41「サムたちは決めました」②





「……レットだけじゃなくて、みんなの家族が勇者に殺されたって?」

「うん。俺は目の前で……連れていかれそうになった母さんを助けようとした父さんを殺されて……母さんはそのあとどうなったのかわからないんだ」

「なんてことを」


 声が震えてしまう。

 子供が自分の前で親が殺される姿を見てしまったことが、どれだけ衝撃だったか想像さえできない。


 レプシーと友也、ジーナとタマラも絶句して言葉がないようだ。


「……おそらくだが、彼の母君は、その」


 ジーナが言葉を選び、何かを言おうとしたが、最後まで言葉を続けられなかった。


 勇者が力を試すのに、一般人を使っていると聞いている。

 レットの母親がどうなったのか、想像に容易い。


「サム……僕はあまり他人に興味はありません。今日も、軽くこの国のことを調べることができればと思っていました。しかし」


 友也は拳を固く握りしめて震えていた。


「……私とかつて戦った勇者とまるで違う人間が勇者を名乗っているようだ。子供から親を奪うような外道を――私は許せない」


 レプシーの怒りに、魔力が熱を帯び、空気が震える。

 愛妻家であり、子煩悩。

 かつて、家族を奪われたことをきっかけに長い時間、復讐者として大陸を破壊し続けた元魔王の言葉は重い。


「奇遇だな、友也、レプシー。俺も、このまま国へ帰るつもりはない。レット、それにみんな、俺は約束する。――勇者をぶっ殺す」


 考える必要などない。

 スノーデン王国は大きな過ちを犯した。

 人とは思えない鬼畜を召喚し、勇者を名乗らせているのだ。


 貧しい国で懸命に生きる民を踏み躙ることを平気でできるのなら、それ相応の報いがあることを教えてやろう。

 自分が絶対的な強者ではなく、踏み躙られる存在であることを、徹底的に知らしめてやる。


「あ、ありがとう!」


 レットは涙で顔をぐしゃぐしゃにしてお礼を言った。

 だが、まだ早い。

 彼の感謝は、勇者を殺してから受け取ろう。

 レットだけじゃない、起きている子供たちは勇者の話を聞き奪われた家族を思い出し、涙を流している。

 眠っている子供ったちも、泣いていた。


「――スノーデン王国……もうお前らはいらない。滅ぼしてやる」

「よく言った!」


 サムが暗い感情を抱えて呟くと、聞き覚えのある声が背後から響いた。


「――ウル!? カルミナ!?」

「待たせたな!」

「お疲れ様っす!」


 カルミナの転移で追いかけてきたウルの姿があった。

 ウルは獰猛な笑みを浮かべた。


「さあ、異世界の勇者とスノーデン王国をぶっ潰そうぜ!」






 〜〜あとがき〜〜

 ウル「お待たせ!」


 コミック最新刊3巻が、ついに明日3月27日(水)発売となります!

 何卒よろしくお願いいたします!

 ※近況ノートに3巻の表紙をUPしておきましたので、ぜひご覧ください!

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