66「白山篤志が再び動き出します」





 勇者白山篤志は、魔王遠藤友也の砲撃によって身体の大半を消し飛ばされて絶命した。




 ――絶命した、はずだった。




 彼は死んでいる。

 それは、間違いない。

 友也が、死を偽装したところで見逃すはずはない。




 ――しかし、生き返ることまで想定できていないだろう。




 篤志の肉体がゆっくり癒えていく。

 失った部分を魔力が修復していく。

 失った肉体よりも、より強固に、より力強い肉体に置き換えていく。


 衣服までは戻らなかったが、白山篤志の肉体がすべて修復された。


「――ぷはっ、はぁ、はぁ……はぁ、はぁ、はぁ」


 死から舞い戻った篤志は、汗を流し、恐怖に震えながら荒い呼吸を繰り返す。


「あの野郎……この僕を、勇者に選ばれた僕を……殺しやがったな」


 本来ならば、篤志は死んだまま生き返ることはなかった。

 だが、篤志が友也たちと対峙している間に、ウルリーケ・ウォーカー・ファレルによって自称「不死身の勇者」が殺されたのだ。

 彼の力は篤志に宿った。


 不死身の勇者の再生条件は、身体の二割が残っていること。


 不幸中の幸いで、篤志の消し飛ばされた肉体な七割ほど。

 再生する条件を満たしていた。


 本来、死ぬはずだった篤志は、同じ勇者が死んだことで九死に一生を得たのだ。


 生き返った篤志は、友也と茜を探すが、いない。

 安堵した。


「――っ」


 篤志は自分が安堵したことを理解し、怒りを覚えた。


「僕が、僕があいつらがいなくて安心したって言うのか!? 許さない。あいつら、僕をコケにしやがって。必ず殺してやる。新たな力を手に入れたんだ。絶対に、復讐してやる!」


 もうひとつ手に入れたのは、氷結魔法だ。

 雪に覆われたスノーデン王国で戦うには、もってこいの力だ。


 篤志はいやらしい笑みを浮かべる。

 彼はもう正気ではなかった。


 死を経験したこと。

 力を得たこと。

 そもそも異世界にきてしまったことで、篤志は壊れていた。


「あの女を犯して、殺してやる。その光景をあいつに見せつけてやる!」


 篤志には、複数の選択肢があった。

 その中には、奇跡的に失わなかった命を守るという選択肢も、降伏して命乞いする選択肢もあった。

 しかし、篤志は、理不尽な逆恨みをして、友也たちを殺そうと追いかけてしまった。

 新たな力を得たことで、あれほど恐怖を感じた友也に勝てると勘違いしてしまったのだ。


「待っていろ、僕は、僕は……っ!」







 〜〜あとがき〜〜

 白山篤志くんは選択を間違えました、が、これからです!


 カドコミ様にて「いずれ最強に至る転生魔法使い」最新話(十八話)が更新されております! ぜひお読みいただけますと幸いです!

 最新コミック3巻も発売したてですので、ぜひぜひお読みいただけますと嬉しいです!

 何卒よろしくお願いいたします!

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