第2話 ゴブリン達との戦闘
「俺は、ついてる」
小声でだけど、自分に言い聞かせるように言ってみた。
俺がいるのは木の枝の上。まだ見つかってはいない。
真下の地面には、俺が脱いだTシャツが置いてある。パンツとどちらにするか迷ったけど、いざ無くなって困るのはたぶんパンツで間違い無いのでTシャツにした。
ありがとう、Tシャツ。3枚千円。君の尊い犠牲は無駄にしない。いやしたくない。
嗅いだ事のない臭いのする何かが地面に落ちてたら、そりゃ気になるよな?
5匹の中でも一番虚弱そうな二匹がTシャツを拾い上げて、臭いをすんすんと嗅いでいる。微妙な感傷を抱いたまま、俺は小声で唱えた。ポータル、と。
俺の左手の先から現れた青いポータルから地面に向けて、直径40cm近くの石というか小岩が現れて落下。Tシャツの臭いを嗅いでいたゴブリンの頭上からクリーンヒット!
二匹は頭部から緑色の何かを撒き散らし地面に倒れて動かなくなった。
当然、残り3匹の視線は、上空から落ちてきた石の出所に向いた。いや、正確にはリーダーらしき一匹のみが真っ先にこちらに目を向けて何かを叫び、わけがわからない内に頭をつぶされた二匹に釘付けになったモブ二匹の視線も俺に向けられた。
ポータル。そう唱えて青いのを消しつつ、俺は地面に飛び降りた。そう、まだ混乱のさなかにあるだろう二匹の目の前に。
わけのわからない奴が目と鼻の先に現れて、武器も持ってなくて、大して強くもなさそうなら、とりあえず攻撃するよな?実際、目の前にいた二匹はそうした。
片方は正面から顔面に噛みついてこようとしたし、もう片方は背後に周り込みながら、鋭い爪を首筋に振るってきた。
いいね。都合がいい!
心の中でそう叫んでいた俺は、噛みついてきた正面のゴブリンの顔に右手をかざして、
「ポータル」
と唱え、首筋の間近に迫っていたゴブリンの爪に向かって左手をかざして、
「ポータル」
と唱えた。
結果?
俺の顔面を食いちぎろうとしたゴブリンの口が、俺の首筋をえぐり取ろうとしたゴブリンの手をかじり取りましたとさ!
生き残ってるゴブリン3匹が3匹ともうろたえていた。一番混乱してたのは言うまでもなく、片腕の手首から先をかじり取られてたゴブリンだ。
俺はいったん両方のポータルを消してから、両手をそれぞれのゴブリンの胴体にぴたりと当ててから、ポータルと唱えた。
んで、何が起こったか?
「ンギャアアアアアッ!?」
「ゲグギャアアアェェェッ!?」
二人のえぐり取られた胴体は、それぞれの掌の先へと転移していた。もちろん、都合良くそれぞれの部位が結合するなんて事は無い。
二匹とも結合する筈も無い抉られた箇所に現れた異物へと血と腹の中身を噴出させながら、地面に倒れてやがて動かなくなった。
やばい、やばいよね、これ?
残ったリーダーらしきゴブリンも、混乱しながらも向かってきてくれた!やるじゃん!
雄叫びを上げながら、剣を振りかぶり、最速で振り下ろしてくる!
「ポータル」
俺は相手の進路の地面に手をついてつぶやくと、後ろへ飛びのいた。
ゴブリンのリーダーは、ゲエアアアみたいな叫び声を上げながら、落とし穴の縁で跳躍した。
「ポータル、ポータル、ポータル」
と早口で三度唱えてから、ゴブリンのリーダーが振り下ろしてきた剣先に右手を備えるように
「ポータル」
そして続けて相手の体に左手をかざして、
「ポータル」
決着はついた。
俺の体を切り裂く筈の剣先は、赤いポータルに呑まれ青いポータルから出現。ゴブリンのリーダーの胸元を深々と切り裂き、後退した俺の目の前を通り過ぎていった。自らの剣で絶命したゴブリンは地面に落ちて動かなくなった。
「これで、ミッション・コンプリート?」
<おめでとうございます。あなたは最初のミッションを達成されました。ボーナスでスキル・レベルが+1されます>
実戦で使って成果を出していたせいか、レベル4に上がっていたポータルは、レベル5に上昇した。
<このまま次のミッションに挑みますか?それとも限界までここに留まりますか?>
「・・・ここに留まって次のスキルレベルまでなるたけ経験値積んだ方が得だと思うけど、その分次のミッションで準備する時間やタイムリミットまでの時間が削られたりするのか?」
<その通りです>
「じゃあ、ぎりぎりまでここに残る」
<その回答を確定しますか?一度確定すると取り消しは出来ません>
「確定する」
<了解しました。しばしのお楽しみの時間を>
ざけんな!と叫びそうになった。
けれど怒りを発露させて殴れそうもない相手に怒鳴るよりも、有効な時間の使い方があった。
可能な限り早口でポータルと連続でつぶやきながら、俺はポータルの大きさが直径50cmくらいになっていた事と、掌の先50cmくらいにまで設置できるようになった事、持続時間が130秒になった事を確認した頃には、次のミッションの為のどこかに飛ばされて行った。
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