58「友也と茜の再会です」①





 魔王遠藤友也は、ゆっくり階段を登っていく。

 すでにサム、ウル、レプシーが戦い、勝利しているのが魔力の上下で理解できていた。


「……特別警戒するような力の持ち主はいないみたいですね」


 三人の魔力の高まりは一時的なものだ。

 ならば、「戦い」にすらならなかったのだろう、と判断する。


「さて、僕も勇者のひとりかふたりくらい倒しておかないと、ウルくんになにを言われるか」


 スノーデン王国王宮の中を歩いていて気づいたのは、壁に魔力を遮断する魔法陣が刻まれていることだ。

 どの国でも、盗聴や暗殺を防ぐために魔力を通さない施しをしていることがある。

 だが、サムやウルのような膨大な魔力を持つ者には通用しない。

 あくまでも人間用の対策でしかないので、魔族である友也には壁の魔法陣などただの模様でしかない。


「三階で魔力の反応がありますね。不安定な魔力ですが……おっと、怒声も聞こえるじゃないですか。内輪揉めか、僕ら以外にも襲撃者がいるか、楽しみです」


 三階に着いた友也は声のするほうに向かう。

 すぐに探し人は見つかった。


「――ようやく見つけた勇者ですが、なにやら不穏な雰囲気ですね」


 青い顔をする少女と、彼女に手を伸ばす青年だった。

 少女の顔は、少し懐かしいと思う。外見が日本人を連想させるからかもしれない。

 青年のほうは顔が見えない。

 両者とも人間を超えた魔力量を持っていることから、勇者と判断した。


「しかし、この程度ですか。いえ、先にスカイ王国に現れた勇者が準魔王にも届かない程度だったのでさほど期待していなかったのですが……ウルくんなら雑魚と吐き捨てたでしょうね」


 すぐに殺しても構わないが、少しくらい情報を得ようと会話を試みた。


「――うそ」


 少女が友也を見て、まるで死人でも見たような反応をした。

 もしかすると、ラッキースケベ大魔王の名が異世界の勇者にも轟いているのかと、友也は悲しくなる。


(不思議ですね。彼女に懐かしさを覚えます。昔、お世話になったおばあちゃんのような……ふっ、僕も薄情な男です。あれだけお世話になった方を何百年ぶりに思い出したのですから)


「誰だ、お前は!?」


 青年が振り返る。

 血走った目をする青年は正気ではないように思えた。


「魔王ですよ……って、なんであなたは股間を真っ赤にしているんですか!? ちょ、それ血ですか!? なぜ!? 説明してください!?」


 青年の股間は血で濡れている。

 なにが起きたのか想像するのも怖く、つい叫んでしまった。

 すると青年が叫んだ。


「この女にっ、潰されたんだよ!?」

「ひぇ」


 友也は、異世界から召喚された勇者への警戒を、一気に引き上げた。






 〜〜あとがき〜〜

 友也くんは1000年以上生きているので、茜さんをぱっと思い出せませんでした。

 しっかり見ていないというのもあります。

 これから、これから!


 カドコミ様にて「いずれ最強に至る転生魔法使い」最新話(十八話)が更新されております! ぜひお読みいただけますと幸いです!

 最新コミック3巻も発売したてですので、ぜひぜひお読みいただけますと嬉しいです!

 何卒よろしくお願いいたします!

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