70「ネイモンの選択です」
「なぜだ、なぜだ、なぜだっ!」
偽りの王ネイモン・スノーデンは、父王から奪い取った執務室で荒れていた。
その怒りは激しく、机の上の書類をすべて床にぶちまけ、椅子を蹴飛ばし、近くにいたメイドの顔が腫れ上がるほど殴るほどだ。
「なぜ! たった四人の侵入者にいいようにされているのだ! 捕縛も、殺すこともできず、自慢の宮廷魔法使いと犠牲を出してでも召喚した勇者たちまで簡単に負けるとは!」
ネイモンは側近に怒鳴り散らした。
「でしたら、ネイモン王自ら侵入者をお倒しになってはいかがでしょうか?」
「――なんだと?」
側近の言葉に、ネイモンは驚く。
謝罪をされると思っていたネイモンは、側近がまさか自分に歯向かうとは考えていなかった。
「貴様」
「ネイモン様は宮廷魔法使い第一席でした。今は王でありますが、その力で国のために侵入者を倒してくださいませんか!」
(――そんなことできるか!)
ネイモンは、思わず口から飛び出そうになった言葉を必死に飲み込んだ。
彼にとって、宮廷魔法使い第一席の地位は飾りだ。
無抵抗の人間をいたぶり殺すくらいには魔法が使える。
しかし、ネイモンは自分の実力が「そこそこ」であることを自覚していた。
その上で、強者として振る舞っていたのだ。
スノーデン王国の王子であるネイモンの虚言を前に、貴族たちはなにも言うことができなかった。
その復讐なのか、それとも実力を信じているのか、側近はネイモンへ戦いを促す。
「おそらくですが、侵入者四人はスカイ王国の者のようです。ならば、ネイモン様が血祭りにあげてくだされば、スカイ王国が怯むでしょう! そこを攻めれば、我が国の領土が広がります!」
「…………勇者を呼べ」
「はい?」
「勇者を呼べと言っているのだ! 何人死んだか知らぬが、半分くらいはいるだろう! そうだ、我が友押井一井を呼べ! 勇者の中で一番強い奴ならば!」
ネイモンは親交のある勇者押井一井を思い出した。
モンスターを相手でも傷ひとつ負うことない勇者ならば、どんな敵が来ようと撃退してくれると信じていた。
「ネイモン様!」
「会議中だぞ! なんだ!」
ノックもなしに、側近の部下である貴族が部屋に飛び込んできた。
側近の大声に臆することなく、彼の部下は震える声で告げた。
「ゆ、勇者筆頭であらせられる……押井一井様が死亡しました」
ネイモンは目の前が真っ暗になった。
(い、一番強い勇者を殺されたら、誰を戦わせればいいのだ? そうだ、全員だ! 全員を戦わせれば――私が逃げる時間くらいは稼げるだろう!)
ネイモンは、叩くではなく逃げる選択肢を選んだ。
たとえ偽りの王でもあっても、決して許されない選択だった。
「……ならば、勇者たちをぶつけろ! 我が国に魔法使いは多い! ならば、無駄飯ぐらいの勇者がすべて死んでも構わない! スノーデン王国の誇りに賭けて、侵入者を殺せ!」
〜〜あとがき〜〜
少しスノーデン王国サイドもお届けします。
次回はサムくんサイドです。
カドコミ様にて「いずれ最強に至る転生魔法使い」最新話(十八話)が更新されております! ぜひお読みいただけますと幸いです!
最新コミック3巻も発売したてですので、ぜひぜひお読みいただけますと嬉しいです!
何卒よろしくお願いいたします!
※復活しました! ご心配おかけしました!
どうもありがとうございます!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます