第42話 実家に到着

 さて、それからは世間話をいくらかしていた。その間に車は高速から降り、一般道を走り出す。

 幕浪とはまた違った海の眺めだ。徳川家康隠居の地として有名なこの辺りだが、最近は再開発の果てに高層ビルが林立している。……ま、俺はこういう風景が好きだけどな。


 閑話休題、実家に到着だ。

 立体駐車場に入り、車を停める。


「ついたぞー。さて、早速悪いがちょっと荷物出してくれや、勇太」


 さっきサービスエリアでどっさり買ってきた荷物だ。なかなか重く、出すにもてこずる。


「よっ……と」


 と、リリアンネが手伝ってくれた。


「おいリリアンネちゃん、大丈夫か?」

「はい、これでも腕力には自信がありますから……はっ!」


 かけ声と同時に、荷物を持ち上げる。

 リリアンネが怪力の持ち主なのを知らなきゃ、俺も止めてただろうな。


 その様子を見た父さんは、唖然としている。

 そりゃそうだ、こんなきゃしゃな体のどこにこんなパワー秘めてんだってくらい力あるからな。鉄アレイ握らせたら変形させそう。


 ともあれ、俺たちは実家に入る。

 実家と言っても8階建てのマンションだが、大学に入るまではずっとここで過ごしていた。いろいろな思い出が詰まった家だ。


 父さんがカードキーで、ロックを解除してくれる。

 俺は久しぶりに、リリアンネは初めて敷地に踏み入った。


 そこからエレベーターで登って、見慣れた部屋の前に立つ。

 電子音が流れ、解錠に成功した。


「「ただいまー」」

「お邪魔します」


 タイミングのバラバラな挨拶が響く。

 それにしても……ホント、懐かしいな! おっと、いかんいかん。荷物をどこに置くか聞いとこう。


「父さん、どこに置けばいい?」

「ああ、冷蔵庫の前に置いといてくれ。俺が入れるから、先にくつろいでてくれや」

「いや、俺が入れる」


 甘えるワケにゃいかんからな……おっ、リリアンネ?


「手伝うよ、ゆーた」

「無理はすんなよ」

「もちろん」


 殊勝なこった。さて、さっさと片づけるかな。

 俺たちはテキパキと、買った物を冷蔵庫にしまった。


     ~~~


「終わったな」


 ひとまず終わったので、うがい手洗いをする。

 ……ん、誰だ俺の肩を叩いたのは?


「勇太」


 父さんか。


「何?」

「ちょっとこの後、いいか?」

「いいけど……どしたの、父さん」

「いいから。静かにしてくれや」


 リリアンネを見ながら、自身の口に指をあてる父さん。


「ちょいと聞きたいことがあるんだがな……付き合ってくれや、勇太」


 頼むような言い方だが、言葉は命令じみている。

 だが、拒む理由はない。


「いいぜ」

「そんじゃ、俺の部屋来い」




 父さんの部屋まで、俺はついていった。

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