第17話 炎竜ゼオルゲル戦 その6 セリカと龍神の加護

 おそらく事切れたのだろうゼオルゲルの瞳がゆっくりと閉ざされていった後、収納、と唱えると、その頭部は貯蔵庫へと入った。


「さて、無事に一度で倒せて良かったな。とりあえず床に散らばってる財宝をいったん集めておくか?」


 傍らにいるセリカに声をかけてみると、レベル30になってから意のままに動かせるようになったポータルの上に、両肩を抱いて震えていた。


「今になって怖くなったのか?もう大ジョブだって」

「ち、違うの。ハルキ!すぐに外に連れ出して!今すぐにでも私、魔法を撃ちたいの!でもここじゃダメ!きっと大変な事になるから!」


 うん。今でもセリカが大変な事になっているのは伝わってきた。顔や体が火照って瞳も潤んで息も荒い。理性がまだ残っている内にと火口の方へと飛び出したが、火口ではなく、山裾の方、見渡す限り何も無い方を向いて、セリカは両手を前方に突き出し、とても長くておどろおどろしい呪文を唱えた。


 俺は、ゼオルゲルからもらった知識で、それがどんな魔法でどんな威力なのか、察せた。から焦った。


「ば、ばかっ!せっかく二人して無事に生き残ったのに死ぬ気かーー!?」


 と叫びつつ、前方に最大限の大きさの赤ポータルを展開。その向こう側では、太陽が地上に炸裂したかのような輝きが生まれ、途方もない熱量が発散させられたらしい。やばいよ。上空の雲が消え失せたし、自分がたまたま火口付近に直撃コースを遮ってなかったら火山が爆発してたかも知れなかった。山肌とかも一面真っ黒く焼け焦げてたし、爆発した地点は深く抉れた惨状を呈していた。


「おい、セリカ、大丈夫なんか?あんな高威力の魔法放って?」


 と尋ねた時には意識を失ってポータルからずり落ち掛けてたので、慌てて抱えて支え、火山の反対側の中腹に作った地下室へと飛んで戻った。


 ベッドに寝かせて、酷く暑そうにしていたので冷え○タを買って額に貼り、タオルを買って水で濡らして汗をふき取ってあげたりもしたが、そのあの、ええ、13歳の少年には目の毒です。健全な体には正直な反射機能がいえなんでもありません。念仏でも(知らないけど)唱えながらやり過ごす事にします。


――さっきの魔法、ふつーのエルフの魔法使いが放てるようなものだったのか?


<いえ、無理でしたでしょうね。さすが龍神の加護です>


――さすがっていうか、神様だったの?殺しちゃって良かったの?


<差し支えなかったでしょう。これまでもいてもいなくても同じ様な存在になり果ててましたし>


――なんだか扱いが酷いね。


<あなたとあなたの大切な存在にとって役立てたのだから本望でしょう。それで、次のミッションにも彼女は連れて行きますか?>


――彼女がそう望むのなら、当然。


<了解しました。そのくらいの余録はつけてあげましょう。それで、次のミッションまでの間に、一日くらいの休暇を差し挟んであげても良いですが、どうしますか?>


――いや、あの、そもそもの話、春休みを満喫してた筈のもうすぐ中二な少年を拉致してきて連続ミッションとかいう荒行に叩き込んでいるのでは?


<では休暇は要らないのですね?>


――要ります。はい、全力で!ナマ言ってすみませんでした!


<よろしい。それでは、彼女も一緒に連れて戻る事になるので、覚悟、もとい心その他の準備を万全にされておいた方が良いでしょうね>


「えっ、今なんて言った?」


 セリカを起こさない為に心話でヘルプ機能さんと話していたのに、思わず声に出してしまい、セリカが身じろぎしたが、まだ意識は戻らなかった。


<戻りたくないのですか?ここで離れると、もう二度と合流は出来ませんが?>


――戻りたいです!はい!全力で!一緒に!お願いしまっす!


<了解です。それでは、いろいろと入り用になるでしょうから、財宝の類は拾い集めておいた方が良いでしょうね>


――セリカを一人にしておいて大丈夫なのか?


<私が様子を見ておきますし、心配ならここにポータル出口を残しておいて、時折戻ってくれば良いでしょう>


――そうするよ。


 俺は後ろ髪を引かれる思いで大空洞の方へと戻り、セリカの様子を確かめに何度か往復しながら目に付いた物は拾いきり、ドローン達も回収し、ついでに地下の別スペースへと落とし込んでいた財宝も無事だったので回収。


 ほくほくとしながら地下室へと戻ると、セリカが目を覚ましていた。


「おお、セリカ。大丈夫なのか?」

「え、ええ・・・。ごめんなさい。あなたも危険に晒してしまって」

「まあ無事だったからいいよ。あそこで溜め込んでたら、もっと惨い事になってたんだろう?」

「たぶんね。それで、ここにはあとどれくらいいられるの?」

「残りは4時間くらいかな。でも次のミッションまでの間に、一日の休みがもらえるってさ。しかも、俺が住んでた世界に一緒に戻してもらえるって。次のミッションにも一緒に」

「本当に!?」

「あ、ああ。ヘルプ機能さんが嘘をついてなければ、っていうか、今まで嘘はつかれた事無いので、たぶん信じていいと思うぞ。それで」

「むつかしい話は後!ていうか話は後よ!今は、今しか出来ない事をしましょう?!」


 セリカの目が爛々と光ってやばい感じがした。けど額には冷えピ○が貼ったままで締まらない感じで、くすりと笑えてしまった。


「汗、拭いてくれてたのね、ありがとう。でも、これから一緒に」

 セリカが立ち上がってキスをしながら、いろいろ装備を脱がしてくれた。協力しつつ、二人で生まれたままの姿になって、ベッドに倒れ込んだ。


 直前で購入しておいた高級マットレスをベッドに被せておけたのはファインプレーだと思う。


「は、初めてだから、や、優しくしてね?」

「ごめん、無理」

 というのは、どちらがどちらの台詞だったかは言うまでもあるまい。美味しく頂かれました。ていうか龍神の加護ヤバくない?超肉食系エルフのお姉さんて、俺需要完璧なんだけど!?実家戻って親がいても、いや、それは、うん、どうにかしてゴマ滑走。(意味不明)


 ご休憩は二時間とか言われたりしてるらしい?けど、一時間のオーバータイムがもっとお代わりされそうだったけど、組んず解れつしてるさなかに部屋に戻って両親に詰められるとか別の意味で死ねるので、泣く泣く、セリカに懇願して、打ち止めにしてもらった。


 次回ぴろーとーく的な?エルフお姉さんをこちらの世界にお招きする為の準備回という事で!


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