75「最悪の精神攻撃です」②





 幻惑から現実に戻ってきたサムに、里奈は絶句していた。


「――そんな、私の幻惑に抗うことができるなんて」

「もっとマシな幻惑をしろよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 よりによって、サム子とギュン子お姉様ものを見せられるとは思わなかった。

 しかも、クリー先生まで特別出演しているのだ。

 愛の伝道師クリー先生は、幻惑の中でも先生だった。

 さすがクリー様だと感心する。


「もっと、こう、あるでしょう! 男の子が見たいお口に出せないあんなことやそんなこと的な幻が! どうして女体化した上でギュンターをお姉様とか言わなきゃいけないんだよ! あとサム子ちゃんのモノローグが媚びててうぜえ!」

「……おかしいわね。先日、幻惑にかけた貴族は、この夢の中から今も出てきてないだけど」

「そんな馬鹿な!? あ、いや、この荒んだ国に住んでいるとあんな幻の中でもマシなのかもしれないな」


 どういう仕組みで幻惑を見せているのかわからないが、セーラー服を着ていたし、学校の再現も完璧だった。

 幻惑の中にいたとき、その世界にあまり疑問を持たなかった。

 もちろん、ツッコミどころがあまりにも多かったので正気に戻ったが。


「まったく……次はちゃんとやってよね!」

「――え? あ、はい」

「さあ、早く!」

「わ、わかったわ、えっと、いくわよ」

「早く!」

「は、はい!」


 サムに急かされた里奈が慌てて幻惑を放った。

 怪しく彼女の瞳が光ると同時に、サムの意識が遠のいていった。




 ■




 私は、サム子!

 十五歳の女の子だよ!

 でもね、秘密があるの。


 ――それは、男装して男子校に通っているっていうこと。


 私の家系は、代々聖ビンビン学園に通うことが義務付けられているんだけど、男子校なの。

 お父様もお母様も「一度くらい男子校に通ったっていいじゃない」って。

 ばっかじゃないの!?


 だけど、私の拒否権はなく、泣く泣く男子校に通うことにしたんだ。

 サム太郎として。


 それでね、なんで私がこんなことを一人語りしているかと言うと、


「おい、サム太郎。お前、女だろ」

「はわわわわわわわわ」


 学園でも有名な不良のウル一郎先輩に性別がばれちゃったの!

 そりゃね、空き教室で寝ているウル一郎先輩に気づかずに着替えちゃった私も悪いんだけどさ。

 下着まで男物にできなかったし。


「……まさか男装して女がビンビン学園に通っているとは思わなかったぜ」


 赤毛に、吊り目。不機嫌そうな顔をした長身のウル一郎先輩。

 はわわわわわ、ご尊顔がイケメンすぎるぅううううううううう!


「待て、ウル一郎!」


 キスしそうなほど顔を近づけられていたところに、第三者の声が響く。

 ――あれ? この声って?


「彼女から手を離すんだ」

「ちっ、リゼ二郎かよ」


 やっぱり生徒会長にリゼ二郎先輩だぁあああああああああああああ!」

 金髪ポニーテルがよく似合う、甘いマスクのイケメン生徒会長様!

 その人気は他校の女子が御尊顔を拝見しただけで意識を飛ばしてしまうほど!

 ――そういえば、このふたりって兄弟っていう噂が。


「サム太郎――いや、サム子さんが教室にいないから探してみたら、まさかウル一郎に正体がバレているとは」

「ちっ、ってことは、お前も」

「そうさ。僕はサム子さんが女装してビンビン学園に通っていることを知っている。なにか事情があるかと思って、性別がバレないように手助けしようと思っていたんだが、まさかこんなことに」

「はわわわわわわわわわ」


 まさかリゼ二郎先輩にまで私が女の子だってバレちゃっているなんて!



 ――サム子どうなっちゃうの!?







「知るかぁあああああああああああああああああああああああああああ!」






 サムは再び、幻惑ごと世界を斬り裂いた。






 〜〜あとがき〜〜

 まだ病み上がりのせいで、不調のようです。


 カドコミ様にて「いずれ最強に至る転生魔法使い」最新話(十八話)が更新されております! ぜひお読みいただけますと幸いです!

 最新コミック3巻も発売したてですので、ぜひぜひお読みいただけますと嬉しいです!

 GWのお供に何卒よろしくお願いいたします!

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