63「ウルと聖鱗の勇者です」①
「マトヴェイ様!? 貴様っ、侵入者の分際で、マトヴェイ様がお声かけくださったというの――に」
ウルに騎士が剣を抜き構えようとして、崩れ落ちた。
「え?」
「なん」
またひとり騎士が倒れ、メイドが失禁し、気絶する。
「悪かった、悪かった。まさか力を押さえていたせいで私を懐柔できるなんて思わせてしまったなんて……私もまだまだだな」
ウルは、一瞬反省すると、すぐに気持ちを切り替えた。
「この国にも飽きたし、もう城ごとぶっ壊しちゃおうっと」
白の上空から最大火力で魔法を放てば、この国の主要人物と、残った勇者と宮廷魔法使いを一掃できる。
できることなら、二度と勇者召喚というつまらないことができないように、すべてを吹き飛ばしたいと考えている。
「サムとレプシー、友也も仮にも魔王と元魔王だ、余裕だろ」
ウルは少し高めた魔力をもう少し高めて、指先に炎を生んだ。
彼女の膨大な魔力を注がれた炎は、大気中の酸素を吸収してさらに勢いを増していく。
気づけばウルよりも大きくなった炎の塊だったが、次第に手のひらサイズまで縮んでいく。
圧縮された炎にさらに魔力をこめる。
「さあ、ぶっ放すぞ!」
城の上に行こうと外に出るのではなく、階段を登るのではなく、屋根に穴を開けてショートカットを選んだ。
「おいおい、それはぶっ飛びすぎだろ!」
「――ん?」
魔法を放とうしたウルは、突然声をかけられて、その態勢のまま動きを止めた。
ゆっくり声のした方角に顔を向けると、毛皮のコートを羽織った三十代の男がいた。
「いくらなんでも、やりすぎだろう。お嬢ちゃんよう、あんまりおいたをすると」
ウルは男の声を無視して、魔法を天井に向けて放った。
――轟音が響き、天井に大穴が開いた。雪が吹雪く真っ白な空がよく見えた。
「よし!」
穴を開けるためだけに細かく力を調節することができたことにガッツポーズをした。
この世界でも、別世界でも、サムやレプシーたちのように強い者ばかりではない。
ウルは細かいことは苦手だが、制御する術をあまりしようとはしなかった。だが、スノーデン王国に殴り込みをしてみて、弱すぎる人間にはある程度力を押さえないと、力量差がありすぎて力を感じ取ってもらえないことを気づいた。
今まで会った奴らはみんな、ウルよりも自分が強いと勘違いしていた。
そういう馬鹿を相手にすることが、面倒でならなかったのだ。
「いやいやいやいやいや! 声かけただろ! 話きけよ! なに魔法ぶっ放してるんだよ!?」
「誰だよ、お前? さっきから、ぴーちくぱーちく……うるせえな」
声をかけてきた男は、冴えない男だった。
疲れた三十代。
覇気が感じられない。
それでいて、目がいやらしい。
「というか、なんだ、後ろのその趣味悪いのは?」
ウルの瞳に映るのは、男の持つ鎖に繋がれた全裸の少年少女だ。
サムよりも幼い、痩せ細った子供たちは寒さのせいか身体を震わせている。
「あん? ああ、これは」
「いや、説明は必要ない。黙っていろ、クズ野郎」
言葉を無視して、ウルは男の顔面を殴り飛ばした。
〜〜あとがき〜〜
自称・聖鱗の勇者★さんの登場です!
ウルさんのバトル回です!
カドコミ様にて「いずれ最強に至る転生魔法使い」最新話(十八話)が更新されております! ぜひお読みいただけますと幸いです!
最新コミック3巻も発売したてですので、ぜひぜひお読みいただけますと嬉しいです!
何卒よろしくお願いいたします!
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