第12話 炎竜ゼオルゲル戦 その1 ポータルと魔法の組み合わせ検証

火口への道半ばくらいまでに、今のポータルで出来る事の説明はあらかた終わった。


「ほぼ回数制限無く、相手の攻撃を返したり受け流したり、相手の体をえぐり取ったりポータルにはめて無力化できるんだ。なんという反則チートなスキル」

「そう思わないでも無かったけど、そうでもなきゃ生き残れなかったしな」

「私も助けてもらえなかったろうし、そこに文句は無いわ」


 ちなみに、山の斜面を階段状に削って、歩きやすくしながら歩いてる。訓練にもなるし、物資は何がどれだけ役に立つかなんてわかんないしね。

 火口に近づくほど暑くなったので、マイポータルからポカリみたいのを買って渡した。自分にも買って、キャップを空けて飲んでみせると、

「ありがと」

 と言い苦戦しつつキャップを外して、おっかなびっくり口をつけた。

「不思議な味ね?何かの果汁?」

「んー、詳しいことは知らない。暑い時とか汗かいた時とかに体にいいらしい」

「食べ物とか飲み物とか持ってきてないのも、アイテムボックス持ちだからと思ったけど、この入れ物とか飲み物とか、どう見ても」

「秘密だよって言って意味があるのか知らないけど、俺、異世界から連れて来られてるから」

「異世界ねぇ。あなたの容姿とか、たった一人であの一日でマフィアを壊滅させたとか、あなたのスキルとか、この入れ物とかを見てれば、何となく納得できるわね」

「それで、セリカは炎の魔法使いってことでいいのか?」

「いいわよ。炎竜相手じゃ何の役にも立たないだろうけど、他の相手なら」

「ま、竜とは俺一人で戦うけど、セリカにやってもらえることが無いわけじゃないさ」

「例えば?」

「そうだな。ポータルは大きさを小さく絞れば絞るほど遠くに設置できるんだけど、それも限界がある」


 現在スキルレベル20で、直径2メートルくらいの大きさで張れるポータルは、素で2メートルの距離まで。

 そこから1%小さくするごとに1%距離が延びる感じ?

 大きさが半分なら倍の距離。小さくすればするほど伸び幅も大きくなる感じで、20センチなら20メートルくらい、10センチなら40メートルくらい、1センチならさらにその10倍くらい?(遠くて小さすぎてわからん)


 赤ポータルをセリカの目の前に設置して、階段を削りながら先へと進み、それぞれの距離で絞った大きさの青ポータルを出して、セリカに魔法を撃ち込んでもらった。

 そこで面白い検証結果も得られたので、赤ポータルのリミットが来て消えてから、セリカに合流して伝えた。


「どうやら、出口を絞れば絞るほど、出力は上がるみたいだ」

「どういうこと?」

「圧力が高まるっていうのかな。見てもらった方が早いか。ファイアボールの射程ってどれくらい?」

「だいたい20メートルくらいだけど」


 山肌にある大きめな岩を見つけ、そこに向かって撃ってもらったが、表面が焦げただけで、岩そのものはほとんど崩れなかったし欠けなかった。


「んじゃ、次は、半分の大きさに絞るから、今と同じ感じで赤いポータルに向かって撃ってね」


 通常サイズの赤いポータルをセリカの目の前に、岩の目の前にはその半分の大きさの青いポータルを設置し、同じ力の込め具合で撃ってもらったファイアボールは、さっきよりも激しく岩の表面を焦がし、ほんの僅かにだけど削ってもいた。


「じゃあ次は、さらに半分のサイズで」


 およそ半分にサイズを絞る度に、岩の焦げ具合も削れ具合も深まっていって、1センチならまるで灼熱のレーザーの様にほとばしった炎が岩を貫通し、その通り道となった穴の内側はどろどろに溶けてもいた。


「普通なら炎の魔法は通じない筈だけど、使いようによっては武器になると思う」

 

 岩の有様を見たセリカも同意してくれて、二人で作戦を話し合いながら山肌を登り続けた。


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