4.早く僕の隠れ蓑になれ。

「きっもちぃ~!何年振りかな?おばあちゃん家!」

知らないよ。

僕が、ちっちゃい頃だろ?

「ちっちゃい頃に来たの覚えてる?」

それ今、僕が言ったから。

僕は、覚えているけど、君は忘れたんだろな。

君が、おばあちゃん家のトイレに閉じ込められて、僕が助けたのを。


僕たちは、おばあちゃん家にきた。

僕の家よりも古臭くて、汚い感じの家だ。

僕は、きれい好きだからな…。

こんな、汚い所にあんまり居たくないんだよな…。

「あぁ‥来たね。さぁ、おあがり。おや?君も一緒に来たのかい?そうか

い。そうかい。ゆっくりしていきな。」

そう言って、おばあちゃんは、僕と君の頭を撫でた。

ママよりも皺くちゃな手は、意外に撫でるのがうまい。


「ふふふっ!ゆっくりしていきなさい。だって!やったね!」

なにが、やったねだ…。

僕は、家の方がいい。

だって、落ち着くし…。

僕専用のベッドもあるし…。

君だって、いつも僕の部屋で、四角い板を見て笑ってるじゃないか。

それに‥‥。ここは…なんだか嫌な匂いがする‥‥。

なんだ…この匂いは?

嗅いだことの無い匂い…。

なんだか…嫌な匂いだ。


「あっ!ポチっ!ほらっ見て!ワンコだよ!」

ワンコ?

ワンコってなんだ?

ワンコインランチなら知ってるぞ。

‥‥あれは…なんだ?

この嫌な匂いは、あいつだ!!

「あっ!ちょっと!暴れないでよ!もう!」

このっ馬鹿!

これが、暴れずにいられるか!

こんなヘンテコな匂いをまき散らして…。

うぇ…涎まで垂れ流して…。

うわぉぉぉぉぉぉ!は・な・せ!!

ママ!ママ助けてよ!!


「うわっ!」

「もう、離しなさい。嫌がってるわよ。初めて犬を見るんだから…怖いのよ。」

いやっ!

違うぞ!僕は、けして怖い訳じゃない!

こんな、涎たらしてる奴と仲良くしたくないだけだ!

「えぇ~こんなに可愛いのに…怖いのぉ~?ふふふっ!」

なっ…なんだと?

君みたいな、のろまで、まぬけな泣き虫に…。

なんで、そこまで言われなくちゃいけないんだよ…。

君より、僕の方が、足は速いし、高いところも登れる。

それに、鼻だっていいんだぞ。

馬鹿にするな!怖くなんてない。

ほっほら!


「おぉ!行くか!行った!」

「煽らないの!」


へっへっへっ!


おいっ!お前!僕が挨拶してやってるのに…。

返事くらいしろ!

えっ…ちょっ‥やめっ…やめろぉぉぉぉ!!

なんだ、こいついきなり僕の顔を舐めやがった!

なんて、礼儀知らずなんだ。

なっ!着いてくんな!


「あっちゃ~‥ダメか…。ちょっ!痛いって、ここは、隠れる場所じゃないって!」

「あらあら。まあまあ。」

くそっ!こんな奴嫌いだ。

僕の為に、君が隠れ蓑になってあいつから、僕を守れ!

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