第6話 冒険者ギルドでの登録
「ここ、なんて街?ここで何すればいいの?」
<ここはナンダカレア王国のアレダという町です>
「駄洒落かよ!?」
思わず大声で突っ込んでしまったけど、表通りからは一本折れた人気の無い通りにいたおかげで、誰にも気付かれずに済んだ。
<単なる事実ですので。まずは、冒険者ギルドへ行って、登録してみて下さい>
「マジで?登録しちゃっていいの?」
<はい。そこで誰も受けないだろう緊急依頼が飛び込んでくるでしょうから、その依頼を受けて達成して下さい>
「えーと、登録したてってさ、薬草採取とか、街中の雑用とかくらいしか受けられないんじゃなかったっけ?お約束的に」
<だいじょうぶです。ちゃんと巻き込まれますから、あなたがちゃんと依頼を受けると押し通せば押し通ります>
だいじょうぶなんかこのヘルプと思わないでも無かったけど、今まで大丈夫だったし、どちらかと言えば自分の暴走を諌める機会の方が多かったので信用する事にした。
そして視野に表示される矢印に従って、おのぼりさんお約束なあっちこっちをきょろきょろしながら、3階建てくらいの結構立派な建物にやってきました。改めて自分の服装とか見直してみると、全然冒険者ぽくないなと思ったけど、今更なので扉を開いて入り、感動しました。
正面奥にはカウンターがあって受付のお姉さん達が対応してました。けっこう美人さん多い感じですが、男性もいるし年齢層もちゃんと?中年や老年の人も混じってます。右手の壁際には憧れの?掲示板があって、依頼が張り出されてるみたい。
左手には併設の酒場があって、今はまだ朝なので飲んでる人はいないみたいだけど、朝食をパーティーのメンバーで食べながら何かを相談してたりしてるのが何組もいた。きっと二階にはギルドメンバー冒険者用に格安の宿屋とかがあって、三階にはギルドマスターの執務室がーとか思ってると、出入りする人に邪魔だと突き飛ばされてよろめいて脇に退いた。
「そっか。良い依頼は朝一番で取り合いになるってお約束もあったっけ」
気付けば依頼掲示板の前にも、カウンターの前にも、けっこうな人だかりが出来ていた。
一番短い列に並んだ。その先にはおじいちゃん職員さんが受付してたけど、これは止められるパターンなのではとか、登録しようとした時に誰かが絡んできてくれるのかなーとか、無駄にわくわくする事20分近く。
ようやく自分の番が来て、用件を尋ねられた。
「おはよう、少年。今日はどんな用件で来たのかな?誰かのお使いか?」
「いいえ。冒険者になりに来ました!」
まじまじと見つめられたし、服装などの身なりを見られて、
「本気かい?」
と心配そうに尋ねられた。きっとお孫さんなんかと同年代なのかも知れない。
「本気です。本気と書いてマジと読みます!」
「マジが何だか知らないが、わかった。登録だね。文字は書けるかい?」
「書けると、思います」
書けるよな?、とヘルプ機能さんにこっそり尋ねると、現地語で書くことを意識すれば大丈夫ですとこっそり教えてくれた。
書くのは、名前、年齢、性別、特技、出身地くらいしか無かった。
名前は、迷ったけど、ポータルにして、出身地は・・・ジャパンにしておいた。特技は、秘密にした。
老人受付員は、小さなため息をついて、
「ふざけているのかね?」
と聞いてきたので、
「マジです」
とだけ返してみた。
「それより、こう、水晶に手を置いてステータスを測ったりとか、血を採ってギルドメンバープレートに垂らしたりとか無いんですか?!」
「無い。そんな事するなら、特技とわざわざ書かせるわけが無いだろう。君自身が書いたように、自分の得手を隠したがる冒険者は少なくない。登録料金は銀貨2枚だ。払えるのかね?」
「銀貨2枚、ほぼ一万円か。ほい、これでいいです?」
「いいだろう。これが雑草級、もとい初等最下級のギルドタグだ。無くさないようにな」
小さな木の板を緑色に塗っただけのプレートがわたされて、ちょっと切れた。
「せめてこう、名前を彫ってくれるとか無いんですか?」
「無い。一番登録する奴が多くて、無謀な奴はすぐ死ぬし、昇級する奴はすぐに上がるから、駆け出しにはこんなもんで充分なんだよ」
「じゃあ、自分の名前を掘り込んでもいいんですか?」
「そのくらいは銀貨2枚の値段に含まれてるさ。ただ、依頼を受ける時と達成や失敗報告をする時に無くしてると再発行に銀貨1枚かかるから気をつけろ。それから冒険者として治安を悪くするような行為に加担すると身分を剥奪された上でお尋ね者になるから気をつけるように」
「昇格って、どうやったら出来るんですか?」
「そんな事は雑用の一つでも達成してから気にするんだな。はい、次の人―」
「おらどけ!」
と背後に並んでた鎧姿の人に押しのけられてしまい、俺は雑草級と呼ばれるらしい駆け出し冒険者のギルドタグを握り締めて、脇に退いた。
掲示板に、今の自分で受けられる依頼あるのかなー、見てみよーとか思いそちらに歩いていくと、ばあんと正面扉が強く押し開けられて、中年太りのちょっと裕福そうなおじさんが駆け込んできた。
そしてちょっとだけ息を整えると、おじさんは大声で言った。
「娘を、娘を取り戻してくれ!」
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