エピローグ「封印発見です」
アルフレッド・ポーンは、スカイ王国元ラインバッハ男爵領にあるサムの生家の前にいた。
傍には、結界のようなものに囲われて、宙に浮いたまま囚われているリーゼとクリーの姿もある。
「しかし、まさかサミュエル・シャイトの生まれ故郷に女神が封じられているとは思いませんでしたね。そういえば、君はここにきたことがあるのかな?」
「ないわ」
にこやかなアルフレッドに問われ、返事をするリーゼだがその態度は素っ気無い。
だが、無理もない。
サムと敵対するアルフレッドが、家に押し入り、家族を傷つけた挙句、自分を攫ったのだ。笑顔で話しかけてくるアルフレッドのほうがどうかしている。
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す……ギュンター様を傷つけて、許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない……」
クリーに至っては、目の前でギュンターを傷つけられたのがよほど堪えたのだろう。安否さえ不明であるため、ストレスは大きいはずだ。
彼女はずっとアルフレッドへの呪詛を吐き出し続けている。
「――お待ちしていました、教皇様」
屋敷の影から、現れたのは神聖ディザイア国枢機卿カリアン・ショーンだった。
遠方にいるはずのカリアンの登場に、アルフレッドは少し驚いた顔をしたが、すぐに笑顔を浮かべてカリアンを歓迎した。
「……おや。カリアン・ショーン。まさか君が駆けつけてくれるなんて思いもしなかったよ」
「竜の里へ向かった教皇様が、予定にはない行動をしたようですので、もしやと思い馳せ参じました。騎士や他枢機卿はまだ動けず、身軽な私が一番に」
「立場的に君が一番気軽に動いてはいけないだろうに。しようがない子だ。しかし、気持ちはわかるよ。聖女をふたり手に入れたからね、女神復活までもう少しさ」
ちらり、とカリアンがリーゼたちに視線を向ける。
「……おじいさま」
「まさかリーゼ殿のお腹の中にいるひ孫が聖女とは……何が起きるかわかりませんね」
「ふふふ。僕も驚いたよ。だが、サミュエル・シャイトは聖女の血統だ。可能性としてはゼロではないさ」
「そうですね。亡き妻の意志をひ孫がついでいるのだと思うと嬉しいです」
カリアンは微笑を浮かべてリーゼに近づく。
「……おじいさま」
「こんなことになってしまって残念です」
リーゼはカリアンとサムが、立場が違えど憎んでいるわけではないことを知っている。敵対関係にあるが、きっかけさえあればちゃんと家族になれると信じていた。
しかし、このままではそんな未来はない。
そのことが、ただ悲しくて涙が溢れてきた。
「カリアン。屋敷の下に結界があるようだが、屋敷を壊してしまっても構わないかい?」
「はい。屋敷の中はもぬけの殻です。どうぞ」
「じゃあ、遠慮なく」
アルフレッドは、聖力を高めて暴風のごとく放出すると、跡形もなく屋敷を吹き飛ばす。
風が唸り、砂埃が噴き上がる。
「素晴らしい。少し疑っていたが、女神を封じる結界はあった!」
顕になった屋敷の下には、大きな魔法陣が描かれていた。
リーゼにはわからないが、おそらく女神を封じている結界か何かだろう。
目的のものを見つけ、高笑いをするアルフレッドの背後に立っていたカリアンがリーゼを見た。
目が合うと、カリアンはまるでリーゼを安心させるかのように穏やかな顔を浮かべて片目を瞑った。
リーゼは咄嗟に口を手で覆う。でなければ、カリアンの名を呼んでいただろう。
もしかすると、カリアンは本当の意味で敵ではないかもしれない。
現状では簡単に信用することはできないし、警戒心は捨てることなどまず無理だが、不安に押しつぶされそうだったリーゼは、カリアンの見せてくれた笑顔が本物だと信じたかった。
〜〜あとがき〜〜
まさかサムの実家に女神様の封印がありました!
間話を挟んで新章です!
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よろしくお願い致します!
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