62「ウルにスカウトのようです」
ウルは、スノーデン王国攻めに飽きていた。
すでに多くの騎士を倒し、勇者もふたり殺した。
宮廷魔法使いなど、魔法が少し使えるだけで騎士よりも雑魚だった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ……飽きちゃった」
どれだけ歩いても、メイドのひとりとも遭遇しない。
ウルが敵対した者をすべて一瞬で倒したことで、誰もが足音を聞いて逃げていく。
「宮廷魔法使いは口上が長いだけの屑だったし、せっかく遭遇した勇者も力に囚われただけの雑魚だった。がっかりすぎる。スカイ王国でサムと修行していればよかった」
どいつもこいつもウルの初歩的魔法で倒せてしまった。
魔法を使うだけ、魔力の無駄と思うほど弱かった。
ウルが強いということもあるが、宮廷魔法使いも勇者も弱すぎたのだ。
「待て!」
「……はぁ。また雑魚が来た」
髭を蓄えた、腹の出た中年男性が現れる。
ウルを探して走ってきたのか、息が切れていた。
男のは背後にはメイドと騎士がいる。
「なんだよ、おっさん」
「お……まあ、いい」
おっさん扱いされたことを不愉快に思ったようだが、男は浮かべた怒りを飲み込んでウルに話しかけた。
「スカイ王国の人間とお見受けする。私は、スノーデン王国公爵家当主マトヴェイ・ソバキンと申す」
「はいはい、それで?」
「私の名を存じていると思うが」
「いや、知らんし」
「……知らないのか!?」
「なんで知っていると思っているんだよ」
「スノーデン王国には、イグナーツ公爵、ウォーカー伯爵、シナトラ伯爵、ジュラ公爵、そしてシャイト伯爵の名が届いている! ならば、同じように我がソバキン公爵家の名がスカイ王国に届いていてもいいだろう!」
「まったく届いていないから!」
「……そ、そんな」
男はふらり、と傾く。
慌てて騎士たちが彼のふくよかな身体を支える。
おそらく、公爵家の名で威光をしめしたあと、なにか話をしようとしたのだろう。
しかし、男性―――マトヴェィ・ソバキンの企みは、一瞬にして潰えた。
「暇つぶしに話だけなら聞いてやるよ。ただし、つまらない話だったらぶっ飛ばすからな」
「……いいだろう。これは、お前にもよい話である。謹んで聞くとよい」
「急に態度でかくなったな、このおっさん」
少し面食らうウルに気づかず、マトヴェイは意気揚々に話を始めた。
「お前をスノーデン王国の宮廷魔法使いにしてやろう!」
「…………」
「ふはははは、言葉もないだろう! なぜスカイ王国の魔法使いが殴り込んできたのかわからなかったが、大方、自分の実力を売り込みにきたのだろう? その心意気、気に入った!」
降伏でも、命乞いでもなく、ウルをスノーデン王国の宮廷魔法使いにすると言い出したマトヴェイに、さすがのウルも呆れて言葉もなかった。
「爵位を与えよう! 奴隷も好きにしていい! お前ほどの強さがあれば、ネイモンを殺し、私が王になることだってできそうだ! ふたりでこの国の頂点にのし上ろうではないか!」
いいことを言ったとばかりに、鼻息を荒くするマトヴェイにウルは歩み寄る。
「おおっ、乗り気かな?」
ウルが腕を上げると、握手を求められたのだと勘違いしてマトヴェイが応じようとした。
が、それよりも早くウルの拳がマトヴェイの顔面に叩き込まれた。
「誰がてめえみたいなクズと組むかぼけぇええええええええええええええええええええええ!」
マトヴェイは背後の壁に激突し、背中を強打して意識を失うと、前のめりに倒れたのだった。
〜〜あとがき〜〜
ゲストのマトヴェイ・ソバキン公爵でした。
マトヴェイ・ソバキン氏は、味方には甘く、敵対者には死ぬまで追い込む困ったちゃん!
貴族と魔法使い以外を人間として見ていないんだゾ!
次回、ウルのもとに自称最強の勇者が!?
カドコミ様にて「いずれ最強に至る転生魔法使い」最新話(十八話)が更新されております! ぜひお読みいただけますと幸いです!
最新コミック3巻も発売したてですので、ぜひぜひお読みいただけますと嬉しいです!
何卒よろしくお願いいたします!
昨晩は大きな地震がありましたが、読者様、ご家族様は大丈夫だったでしょうか?
※申し訳ございませんが、昨晩から喘息の発作が繰り返されているためコメントへのお返事をお休みさせていただきます。
何卒よろしくお願いいたします。
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