【王都ビンビン物語】ビンビンナンジャー編①





 窓から飛び込んできた侵入者たちは、異様の一言だった。


 ――まず、カラフルだ。


 青、赤、黒、緑、ピンク、と目が疲れそうだ。

 続いて目を引くのが、それぞれが――おそらく身元を隠すためなのだろうが、目元を隠すマスクをしている。

 無論、ヘンリー・ジュラ公爵にはひとりひとりが誰か理解できてしまった。


「び、ビンビンナンジャーだと!? 何者だ! そ、それに、その破廉恥な格好はなんだ!?」


 スコット・レイカー伯爵が、動揺と困惑、それ以上の恐怖に包まれ叫ぶ。

 ジュラ公爵は見ないことにしていた事実に向き合った。


「……私からも聞かせていただきたいが、あなたたちの素性はさておくとして、なぜ悪夢のような格好をしているのか説明を……いや、説明はいらぬ。察した」


 ビンビンナンジャーを名乗る五人組が身に纏う格好は、恐ろしいものだった。

 ジュラ公爵をはじめ、同世代ならば誰もが悪夢で見る――スイトピー・ザイン・ジョンストン宮廷魔法少女と色違いの魔法少女衣装に身を包んでいるのだ。


 フリルとリボンがあしらわれた可愛らしいカラフルな衣装を、逞しい少年たちが身につけている。

 ムダ毛の処理をしているのが実にいらっとした。


「えー、殿……いえ、そこの青い方」

「私はビンビンブルーである!」

「あ、はい」


 スカイ王国で青を身につけることができるのは王族だけなのだが、魔法少女の衣装まで青くしなくても、ていうか隠す気ないじゃん――と、ジュラ公爵が心の中で突っ込んだ。


「……ビンビングリーンだ」

「……ビンビンブラックです」

「ビンビンレッドだよ、この野郎!」


 ビンビンブルーとは違い、グリーン、ブラックは心底嫌そうに、レッドはヤケクソ気味に叫んだ。

 ジュラ公爵は、若き頃を思い出す。

 スイトピー宮廷魔法使い付き合わされ、自らも彼らと同じような衣装を身につけさせられたことを。


「そして、お姉さんが――ビンビンピンクよぉ!」


 ブルー、グリーン、ブラック、レッドが可愛いステッキを持っている中、筋骨隆々のピンクだけが棍棒を持っている。

 低い声で自らを「お姉さん」と言う、彼、いや、彼女に、ジュラ公爵から当主の座を奪おうとした弟サイモン・ジュラが「ひぇ」と情けない悲鳴をあげる。

 レイカー伯爵に至っては、


「悍ましい格好をした不審者め! ええいっ、であえ! であえい!」

「いや、私の家なのだが?」


 勝手に兵士を呼び始めてしまう始末だ。

 ジュラ公爵は、過程はさておき、納得のできる形で今回の一件が終わると確信した。






 〜〜あとがき〜〜

 ジュラ公爵氏、グリーン、ブラック、レッドの姿にそっと自らの過去を思い出してしまう。


 カドコミ様にて「いずれ最強に至る転生魔法使い」最新話(十八話)が更新されております! ぜひお読みいただけますと幸いです!

 最新コミック3巻も発売したてですので、ぜひぜひお読みいただけますと嬉しいです!

 何卒よろしくお願いいたします!

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