45「子供達の保護から始めます」②





「……お姉さんたちはどうする?」


 サムは続いて、警備兵のジーナとタマラに問う。


「ま、まさか、私たちにも国外に逃げる選択肢を与えてくれるのか?」

「……なんと魅力的な」


 スノーデン王国の兵士であるジーナとタマラは接した結果、悪人ではないと理解した。

 勇者や貴族に思うことがあるようで、まともな人間だ。

 これからウルたちと共に暴れることになると思うと、彼女たちも避難した方がいいと判断した。


「いや、私たちは残ろう」

「この国は嫌いだが、ここで役目を放棄できないな!」


 この場で子供たちと共にスカイ王国に亡命しても、誰も責めないというのに、彼女たちは残る選択をした。


「お前達を王宮に案内する役目もある。まともな勇者もいるので、お前達に彼女たちのことを教えなければならない」

「逃げるのはこの国が滅んでからでよろしくお願いします!」

「――ありがとう、助かるよ」


 サムは二人の決断に感謝し、握手を求めた。

 ジーナとタマラは笑顔で応じてくれる。


「なんだ、また嫁候補か?」

「違いますー! ラッキースケベ案件ですー!」


 ウルにそんなことを言われて慌てて否定する。

 サムの言葉にウルは友也を見て、一言。


「寒いのにお盛んだな」

「酷い!」


 顔を覆ってしくしく泣き出す友也を無視して、サムたちは動くことにした。


「それじゃあ、カル。頼むよ」

「あいあいさー! ざっと子供たちを保護することはわかりましたけど、あまり保護人数を増やさない方がいいっすよ。ウォーカー伯爵のお腹がパーンしてしまうっすからね」

「そこは気を付ける! でもさ、手の届く範囲だけでも助けたいじゃん」

「サムさんの場合は手の届く範囲が広いっすけどねぇ。ま、あとでリーゼさんたちに怒られてくださいっす! んじゃ、いくっすよ! 子供達!」

「は、はい! よろしくお願いします!」

「いい返事っす! こっちに来て欲しいっす。そうそう、自分を囲むように、そうっす、そうっす!」


 カルは子供たちを集めて転移の準備に取り掛かる。

 眩い光が発し、手を繋いだ子供達を包んだ。


「サム! ありがとうございます!」

「うん。またあとでね!」


 レットがお礼を言い、カーラが手を振る。

 サム、レプシー、友也はカーラに手を振り返した。


 そして、子供たちは一人残らずカルの転移によってスカイ王国へ。


「よーし! ここからは私たちの番だな! スノーデン王国滅ぼしツアーにようこそ!」


 楽しそうにそんなことを言い、建物から一歩外に出たウルはすぐに中に戻ってきた。

 自分を抱きしめ、ガクガクと震えている。


「さ、サム……防寒着をくれ……寒い」

「そんな薄着で来るから。はい」


 サムが渡した防寒着を素早く着込んだウルは、ほっとする。

 続いて、すぐに瞳を怒りの炎で燃やした。


「ゆるさん、スノーデン王国! 私をこんなに寒いめに遭わせるなんて!」

「わー、理不尽!」






 〜〜あとがき〜〜

 27日に「いずれ最強に至る転生魔法使い」コミック3巻が発売となりました!

 何卒よろしくお願いいたします!


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