73「サムと紅の勇者です」③
先に仕掛けたのは里奈のほうだった。
「私は出し惜しみなんてしないから! 最大にして、最高の魔法――スカーレットアローっ!」
アローと言いながら、弓を引く動作はなく、指の先から赤い閃光が放たれた。
それなりに魔力を感じる攻撃だが、最強というには物足りない。
これで「最大にして、最高の魔法」なのであれば、サムは失笑してしまうだろう。
「――キリサクモノ」
軽く手を振ると、音を立てて赤い閃光がかき消された。
「……ありえない」
「それはこっちの台詞だよ! どいつもこいつも、勇者っていうのは雑魚ばかりじゃないか!」
「雑魚、ですって?」
「雑魚も雑魚だよ! あんたさ、俺が誰だか知ってる?」
サムの問いかけに、悩む素振りもなく里奈は唾を飛ばした。
「知るわけがないでしょう!」
「だよね! その知るわけがない一般人に魔法が通用しないのに、どうして最強を名乗れるのか教えて欲しいんだけど!」
「……ぐ」
サムの言葉に、里奈は反論ができないようだ。
スノーデン王国の魔法使いの質はかなり低い。
そんな中で、少し強かったからと最強という発想になるのが不思議だ。
サムも里奈と同じように、日本で暮らしていたが、転生後に魔法が使えるからといって最強になった、なんでもできるとは思いもしなかった。
どうして里奈をはじめとして、召喚された日本人たちが傲慢な発想ができるのか、本当に理解ができない。
「俺は親切だから教えてあげるけど、あんたはスカイ王国じゃ宮廷魔法使いにギリギリなれるくらいかな。力はあるんだろうけど、使い方が雑なんだよ」
「……雑って、そんな」
なにやらサムのダメ出しにショックを受けているようだ。
よほど自分の魔法に自信があったのかもしれない。
「人間の中でも上はいるけど、魔族はもっと強いからね? 準魔王はもちろんだけど、魔王なんか比べ物にならないほどやばいからね?」
ごくり、と里奈が唾を飲んだのがわかった。
「最恐の魔王と恐れられているやつなんて、出会ったら全裸にされて辱めを受けるから」
「――な」
「老若男女問わず」
「……ひっ」
「実は、そんな最恐の魔王さんがこの国に遊びにきています」
「え? 嘘?」
「勇者ぶっ殺しに来ました! やったね!」
サムが指を鳴らす。
「だけど、安心していいよ。あんたが魔王と会うことはない。なぜなら、ここで俺に殺されるからだ」
「……は、はんっ! 私よりも強い人間がいるからって、あんたが私よりも強いとは限らないわ!」
「ま、そうなるよね。一応、あんたの最高の一撃を相殺しているんだけど、うん、認めなくない年頃なんだろうね」
うんうん、とサムは納得したように頷く。
「だけどさ、別にあんたに俺が強いとか弱いとか認識してもらう必要はないんだ。俺はね、自分で得たわけではない力で最強気取ってやりたい放題やっているあんたが目障りだ。命乞いしようと、なにをしようと、絶対に殺す」
サムの殺意が解放された。
もともとこの国に憤りを覚えていたが、我慢していた。
だが、穂村里奈の言動のおかげで、サムも限界に到達したのだ。
「な、なら、――幻よ!」
「……抵抗するなら苦しんで死ぬことになるんだけ、ど?」
薄いモヤに包まれサムがかき消そうとして、腕を振るおうとする。
だが、動かない。
「……もしかして、これ」
「私の幻惑の中で楽しい夢を見なさい!」
――サムが唯一弱点とする精神攻撃を使われたのだった。
〜〜あとがき〜〜
次回!
聖ビンビン学園物語! 〜サム子とギュン子の姉妹の誓い〜
始まります!
カドコミ様にて「いずれ最強に至る転生魔法使い」最新話(十八話)が更新されております! ぜひお読みいただけますと幸いです!
最新コミック3巻も発売したてですので、ぜひぜひお読みいただけますと嬉しいです!
GWの読書に何卒よろしくお願いいたします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます