間話「ジョナサンの胃痛です」
寒い日の午後。
ジョナサン・ウォーカーは、暖かいお茶を飲んでほっとしていた。
最近は胃の調子も良い。
イベントには事足りないスカイ王国の日々だが、サムのおかげで――だいぶ慣れた。
おかげで、今のジョナサンの胃は鋼になったと自負している。
「陛下と殿下に振り回され鍛えられたと思っていた胃がこうも繊細だったとはな。イグナーツ公爵が羨ましい。ギュンターに振り回されながら、泣き言ひとつ言わない。私も早くその領域に至りたいものだな」
ローガン・イグナーツ公爵が聞いたら「慣れというよりも諦めだけどね!」と悲しいことを言うかもしれないが、幸いと言うべきか、彼はこの場にいない。
「サムたちを見ていると、若い頃を思い出してしまうね。陛下は悪夢から解放され、デライトも立ち直り、ローガン殿もギュンターが結婚し一安心。私も新たな子が生まれるとは……幸せであるが、やはりロイグ殿下には生きていてほしかった」
思い出すのは、学生時代。
まだ殿下であったクライド・アイル・スカイと出会い、友になった日のことだ。
デライト・シナトラ、ローガン・イグナーツ、キャサリン・ドミニク・ジョンストン、そしてロイグ・アイル・スカイがいた。
楽しい日々だった。
美しい日々だった。
輝かしい日々だった。
だが、ロイグが欠けてしまい、あまり当時のことを話すことは無くなった。
そんなロイグの忘れ形見のサムが娘たちと結婚し、義理の息子になるとは人生なにが起きるかわからない。
ロイグのかつての婚約者だったイーディス・ジュラ公爵の娘オフェーリア・ジュラがサムの婚約者になったのは驚きだ。
イーディス本人も虎視眈々と、サムと結婚しようとしているのだが、それは見て見ぬ振りをしようと思う。
彼女に逆立ちしても勝てないのだ。
「さて、もうしばしゆっくりして仕事に――っ、なんだ、カル殿の魔力が?」
準魔王であり、ウォーカー伯爵家に滞在しているカルミナ・イーラの魔力を感じ取ったジョナサンは、魔力源である食堂へ向かう。
カルミナの転移には世話になっており、領地や交友のある貴族の屋敷に秘密裏に転移してもらうことで、移動時の時間短縮はそうだが、内々で進めている話などを嗅ぎつけられずにすむという利点もある。
だが、カルミナの魔力をこれほど感じ取った転移は初めてだ。
何かあったのかと不安になる。
「――カル殿! なにかありましたかな!?」
食堂に飛び込んだジョナサンを迎えたのは、カルミナとたくさんの子供たちだった。
メイドたちが彼らのために動いている。
子供たちは、寒そうに震え、緊張を隠すように身を寄せ合っていた。
「あ、ウォーカー伯爵さん。これはっすね――」
説明をしようとしたカルをジョナサンは手で制す。
「だ、大丈夫です。この状況を見てすべてを察しました。――大方、友也殿がサムと……おそらくレプシー殿もご一緒に、スノーデン王国に偵察に向かったところ、子供たちを保護し、彼らの境遇に怒ってスノーデン王国をぶっ潰すとかなにかを決めたのでしょう。子供達は戦いに巻き込まれないよう保護したところですね。そして、間違いなくウルもその場にいる!」
「――すげえ! 大正解っすけど、逆に怖いっす!?」
「あ、ぽんぽんいたい」
サムたちが巻き起こすイベントには、鋼の胃では駄目だと理解した。
「オリハルコンの胃がほしい」
「何言ってるっすか!?」
〜〜あとがき〜〜
ジョナサンパパどんまいっす!
27日に「いずれ最強に至る転生魔法使い」コミック3巻が発売となりました!
何卒よろしくお願いいたします!
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