5.僕は、怒ってるんだぞ!

「あぁ~。おばあちゃん家、楽しかったのに…。もう帰るのか…。ポチとも仲良くなれたのにね。」

はぁ?

何言ってる。

あんな、ばっちい奴と仲良くなんてなれるか。

だって、あいつ毎日家の外にいるんだ。

汚い以外のなんだって言うんだ。

そんな奴と、僕は仲良くなんてしない。

それより、早く家の鍵を開けろ。


「たっだいまぁ~。」

ふぅ…やっと、帰ってきた。

落ち着くぜ。

やっぱり、自分の家が一番だな。

僕の留守の間に家に侵入者が居なかったか見回らなくちゃ。

ママも君も、不用心だからいつも、確認しないんだ。

僕がちゃんと、確認しとかないと…。


まずは、1階のリビングとキッチン。

キッチンには、異常なし。

リビングは…家の中は大丈夫だな。

…ん?誰だあいつ‥。

外から、知らない奴がこっちを見ている。

なんだ‥あいつ。僕の家だぞ。

ほらっ!少し睨んでやればどっかに行った。

やっぱり、僕はすごいんだ。

ママだって、前言ってたし。

汚ったない、おばあちゃん家の黒い奴だって何匹も捕まえた。

よし…リビングも異常なし。


次は、2階だ。

ママとパパの部屋。

んん…やっぱり僕は、パパの匂い嫌いだから…。

ここは、いいか。

じゃあ、僕の部屋だ。

ここは、きっちり確認しとかないと…。

ベッドよし。

机よし。

本棚も異常ないな。

うんうん。

これで、見回りも済んだことだし‥‥。

…。

あっ!トイレとお風呂がまだだ。

冬は寒いからあんまり、確認したくない…。

まぁ…しょうがない。

何日も家を空けていたんだ。

これも、仕事のうちだ。


「あっ!いた!もうっ!どこに行っていたのよ!」

どこって?

君がいつもちゃんと家の中を確認、しないからだろう!

僕が、代わりに見て来たんだ。

感謝するんだな!ふふっん!

ん?なにするんだ?

おっおい!持つな!そっちは、お風呂だろ!

見回りが済んだら出ていくんだから。


「あっ…やっぱり、ポチと一緒にいたから…匂い移ちゃってるじゃん。臭いな‥。」

はっ!そんな訳なだろう!

僕は、きれい好きなんだ。

いつも、綺麗にしている!失礼な奴だな!


「もう、一緒にお風呂に入っちゃいなさい。ちょっと、臭いわね。」

な!ママまで!

全部、あいつのせいだ!

やめっ…やめろぉ!


カッポ~ン。


「そんなに、拗ねないの!しょうがないじゃん。ポチの匂いが移ってたんだからさ!」

許さない…。

この僕を…。

僕を湯につけてイジメるなんて‥‥。

虐待だ…。警察に通報してやる…。


「ねぇ~。そんなに、怒んないでって!」

これで、怒らずにいられるか!

僕のキレイな髪を、べちゃべちゃにした挙句、無理やり拭いたんじゃないか…。

やるなら、もっと優しくやれ!

僕は、君と違って繊細なんだ。

あと、その煩くて、熱い奴を僕に近づけるなよ!


「はいはい。わかりました。もう…どんだけ、ドライヤー嫌いなのよ。」

ふんっ!

だから、なんだ!

まだ、怒ってるんだからな。


「ほらっ‥これじゃダメ?オヤツ…ママに内緒で持ってきてあげたよ。」

‥‥これは…。

ぬっぅ‥‥しょうがない…。

今回だけだ…今回だけオヤツで買収されてやる。

よこせ!

「うわっ!引っ張ちゃダメだって!ゆっくり食べてよ。」

んん!!

美味しい!

やっぱり、このオヤツは最高だ!

けど…僕は、まだ怒っているんだからな!

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