40「サムたちは決めました」①






「待って、なにその不名誉なお名前!?」

「人の身でありながら、魔王を名乗り、老若男女問わず寝所に連れ込む悪鬼羅刹!」

「すでに孕まされている人もいると聞く!」

「まさかこのような少年とは」

「……人は見かけによりませんね」

「……なんだろう。嘘と本当が混ざっているからどこから否定しよう!」


 魔王には至ったし、妻は子を孕んでいる。

 しかし、夜の魔王なんて名乗っていないし、老若男女を連れ込んだりしていない。

 とにかく誤った情報を正そうとするが、


「それはともかくですね」

「それはともかく!?」


 友也が話を進めてしまった。

 唖然とするサムを放って、友也がふたりに問う。


「まず、僕も自己紹介をさせてください。僕は遠藤友也です。そしてこちらが」

「レプシー・ダニエルズです。よろしく」

「……遠藤友也や、その名前しかとこの胸に刻んでおこう」

「その名を絶対に忘れはしない」


 レプシーとだけ握手を交わす女性たち。

 ラッキースケベの件は許していないらしい。


「……いつもことですから、もういいです。さて、勇者に関して教えていただきましょう」


 改めて勇者の情報を求める。

 他にも、この国に関しての情報もほしいが、まずは勇者を優先した。

 警備隊隊長のジーナが話を始めた。


「勇者は十二人いる。名前など詳しいことは末端の兵士でしかない私たちにはわからないが、奴らが外道ということはわかる。奴らのしていることを鑑みると、貴様が私たちへ行った辱めなど問題にならない」


 比較対象がラッキースケベであるのでなんとも言えないが、ジーナの表情から彼女は勇者を嫌悪していることがわかった。


「なぜあんな奴らをこの国に呼んだのかまるでわからないが……グレゴリー・スノーデン国王陛下がお隠れになり、ネイモン殿下が王を名乗るようになってから、ひどい国がよりひどくなってしまった」

「……お隠れって、亡くなったのか?」

「それがわからないのだ」


 サムの疑問に、ジーナとタマラが首を横に振った。


「わからないって、どうこと?」

「いくら国が貧しくとも、国王がお亡くなりになれば国葬をするだろう。だが、葬儀は行われていない。いつもと変わらぬ、王宮だ……いや、違う。王宮から遠ざかっていた貴族や商人が頻繁に出入りするようになったな」


 すでに友也の部下が手に入れてくれた情報の通りだ。

 放っておいてもこの国は終わるだろう。

 だが、勇者たちが野放しになるのも良く思わない。


「あなた方はスカイ王国の人間なのだろう? 心配せずとも、この国は滅ぶ。数年はかかるだろうが、ネイモン殿下とやりたい放題の勇者たちがいる以上……もうこの国に未来はない」


 ジョナサンの考えと、ジーナたちの行き着いた結論は同じだった。


「……ねえ、サム」

「レット?」


 ジーナたちとの話を聞いていたレットが、サムに声をかけた。

 彼の瞳は赤く、泣いていたのだろう。

 だが、なぜ、と疑問に思う。


「サムは……魔法使いだよね?」

「あ、ああ、もちろん」

「俺たちのためにここまでしてくれて食事まで、そんなサムにこんなことお願いするのは……嫌なんだけど」


 下唇を噛み締めるレットに、サムは優しく促した。


「言ってごらん?」

「――あいつらを、勇者を倒して欲しいんだ」

「……なぜかな?」


 まさかレットの口から勇者を倒して欲しいと言われるとは思っていなかった。

 したくない想像をしてしまう。


「俺の親は、ううん、ここにいる子供たちの親や兄弟は……みんな勇者に殺されたんだ」






 〜〜あとがき〜〜

 偵察、で終わらないでしょう。


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