61「友也と篤志の戦いです」②





「……ぽほっ?」

「あー」


 変な声を出した白山篤志に、魔王遠藤友也は、額に手を当て天を仰いだ。


(……なぜ魔力を当てただけで、相手の服が弾け飛ぶのか理解ができません。本当になんで!?)


 見たくもない男の裸体を見る羽目になり、友也は内心「おえ」とえずく。


 しばし痛い沈黙が続くが、篤志はゆっくり自らの姿を確認し、叫んだ。


「お、お前ぇえええええええええええええええええ! どういうつもりだぁああああああああああ!」

「信じてもらえないでしょうが、こういう仕様なんです」

「……ふざけているのか!?」

「ふざけてないないんです。僕はラッキースケベの持ち主なんです。――なにこれ、なぜこんな悲しいことを説明しないといけないんだ!」

「――っ、まさか……この状態がラッキースケベということは、お前は俺を犯そうというのか!?」

「そんなことがあるわけないだろうっ!」


 友也は拳を固く握りしめて、篤志の顔を殴りつける。

 鼻が潰れ、歯が折れる。

 倒れた篤志は剥き出しの尻を友也に向けて、言葉なくのたうち回る。


「……おっと、すみません。つい、殴ってしまいました。最近、僕ってこういうのばかりなんですよ。魔王らしくシリアスにバトルとかしたいんですが……今回もできそうもないですねぇ」


 友也は魔力を高めた。

 全力ではないが、魔王として相応しい魔力を篤志にだけわかるように解き放つ。

 のたうち回っていた彼は、動きを止める。

 顔を抑えていた篤志は、信じられないものでも見るように友也を見る。


「その顔を見ると、僕の魔力がどれくらいかわかってくれたようですね?」


 篤志は何度も頷く。

 言葉を発することができないほど、恐怖を覚えているようだ。

 命乞いの代わりに、涙を流しながら、壊れたおもちゃのように頷き続ける。


「ならよかった。では、さようなら」

「――ま」


 なにかを言おうとしていた篤志だったが、友也は彼の言葉を待たず、膨大な魔力を手に集めて砲撃として放った。

 魔力の閃光は、篤志の腹部に大穴を開ける。


「……あ、あ」


 腹部の大穴を見つめた篤志の瞳から光が消える。

 絶命したのだ。


「勇者としての力を見ることはできませんでしたね。ウルくんではないですが、これはあまりにもがっかりです。さて、茜さ――」


 もう死んだ篤志に興味はない。

 気持ちを切り替えて背後を振り返り、友也は硬直した。



 ――そこには、全裸の赤金茜がいた。



「な、なぜ?」

「――友也くんが魔力をぐわーって出すから、あいつと同じように服が飛んでっちゃったんだよ!?」

「そ、それは申し訳ない。まさか僕のラッキースケベがこれほど荒ぶるとは……と、とにかく僕の上着を着てください」


 慌てて上着を脱ぎ、茜にかけてあげる。

 彼女は真っ赤な顔をしてボタンを閉めると、小さな声で「ありがとう」と言った。


「いえいえ、僕が悪いんですから。それにしても――」


 友也の記憶にある赤金茜は中学二年生だった。

 年齢的にはまだ十三歳だったはずだ。

 だが、今の彼女は友也の記憶よりも成長していた。

 身長的にも、他にもいろいろ。


「大きくなりましたね」

「ちょっと、それってどういう意味!?」

「え? いや、誤解です違うんです。今の僕は、いやらしい目で見たわけではなく、過去を振り返って懐かしんだのであって、だいたい茜さんは身長こそ少し伸びていますが、他はあまり昔と変わっていないというか、なんというか、いや、僕はなにを言っているんだ!?」

「このっ、変態!」


 これでもかと真っ赤な顔をした茜が平手を振るう。

 決して避けられないわけではなかったが、友也は甘んじて受け入れた。


 ばちーんっ、と軽快な音が響いた。






 〜〜あとがき〜〜

 ラッキースケベ先輩「やれやれ」


 篤志くんの見せ場ゼロでした!

 ――が、このままではおわらんよ!


 カドコミ様にて「いずれ最強に至る転生魔法使い」最新話(十八話)が更新されております! ぜひお読みいただけますと幸いです!

 最新コミック3巻も発売したてですので、ぜひぜひお読みいただけますと嬉しいです!

 何卒よろしくお願いいたします!

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