48「殴り込みです!」③





 三十人の騎士を相手に、サム、ウル、レプシーは魔力を一切使うことなく、膂力のみで倒してしまった。


「ま、こんなもんだろう」


 ウルが「つまらん」と吐き捨てる。

 騎士たちの動きは笑えるほど鈍かった。

 鍛えていないのがはっきりわかる。

 スカイ王国の騎士たちも、魔法軍の存在によって目立たないが、かなり鍛えていてひとりひとりが強い。

 スカイ王国の日々を支えている縁の下の力持ちと言える存在だ。


 対し、スノーデン王国の騎士たちは、愚鈍である。

 動きが鈍い以前の問題だ。

 サム一人に対し、五人同時に切り掛かってくる。

 お互いの身体が邪魔でしかないとわからない。

 せめて、サムを囲んでから切り掛かるくらいはしてほしかった。


「……なんていうか、王宮を守る騎士がこの程度って……ちょっとびっくり」

「鍛錬を何もしていないのがよくわかる。騎士を名乗る資格がない」


 サムは呆れ、レプシーも騎士の鍛錬不足に嘆いていた。


 三十人いた騎士が数人を残して絶命している。

 今まで戦ってきた中でも、かなり弱い部類だった。


「――ちょっと暴れたら宮廷魔法使いや自慢の魔法使いが集まってくると思っていたんだが、がっかりだ」


 最初こそ、騎士の背後から遠巻きに見ていた者はいた。

 だが、今はひとりも残っていない。

 騎士が負けるとわかるど、我先にと逃げ出してしまった。

 あからさまにがっかりしているウルに、サムはかける言葉が見つからない。

 わざわざウルが来るほどでもなかっただろう。

 サムもウルと同じく落胆した。



 ――その時、高い魔力と吹き荒れる炎が三人を襲った。



「――キリサクモノ」


 炎の塊が迫るよりも早く、サムが軽く腕を振る霧散した。


「弱い魔法だな。まあ、いいさ。ようやく勇者のお出ましか?」


 不意打ちで攻撃されたように思えたサムたちだが、力があまりにも感じ取れなかったので気づかなかった。

 この場には、サム、ウル、レプシー、友也がいる。

 いくら力を押さえているとはいえ、それぞれの力を常に感じ取っているため、弱い魔力の持ち主は「本能が脅威ではない」と感じ取ることができない。

 もちろん、意識して探れば感じ取ることはできるのだが。


 ――宮廷魔法使いと勇者に期待していたサムたちは、弱い魔力を意識的に探索から除外していた。


「まさか他国の人間が偉大なるスノーデン王国の王宮に乗り込んでくることが来ようとは思いもしなかった。あまりにも無礼! あまりにも愚か! 自らの罪に気付いていないことには哀れにさえ思う!」


 赤色のローブを羽織ったのは、着飾った身なりのいい男だった。

 年齢は三十半ばほどだ。

 体格は良い――いや、小太りだ。

 貧しいスノーデン王国の人間とは思えない人物だった。


「我が名は、モニソン! スノーデン王国宮廷魔法使い第三席である!」


 大した強さを感じないが、サム、ウル、レプシーは我先にと攻撃を仕掛けた。


「――全てを切り裂く者」

「――煉獄」

「――全てを喰らう者」





 〜〜あとがき〜〜

 これに耐えられたらしゅごいよ!


 3/27に「いずれ最強に至る転生魔法使い」コミック3巻が発売となりました!

 何卒よろしくお願いいたします!

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