間話「メイドさんのお話です」




 ■ラインバッハ男爵家の場合。




 私はラインバッハ男爵家で働くメイドでした。

 サム坊っちゃま……いいえ、サミュエル様とお呼びしなければなりませんね。サミュエル様が幼い頃から、ダフネさんと一緒にお世話をしてきました。

 サミュエル様のお母上、メラニー様がメイドをしていた時の友人でもあります。


 サミュエル様はいずれ男爵家を継ぎ、領主になってくださるとみんなで期待していたのですが、あのクソガ――おっと、失礼しました。マニオン様に少々剣の才能があるからと、後継ではなくなってしまったのです。

 メイドたちみんなで抗議しようとしましたが、そのせいでサミュエル様のお立場が悪くなっても困りますので、必死で我慢しました。

 それを良いことに、ヨランダは側室でありながら正室のように振る舞い、メラニー様を追い詰めていきました。

 私たちがメラニー様をお守りしても、あれよこれよと次々嫌がらせをしてくるのです。

 ヨランダだって同じくメイドだったはずなのですが、後継の母親というのは無条件に偉いみたいですね。よくわかりませんが。


 その後、メラニー様はいなくなり、サミュエル様はクソガキに襲われて生死の境を彷徨う羽目になってしまったのです。

 その頃には、ヨランダに付き従うメイドたちもいたのも嘆かわしいですね。

 しかし、サミュエル様は魔法の才能がありました。魔法ですよ、魔法! 少々剣が使える程度のクソガキなんて魔力の魔の字もないんですから、どう考えても次期当主候補に返り咲くべきです!

 ですが、当主様はお認めになりませんでした。


 ヨランダがうるさいので気を遣ったのかもしれませんね。その頃には、愛人を外に作っていましたし。正直、ヨランダのヒステリックな性格を考えると、外で愛人を作るのもしょうがないな、と思っていました。

 むしろ、私たちメイドに手を出さなかっただけ、ありがたいです。


 ――しかし、不思議でもありました。当主様はサミュエル様にはマニオンが優れていると言うのですが、あまり可愛がっていなかったように思われます。むしろ、口や態度は酷かったですが、サミュエル様の方を気にかけていた気が……。いいえ、もう過ぎたことですね。


 その後、サミュエル様はラインバッハ男爵家を出奔なされました。

 そして、マニオンは跡取りから外され、ハリー様が跡取りとなります。といっても、結局マニオンとヨランダが愚かなせいで、男爵家はお取りつぶしになってしまうんですがね。


 職を失った私ですが、ダフネメイド長から王都で働かないかとのお誘いをいただきました。兄弟が五人もいてお金が必要な私に、今まで以上のお給料を下さるということで飛びつきました。しかも、週に二回もお休みがあるんですよ。憧れの王都で遊べます!

 しかも、亡くなったと思っていたメラニー様が生きておられ、なんと子爵夫人になっていたんです! クラリス様もお可愛い!


 そして、サミュエル様のご交友のあるウォーカー伯爵家の使用人を務める男性と、ご縁があって、その結婚しちゃいました!

 サミュエル様は、「とてもお世話になったから」と言ってくださり、結婚式の資金、新居まで用意してくださったのです!

 平民は結婚式なんて盛大にできるはずもなく、せいぜいレストランを数時間貸し切って身内でお祝いするくらいなのですが、ドレスに身を包んで、感情で盛大に結婚式ができたんです!

 新居なんて普通、もらえませんからね!

 私か夫が、勤め先を一緒にすることで夫婦として生活する予定だったのですが、サミュエル様に感謝です!

 家族への仕送りがあることを知ったサミュエル様はお給金を増やしてくださいましたし、育児休暇? とかいう、謎の制度をお作りなり、子供ができてから出産し、ある程度子供が育つまでの間も生活を保障してくださるようです!


 初めて王都に来た時は、変態が多くてやべーなーって思ったんですが、今の私はとっても幸せです!




 ■イグナーツ公爵家の場合。




 ギュンター様やべぇえええええええええええええええええええええええ!

 クリー様しゅげぇええええええええええええええええええええええええ!


 あ、旦那様、奥様、どんまいっす! きっと良いことありますって!






 〜〜あとがき〜〜

 なかなか書きたくても書けなかったメイドさんのお話です。


 コミック1巻、書籍1巻、2巻が好評発売中です!

よろしくお願い致します!


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