第41話 リリアンネに聞いてみる
それなりに大きなパーキングエリアに、俺たちは入った。
相変わらず、俺は震えが止まらない。女性同士の目に見えないバトルを間近で受けたワケだ、無理もなかった。
“女は強し”とは、よく言ったもんだぜ。
さて、パーキングエリアに入って。
俺は全速力でトイレまで走っていった。
「はぁ……」
用を足す目的も当然あるのだが、いったんバトってる女性二人から距離を置きたかった。
あと10秒あの場にとどまってたら、たぶん気絶してただろう。女性に口喧嘩で勝てるとは思わない。……あ、もしかしたら俺、尻に敷かれるかも?
ひとまずスッキリして、車に戻る。
リリアンネが待っていた。
「あれ、母さんは?」
「お父さんと一緒に買い物行ったみたい」
「それじゃ、待つかな」
スマホを取り出し、家族グループに向けて『車近くで待ってる』と送った。
幸いすぐ近くに歩行者通路があるので、危険性は少ない。
……さて、どう話したものか。
「なぁ、リリアンネ」
「なにー?」
声はすっかり、いつもの調子に戻っている。
だが、きっちり聞くまでは思い込まないことにしよう。
「さっき母さんと話してたけど……ケンカ、してたのか?」
「んーん? してないよ。どーしたの?」
「いや、なんか険悪そうに見えたから。お互いの第一印象はよさそうだったのに……」
正直、これからリリアンネと結ばれるとしても、
ほとんど知らないけど、とにかくドロドロしてて見ているこちらも居心地がすさまじく悪いと思っている。
と、リリアンネが俺の顔を覗き込んできた。
「な、なんだよ」
「ふふ、ちょっと深刻そうな顔してたから」
「いい趣味してんな……」
あきれ交じりに呟くと、リリアンネは体をくっつけてきた。
「ゆーたのお母さんだけど、けっこうゆーたが好きみたい。母親として、だけど」
「それは実感してるぜ。何度助けられたことか」
母さん、怒らせたら怖いけど、むやみやたらに怒鳴りつけることはしなかった。
むしろ、小さい頃は俺にベタベタだったな。俺が成長するにつれて程度は小さくなってきたけど、俺への愛情があるのはよくわかってる。
「だからかな。私がゆーたのお嫁さんにふさわしいか、じっと見てる気がするの」
「そうだろうな……って待て。お嫁さん、だと?」
「うん。ゆーたのお母さん、『本当に勇太と結婚するにふさわしいか、見せてもらうわね』って思ってた」
「結婚前提かよぉ……」
いや、そのつもりだよ!? リリアンネ相手に「遊びでした」なんていうつもりもないくらい真剣だけど! にしても母さん、気が早くねぇか!?
「とまぁ、そんな感じだよ。これはちょっと、私も頑張るかな」
「これからどうなっちまうんだ……」
俺が頭を抱えていると、大きな買い物袋を抱えた父さんと母さんが帰ってきた。
「おう勇太、俺の腰に車の鍵あるからそれで開けてくれや」
「はいよ」
俺が鍵とバックドアを開けるやいなや、どさどさと荷物を放り込む。一体どれだけ買ってきたんだ。
「さて、食べてから出るか」
父さんが弁当を一つずつ配る。もちろん、リリアンネにもだ。
……俺たちは弁当を食べ終えてから、車は再び実家に向かって走り出したのであった。
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