60「友也と篤志の戦いです」①
「気をつけて、友也くん! こいつは、白山篤志は十二人の勇者がひとり死ねば、それだけ強くなるの! もう数人勇者が死んでいるから、きっと強さも」
「大丈夫ですよ、茜さん。この程度の力じゃ、僕の敵じゃない」
準魔王級の魔力を発したのは驚いたが、魔王である自分の脅威になるかどうかは別だ。
これからもっと力が上がるのであれば別だが、現状ではそのような様子もない。
「……白山、篤志くんというようですね」
「だったら、なんだ」
「――僕は遠藤友也。あなたたちの敵である、魔王です」
「な」
「え?」
篤志だけではなく、茜も絶句していている。
まさか魔王が目の前にいるとは思わなかったらしい。
「ま、魔王がスノーデン王国に乗り込んできたというのか!?」
「そういうことになりますね。さあ、どうしますか? 降伏するならば、苦しまずに殺してあげましょう」
「ふざけるな! ここで魔王を殺し、俺は英雄になる!」
「はぁ。まあ、平和な日本から勇者として召喚されて、力を手に入れたらこうなってしまいますよね」
力に溺れてしまうことは珍しくない。
サムやウルのように、大きな力を持っていながら自分の中できちんと折り合いをつけて誤った使い方をしない人間のほうが珍しい。
魔族だって、若い頃に力に魅入られる者もいるし、何百年生きても強いことが偉いと勘違いしている馬鹿もいる。
そんな奴らが自称魔王となり、大陸に戦争を生んだこともあった。
「いいでしょう、英雄になりたいのなら、僕を殺してみなさい」
「と、友也くん」
「茜さん、僕の後ろから出ないでください。お願いします」
「う、うん、でも」
「安心してください。この程度の奴は、僕の相手になりません。積もる話もありますが、それはあとでゆっくりと」
「……うん。気をつけてね」
茜が名残惜しそうにゆっくり友也から離れる。
一度、死に分かれた友人をまた失ってしまうのではないかと不安のようだ。
「お待たせしました……おや? 股間の怪我はなおったようですね。股間が痛かったから本気を出せなかったなどと言われても嫌だったので治してあげようと思っていたのですが、手間が省けましたね」
「……僕を挑発しているようだが、その手には乗らない」
「純粋な親切です。股間が潰れていたら、痛いでしょう?」
「そうやって……いいさ。魔王を名乗ったようだが、僕とさほど力は変わらないようだね」
「おや?」
友也は首を傾げた。
「大方、自称魔王なんだろうね。それなりの力を持っているようだけど、勇者の力が強化された僕にとって君は脅威ではない!」
篤志の魔力が吹き荒れる。
準魔王級の見事な魔力だ。
だが、魔王には届かない。
最近、大きく成長を始めたゾーイは、準魔王の中で魔力量は少なめだ。彼女は高速戦闘を得意としているので、魔力の大きさは関係ない。
しかし、篤志の魔力量はそのゾーイと同じか、少し劣るくらいだ。
ゾーイを貶めているわけではない。
魔力量が準魔王級でありながら、篤志から何も脅威を感じないのだ。
魔力が大きくても、使いこなせれば意味がない。
ゾーイの場合は、魔力がなくとも長い研鑽の果てに戦いようによっては魔王を相手にそれなりに戦えるのだ。
篤志にはゾーイと違い、イタズラに魔力を高めて威圧しているだけだ。
人間や弱い魔族を相手ならば、萎縮してしまうだろうが、相手が格上ならば無駄でしかない。
魔力を高める前に、有無を言わずに攻撃してきた方がまだマシというものだ。
「僕の力がそれなり?」
「そうだ! この程度で魔王ならば、この世界を支配することだって可能のようだね! いや、違うな。僕の力が強すぎるんだ!」
「――哀れな」
「なに?」
友也は残念に思った。
サムやウルではないか、日本から召喚された勇者がどれほどの実力か少し楽しみにしていた。
本当に少しだが、そのわずかな期待を裏切られた気分だった。
しかも、篤志は世話になった赤金茜を襲っていたのだ。
失望と落胆、そして怒りが友也の心の中に渦巻いていく。
「それほど僕の力を知りたいのであれば、教えてあげましょう」
友也はそれなりに魔力を解放した。
無意識に押さえていた魔力を、自らの意思で見せつけるように解き放ったのだ。
――次の瞬間、白山篤志の服がくつしたと靴を残して吹き飛んだ。
〜〜あとがき〜〜
最恐の魔王遠藤友也VS勇者白山篤志
――ふぁいっ!
カドコミ様にて「いずれ最強に至る転生魔法使い」最新話(十八話)が更新されております! ぜひお読みいただけますと幸いです!
最新コミック3巻も発売したてですので、ぜひぜひお読みいただけますと嬉しいです!
何卒よろしくお願いいたします!
*本日、所用のためコメントへのお返事をお休みさせていただきます。
よろしくお願いいたします。
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