67「ウルと聖鱗の勇者の決着です」①
ウルは少し力を入れただけにも関わらず、自称聖鱗の勇者の腕が簡単に引きちぎってしまったことに驚いた。
「うわぁ、もろいなぁ」
「俺のっ、俺の腕がぁああああああああああああああああああっ、腕がぁああああああああああああああああああああ!?」
肩を抑えて絶叫を続ける一井に、つまらん、と興味を失い、手に持っていた腕を投げた。
すると、一井は腕を拾い肩に当てた。
「ヒール! ヒール! ヒールっ!」
光が放たれ、一井の腕がくっついた。
ウルは、失っていた興味を少し取り戻した。
「なんだよ、ヒールを使えるなら早く言えよ」
「……な、なんだてめえは、ガキのくせに! 俺の竜の腕を引きちぎりやがっただと!?」
一井の疑問の声を無視して、ウルは再び彼に近づいた。
「戦いっていうのはさ、最後まで立っていた方が勝ちなんだよ」
「な、なにを」
「回復魔法を使い、泥にまみれても、血に塗れても、最後に立っていた方が勝ちなんだ」
「だ、だから」
「私はそういう極限の勝負をしたいんだよ」
ウルは言葉の途中で蹴りを放った。
魔力が乗った鋭い蹴りだ。
彼女の蹴りは、腕をくっつけて呼吸を整えていた一井の右膝を砕く。
「ぐぁああああああああああああああああああああああああああああっ!?
ごきん、と骨が砕ける音が響くと同時に、一井が絶叫する。
「お前の鱗はそれなりに硬いんだけど、あくまでもそれなりなんだよ。ちゃんと魔力を流して、魔力を込めなきゃだめだろ。ほら、ヒールしてもう一回やってみろよ」
「痛いっ、痛いっ! 痛いよぉ!」
「……マジかよ。泣くなよ」
足を抑えて涙を流す一井に、取り戻しかけた興味を失った。
異世界から召喚され、特殊な力を授かった勇者――が、どれだけ自分のことを楽しませてくれるのか、わくわくしていた気持ちが台無しになった。
すると、不思議なことに、次は怒りが湧いてきたのだ。
「私に期待させておきながら、この体たらく。挙げ句の果てに、子供を虐げる趣味もある。そっか、そっか。うん。よし。殺そう」
ウルは膝を抑える一井の腕を握りしめた。
「や、やめ」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃにした顔を向けて、懇願しようとした一井の言葉を無視してウルは彼の腕を引きちぎった。
「んぎゃぁああああああああぁあああああああああああああああああああっ!?」
「あー、あー、あー。うるせえなぁ。つーか、まさかとは思うけど、痛みに耐性がないのか? 仮にも勇者なんだ、戦いくらいしているだろ? もしかして、その鱗で何とかなっちゃった感じか?」
のたうち回る一井から返事はない。
「たまたま防御が通じたら無敵かなにかだと勘違いしちゃったんだな。そっかそっか、くっだらねぇなぁ」
ウルは、回復魔法を一井に施した。
腕がつながり、膝が治る。
痛みから解放された一井が、涙を流しながらウルから離れる。
戦いの最中に、背中を見せて逃げる姿は、もう勇者の前に戦士でさえない。
「おーい、せっかく異世界に勇者として召喚されたんだ。意地を見せて見ろよ?」
「…………な、なにを」
無邪気に笑うウルに、一井は怯えた様子を見せた。
「私は防御しかしないからさ、全力で攻撃してみ? 勇者の全力を味合わせてみろよ?」
挑発するように、見下した目で、ウルは一井に言葉を投げて、大きく両腕を広げた。
〜〜あとがき〜〜
ウルさんは舐めているのではなく、勇者がこんなものとは信じたくないのです。
カドコミ様にて「いずれ最強に至る転生魔法使い」最新話(十八話)が更新されております! ぜひお読みいただけますと幸いです!
最新コミック3巻も発売したてですので、ぜひぜひお読みいただけますと嬉しいです!
何卒よろしくお願いいたします!
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