第4話 マイポータルと、狼さん達との戦闘
<それではマイポータルについて説明します。マイポータルとは、貯蔵庫であり、交換所の機能も持ち合わせます>
「えっと、アイテムボックスの機能と併せて、中に入れた物をどっかの誰かと物々交換できるって事?」
<おおむねその通りです。では、マイポータルと唱えてみて下さい>
「マイポータル?うぉっ!?」
バーチャルスクリーンとでも言うのかこれは?
眼前の空間に、マイポータルの貯蔵庫と交換所という画面が左右に分かれて表示されていた。
貯蔵庫の方には、地下室作る時に削った石や岩や土、ベッド作る時に使った木材の残り、布団代わりを作った時の雑草の残りが数量や体積なんかで表示されて、さらにその隣に見慣れない単位の数字らしきものが表示されていた。
「これ、値段てこと?」
<一番わかりやすい例で試してみましょう。あなたのポケットにいくらかのお金が入っていますね?それらを手に取って、収納と言ってみて下さい>
「むう、なんでそんな事まで知ってるんだ?」
ポケットを探ってみて、たしかに220円入っていた。財布は部屋に置き去りだ。硬貨を掌に乗せて、
「収納。おおっ、入金された?!」
貯蔵庫には、百円玉が2枚と十円玉が2枚表示される代わりに、掌の上からは消えていた。
「これ、取り出せるの?」
<格納庫にある物に触れれば取り出せますし、取り出したい物をイメージして、取り出しと念じるか言葉にすれば取り出せます>
やってみると、簡単に出来た。
<さて、練習ですので、硬貨を収納した状態で、あなたが食べたい何かをイメージして下さい。交換可能な相手がいれば交換してくれます>
「なんだよそれ。どんな時空通じて取引してるんだよ!?」
<あなたが今知る必要はありませんし、説明されても理解は出来ない事を保証します。とりあえず空腹を満たしたかったのでは?>
「そりゃそーだけどよ。もしこの日本通貨使っちゃったら、もう二度と日本の何かと交換できないとか、無いのか?」
<おお、意外に慎重なのですね。感心しました>
「そりゃどーも。で、どーなんよ?」
<段階を踏めば可能ですよ>
「段階って?」
<土や石や岩でも、お金に変えられる事は、あなたも知っているでしょう?貯蔵庫内のそれらを選択した状態で、あなたの知る日本円に換えたいと念じてみて下さい>
言われた通り、念じてみた。すると、良くわからない数字の単位だったものが日本円の表示に変わった。
「ちなみに、さっきのよーわからん表記って、ここの現地通貨だったりしたの?」
<そうですね>
「むう。しばらく戻れないなら、現地通貨のがいいんだろうけど、そうだ、あの蛇さん達の死体とか売れるんじゃないの?特に大蛇さんとか」
<売れるでしょうね。特に大蛇の死体はいろいろとそれなりの値段になるでしょう>
「んじゃ、先に回収しないとじゃん!?」
<落ち着いて下さい。先に何か購入して食べて下さい。それに夜に出歩くのは昼間よりも危険ですよ?>
「わかってるけどさ。んじゃカロリーバーと、炭酸飲料とかでいいだろ」
自分が念じた食べたいカロリーバーと炭酸飲料が交換所に表示されて、交換しますか?という確認メッセージが出たので、Yesを選択すると、貯蔵庫に表示されていた220円分の硬貨が消えて、代わりに購入したカロリーバーと炭酸飲料が貯蔵庫側に表示された。
「取り出し、って、マジで現れたよ、すげー!」
自分で作ったベッドに腰掛けながら、カロリーバーをかじり炭酸飲料で飲み下す。暗い室内が気になり、貯蔵庫の土と石と岩を日本円に換えたいと念じると、全部併せて一万円近くになったので、早速交換。
「懐中電灯、いや、ポータルのスキルの邪魔になるから、腰から下げられるような奴にしとくか」
部屋置きも出来るしソーラー充電が出来る3000円くらいのを購入し、早速取り出して明かりを点けてみた。まぶしい!だがうれしい!
