72「サムと紅の勇者です」②
「クソガキが! 私はまだ二十六だよ!」
「…………なんかごめんなさい」
「謝るんじゃねえよ!」
女はこれでもかというほど化粧を厚塗りしていた。
指には指輪が、手首にはブレスレットが、首にはネックレスが複数個身につけられている。
少し動くたびに、ジャラジャラと音がした。
適当に伸ばされた髪は赤く染まっているが、頭部は黒い。
普段、身だしなみを整えたことのない人間が、急に化粧と装飾品に目覚めて大失敗した感じしかしない。
(この世界の人たちって、思いっきり化粧するか、最低限しかしないかの二択なんだけど、ここまで化粧をする人ってみたことないし、これだけ盛大に失敗している人も見たことないなぁ。学生時代の文化祭で女装した片岡くんはかなり酷かったけど、このおばさんにくらべたらマシだなぁ)
ちなみに、リーゼ、アリシア、ステラ、フラン、水樹、オフェーリアは薄く化粧をするくらいだ。
ウル、花蓮、ゾーイはすっぴんだ。
サムの周囲で、濃いめの化粧をしているのはエヴァンジェリンくらいだが、彼女はしっかり似合っているし、すっぴんはとても可愛い。
「これだからガキは嫌だ嫌だ。私の魅力がわかってない! せっかくアップした動画にブスだなんだとコメントしやがって! なにが心がブスだよ!」
「……あー」
サムは察した。
おそらく、彼女は性格が悪いのだろう。
言動に、その性格が反映されているため、「性格ブス」と言われてしまう。
だが、それを外見と勘違いしているのだろう。
「勇者として召喚されたから、金銀宝石を奪って着飾っても、どいつもこいつも私を変な目で見やがって!」
「……いやいや、そんなジャラジャラ音を立てるほど飾り付けたら変だって」
「……そうなの?」
「……そうなの」
サムが頷くと、彼女は装飾品を外し、毛皮のコートのポケットの中にしまった。
「――私は紅の勇者」
「え? うそ? なかったことにして続けるの!?」
女性のメンタルに驚きを禁じ得ない。
びっくりするサムを無視して、彼女は名乗りを続けた。
「名を、穂村里奈。最強の勇者よ」
女性――穂村里奈は、最強を名乗った。
サムの前で、だ。
「へぇ」
「あんたが今まで何人かの勇者と戦ったみたいだけど、私はその誰よりも強いわ。いいえ、比べものにならないほど強いの」
穂村里奈は自慢するように語る。
「私が得意とするのは炎と幻。私の前では、誰もが抵抗できず、焼かれるのよ」
「……あ、そう」
サムの返答は素っ気ないものだ。
里奈は、眉を吊り上げた。
「御託はいいんだよ。そんなに強いのなら、早くかかってこいよ。俺は、最強の魔法使いを知っている。あんたみたいな自分の力を過信しているような痛々しい女と会話するだけ疲れるし、時間の無駄だろ?」
「このガキ」
「その厚化粧顔を斬り裂いてやるよ!」
〜〜あとがき〜〜
ぎゅんぎゅん「僕もすっぴんさ!」
ビンビン陛下「私はビンビンである!」
カドコミ様にて「いずれ最強に至る転生魔法使い」最新話(十八話)が更新されております! ぜひお読みいただけますと幸いです!
最新コミック3巻も発売したてですので、ぜひぜひお読みいただけますと嬉しいです!
GWの読書に何卒よろしくお願いいたします!
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