら僧侶か何かが使う解呪らしき術もまとめて弾き返していた。
俺は三脚も買ってビデオカメラを固定し、アマラの姿が映されている事を確認すると、探知魔法でこの場に残っている敵性の存在を確認。まとめてその足下に赤ポータルを開いて落とし込み、下半身と上半身を分断。そいつらが息を引き取る直前までに極小ポータルから指先で触れて、どこのどいつなのか、後何人仲間がいて、どこに潜伏してるのか。どうやってミミリアを殺したのか、などの有用な情報を抜き出した。
今ではアマラの元までセリカも来てたので、俺はビデオカメラを三脚から外し、アマラとその前方が映るアングルで保持するようセリカに頼み、それからアマラの目の前で地面にひざまずいて、尋ねた。
「後悔してるか?」
アマラは泣きじゃくりながら、激しくうなずいた。
「信じられなかったお前に、俺を信じるように声をかけろ」
「どうやって?」
「俺がお前の声を届ける」
信じられないような事が続いて、最も大事な存在も失ってしまった悲しみに溺れていても、アマラは叫んでくれた。
「あたし、この人を信じられなくて、ミミを、助けられなかった!殺しちゃった!だから、もし助けられるなら、あたし、この人、ハルキを信じて!」
<ハルキ、完全に失敗判定が下るまで、残り一分です>
――わかった。ありがと。
「セリカ」
俺はセリカの手からビデオカメラを取り上げて、青ポータルの上に乗せ、二人が映るように位置を調整。
「開始前に話してはおいたけど、やっぱりやり直しになった。やり直しがきかなくなるまで、残り一分を切ったそうだ」
「・・・仕方ないわね」
俺はセリカの故郷への紫ポータルを開いてから、セリカに告げた。
「愛してるよ、セリカ」
「愛してるわ、ハルキ。きっと、やり遂げてね!」
「ああ、約束する」
<残り30秒を切りました>
世界が崩壊する、ではないけど、自分の何かが損なわれ始めてる感じがした。
セリカが俺を抱きしめてからアマラの手を取って紫色のポータルに飛び込んだのを確認してから閉じ、俺はビデオカメラを収納し、残り時間10秒の警告を受けつつ、原点回帰のスキルを発動した。
次のミッションへの転移まで残り3分の時点へ回帰した。貯蔵庫には、撮影したデジタルビデオカメラが残ってくれていた。タイムパラドックス的にどうなんだと思わないでもなかったけど、セリカに急いで説明した。
「えっとつまり、別世界に避難するのは無しなのね?」
「少なくとも、ミミリアと合流するまでは」
「それで、次の作戦はどうするの?」
「襲撃者達のおおよその規模と位置は掴めたし、ミミリアが殺された位置と、アマラが襲われた位置から、ミミリアが隠れてた位置も推測できる。だから、とりあえず転移した直後の危機をしのいだら、どこか安全な場所を確保して、映像と一緒に説得。ミミリアの確保を目指す」
「もう、別れたくないからね?」
「俺もだよ」
そしてヘルプ機能さんのカウントダウンを聞きながら、俺はセリカを抱きしめて唇を重ね、二度目のミッションへと飛ばされていった。
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