59「友也と茜の再会です」②
「な、なにをどうすれば股間を潰されるようなことが――はうっ、なんですか、この懐かしさのある股間の痛みは……ああ、記憶が蘇っていく」
「うわ、こいつ気持ち悪い」
股間を押さえた友也に、股間を押さえた青年が気味悪がった。
「――っ、思い出した!」
「うるさい! この状況をさらにぐちゃぐちゃにして! 女の前に、まずはお前から」
「邪魔です」
青年が血まみれの手を伸ばしてきたので、友也は彼に裏拳を放った。
友也の拳を食らった青年は、壁を突き破って部屋の中に転がっていく。
もう邪魔をする者はいない。
「まさか、あなたは」
心臓が鳴る。
緊張もある。
震える唇で、友也は驚いた顔をしてこちらを見る少女の名を呼んだ。
「――赤金茜さん、ですよね?」
「――友也くん!」
少女は友也に抱きついた。
慌てるも、ゆっくり受け入れて彼女の背に手を回す。
「……お久しぶりです」
遠藤友也と赤金茜の関係は、隣に住む同級生だ。
幼馴染みというには付き合いは短く、決して朝起こしにきてくれるような関係ではない。
あくまで同級生であり、会話も特にない。
ラッキースケベを何度かして、股間を蹴られたことはある関係だった。
そんな茜との関係に変化が起きたのは、彼女の祖母が友也の家庭環境を見るに見かねてなにかと気にしてくれるようになったことがきっかけだ。
食事を分けてくれることからはじまり、毎日登校時に「おはよう」と言ってくれる。帰ってくる時間には家の前に立っていて「おかえり」と言ってくれるのだ。
友也が、彼女の祖母と挨拶することを楽しみにしていたのは言うまでもない。
次第に、赤金家で食事をいただくことが増えた。
無論、毎日というわけではない。
基本的に友也の食生活はコンビニが主だったが、それでもときどきのお裾分けや、彼女の家で食べる食事は――暖かいものだった。
茜と少しずつ会話をするようになるも、友也はラッキースケベという悪癖がある。
挙げ句の果てに、ラッキースケベしながら女子から根強い人気があるのだ。
茜は、家の中では気安く話してくれたが、学校での会話はなかった。
友也も彼女に迷惑をかけることはしたくないので、話しかけることはしなかった。
彼女の祖母と一緒に食事をとり、ときどきラッキースケベをして引っ叩かれて、「友也くんも大変だね」なんて言ってもらえるくらいでよかったのだ。
しかし、友也は彼に嫉妬した者に暴行を受けて死亡した。
その後、彼女たちがどうなったのか知らない。
「……まさか茜さんにこうやって会える日がくるとは思いませんでした」
「それはこっちの台詞だよ! 死んじゃったのに、どうして!」
茜は泣いていた。
自分の死に泣いてくれる人がいることを感謝する。
「いろいろあって、こっちの世界に転生したんです。いえ、僕のことはいいんです。まさか茜さんがスノーデン王国に召喚された勇者だなんて」
詳細を尋ねようとした時、砕けた壁の中から青年が起き上がってきた。
「お前ぇええええええええええええええええええええええ!」
激昂し、魔力を吹き上げている。
友也は目を見開く。
スノーデン王国の勇者は、準魔王に届かない魔力と実力しかないと思っていたのだが、青年の魔力量は準魔王を超えていた。
魔王までは届かないが、先程まで大したことなかった青年が急に変化を起こしたことに警戒心を高める。
「僕はまた強くなったぞ! また勇者が死んだおかげだ! わかるか! 僕は勇者が死ねば死ぬほど強くなるんだ!」
「――ネタバレありがとうございます。つまり、君自身は弱いんですね」
〜〜あとがき〜〜
ラッキースケベ先輩「再会に水を差すほど無粋じゃないのさ」
カドコミ様にて「いずれ最強に至る転生魔法使い」最新話(十八話)が更新されております! ぜひお読みいただけますと幸いです!
最新コミック3巻も発売したてですので、ぜひぜひお読みいただけますと嬉しいです!
何卒よろしくお願いいたします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます