50「赤金茜は再会します」
赤金茜は王宮を走っていた。
白山篤志と距離を取ることもそうだが、スレイマン王子を見つけようとしているのだ。
篤志と揉めた以上、彼は追いかけてくるだろう。
それまでにしらみつぶしに部屋の中を探してスレイマンを見つけようと決めた。
だが、どこに誰がいるのか把握していない状況下でスレイマンひとりを見つけることは難しい。
メイドや兵士が茜の行動にギョッとし、「何をしている!」と捕まえようとしてくるが、小さく謝罪し拳や蹴りを叩き込み沈黙させる。
いずれもっと大掛かりに止めに来るだろうと考えている。
「早く、早く見つけないと」
見つけてどうするのかまで考えていない。
スレイマンを見つけ、グレゴリーを解放し――その後をどうすればいいのかわからない。
しかし、茜の行動は止まらない。
「戦いでもなんでもしてやるわよ!」
今日だけでも何度決意を叫んだだろう。
口にしなければ、不安で押しつぶされてしまうのだ。
茜は走りながら、部屋を回る。
――その時、城が揺れた。
「な、なに? なんなの!?」
轟音と共に大きな揺れを遅い、茜は転んでしまう。
一階から人の叫び声と魔力の高まりを感じ取った。
「何が起きて――」
「襲撃のようだね」
「――っ」
聞きたくない声に慌てて立ち上がり、振り返る。
すると、そこには青い顔をし、濡れた股間を抑える篤志がいた。
彼の股間を抑える手は赤く濡れている。
「……どうしたの、それ?」
「――お前がやったんだろう!」
篤志の叫びに、茜は彼の股間を思い切り蹴り上げたことを思い出した。
「え? うそ? 潰れちゃったの!?」
「ちくしょう! 犯してやろうと思ったのに、これじゃあ、うっ、うぐっ」
「友也くんにも同じことしたことあるけど、そっか、潰れちゃったんだ」
「誰だよそいつ!? ごめんじゃ済まないからな!」
茜は、反省した。
篤志に対してはざまあみろとしか思わないが、友也には悪いことをしてしまったと泣きそうになる。
かつて、隣人だった少年が転んだ拍子にスカートの中に手を入れてパンツだけを器用にずり下ろされたことがある。
羞恥と怒りに支配された茜は友也の股間を思い切り蹴り上げた記憶がある。
篤志が苦しんでいる姿を見ると、きっとあの時、友也の股間は潰れてしまったのだろうと考えた。
「謝れるなら謝りたいよ」
「違うよ! 僕に謝れって言ってんだよ! くそっ、回復魔法をかけたいけど、集中力がくそっくそっくそ!」
肩で息をしながら、篤志は血走った目をして茜に近づいていく。
股間から流れた血に濡れた手を伸ばし、茜を掴もうとした。
「――ようやく見つけた勇者ですが、なにやら不穏な雰囲気ですね」
どこかで聞いたことのある声がした。
「しかし、この程度ですか。いえ、先にスカイ王国に現れた勇者が準魔王にも届かない程度だったのでさほど期待していなかったのですが……ウルくんなら雑魚と吐き捨てたでしょうね」
「――うそ」
茜は絶句した。
そこにいたのは、かつて故郷で若くして死んでしまった――。
「誰だお前は!?」
「魔王ですよ……って、なんであなたは股間を真っ赤にしているんですか!? ちょ、それ血ですか!? なぜ!? 説明してください!?」
〜〜あとがき〜〜
ついに再開!
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