「もしかしてさ、もっと土とか石とか岩とか掘ればそれも売れたりする?」
<無限とは言いませんが、ある程度は売れるでしょうね>
「あと、水か。水も売れたりする?」
<それなりの値段で売れたりするでしょうね>
「マジか!早速行ってみるしか!」
<落ち着いて下さい。夜の森はそれなりに危険だとも申し上げたでしょう。それに大蛇の死体の方が優先順位は高かったのでは?>
「んー、じゃあさ。この地下室から、崖際に刻んだ階段まで横道を通せば、ほとんど外に出なくて済むでしょ?」
<仕方ないですね。妥協できるレベルと認めます>
「だいたいの方向はわかるけど、できたら崖から落ちたくないから」
<それくらいはサービスしてさしあげます>
横穴を、ヘルプ機能さんが指示してくれた方向に掘っていくと、元から10メートルも離れてないところに地下室を掘っていたのもあり、階段の最初の折り返し地点前くらいの壁に横穴が通じた。
そこからは、ひたすらに蛇を潰した小岩と蛇の死体を回収しながら最下段にまで降りて、出口から外に出ようとしたところで、
<止まりなさい。死にたくなければ>
そう言われれば止まるしかなかった。
「なんか、やばいのがいるのか?」
<あの大蛇と眷属が生きていた頃にはこの滝壺周辺を縄張りを争っていた魔狼とその眷属がうろついています。毒を恐れてまだ大蛇の死体などには食らいついてはいませんが、あなたは襲われるでしょうね>
「むう、そしたら・・・」
マイポータルと小声で唱え、爆竹やねずみ花火、臭い玉?煙玉?ロケット花火や、ライターやチャッ○マンを合計5千円分くらい買い込んで、腰に下げてた明かりを消した。
出口の岩を一部だけ取り除き、花火を足下に並べ、夜闇に目を慣らし、最初の標的に目をつけた。頭から尻尾まで5メートル近くありそうな大狼、こいつがたぶん魔狼で、その手下の狼さんが2、30匹くらいうろうろしてた。
俺は先ず爆竹と臭い玉に着火してから叫んだ。
「さあ、れっつぱーりー!だぜ!」
うん、むしゃくしゃしてないけどやった。後悔も反省もしていない。はっちゃけてる間、呆れたのかヘルプ機能さんも静かだった。
手当たり次第に爆竹やネズミ花火、ロケット花火を投げ込んだり撃ち込んでしてから両脇に打ち上げ花火を抱えつつ、大蛇さんの死体へとダッシュ!
狼さん達は大騒ぎしてこちらには向かってこない!
5メートルくらいの距離をかけつけて、大蛇さんを潰してた岩も死体もまとめて収納し、急いで反転。
反転して階段の入り口に戻ると、背後から圧が迫ってきていた。圧っていうか、吐息っていうか、涎っていうか、涎ってやばくね!?
俺は階段の入り口にヘッドスライディングした。頭上でなんかガチンとかいうやばい音が聞こえた。必死に階段を這いずり上ると、魔狼が大きな首を突っ込んできていたので、
「ポータル」
と右手をかざして唱えた。体を階段にねじ込んで噛みつこうとしてきた魔狼の頭部が、赤く縁取られたポータルの中にすっぽりと収まったので、ポータルを閉じた。
「やった!?」
とは言ったものの、即後悔した。
頭部を失った魔狼の体はその場に崩れ落ちたけど、頭を失った胴体からは、当然、血が吹き出すわけで。
逆ギレした俺は、魔狼の体も収納すると、再び赤ポータルを設置して、ひたすら階段をかけ上がった。
赤ポータルの設置期限が切れたらまた背後に設置してを繰り返し、崖上までたどり着くと、滝壺への虚空に青ポータルを設置!
するとあら不思議、でもなく、昼間は蛇さん達が辿った運命を狼さん達も辿っていった。
視野左隅には、魔狼討伐1、眷属討伐33となり、背後の階段入り口に設置し直した赤ポータルに突っ込んでくる狼さんも、やがていなくなった。
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