54「ウルと宮廷魔法使い筆頭です」②
ぺちん、とウルは軽く雷をはたき落とした。
「眩しいじゃないか!」
「――ぽえ?」
エフセイは間抜けな声を出している。
「偉そうなことを言って自慢の魔法が目眩しとか……お前、私のこと舐めてるだろ!」
「……ありえん……私が今までこの魔法でどれだけの命を奪ってきたと思っているのだ!? それを、それを! 蝿でも叩き落とすように!?」
「……まじか、今の攻撃だったのか。なんか、すまん。もう一回やっていいぞ」
ウルは、震えるエフセイに同情の目を向ける。
まさか自信満々の必殺技がこんなものかという事実に、ウルも困ってしまう。
かつて、アルバート・フレイジュという宮廷魔法使いがスカイ王国にいた。魔道具を使い実力上げしていた彼だったが、そんな彼でも素の力はエフセイほど弱くなかった。
「……ほ、ほら、頑張ってもう一回やってみろって。もしかしたら私を殺せるかもしれないし。頑張れって!」
「…………な」
「な?」
「舐めるなぁああああああああああああああああああああああああああああ!」
「キレるのかよ!?」
よほど頭に来たのか、エフセイは顔を真っ赤にして魔力を高める。
「おー、やればできるじゃん!」
それなりの魔力を発揮したエフセイに、ウルは拍手をする。
しかし、その態度が癇に障ったのだろう。
彼の額に血管が浮かんだ。
「この雷鳴と呼ばれた私を愚弄するのであれば、いいだろう! 消し炭さえ残らないと思え!」
エフセイは雷の槍を生み出す。
それなりの魔力が注ぎ込まれた殺傷能力に長けた魔法だ。
ウルの瞳が青く光り、彼の魔法を見た。
「なるほど、うんうん。似たような魔法はスカイ王国にもあるぞ。本来、形にならない雷に形を与えることで扱いやすくるんだよな」
ウルは左足を軽く前に出し、腰を引く。
左腕をまっすぐエフセイに向け、右腕を添えた。
まるで弓を扱うように、ゆっくり右腕を引くと、そこには雷の矢が生まれていた。
「――馬鹿な」
エフセイが目を見開く。
ウルの使った魔法に驚いたわけではない。
彼女が魔法に込めた魔力量に驚いたようだ。
「さあ、勝負だ。宮廷魔法使い筆頭!」
「ぐっ、ぬぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
余裕をなくしたエフセイが雷の槍を投擲した。
技名を名乗る余裕さえなく、血走った目をウルに向けていた。
対し、ウルは迫る雷の槍に向かい、笑みを浮かべる。
「――即席なので技名はないんだが、ま、お互い様だな」
そう言って右手から力を抜く。
刹那、うなりを上げて雷の矢が放たれ、エフセイの放った雷の槍を飲み込み彼の肉体を包んだ。
高密度の雷によってエフセイの肉体が灰になる。
雷の勢いは止まらず、そのまま城の壁を貫き、大穴を開けた。
「ま、こんなもんか。まったく、加減は難しいな」
宮廷魔法使い筆頭は期待外れだったので、勇者と戦いたいと次の獲物を探しはじめた。
〜〜あとがき〜〜
ウルさん圧勝!
3/27に「いずれ最強に至る転生魔法使い」コミック3巻が発売となりました!
何卒よろしくお願いいたします!
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