66「創造神として人としてです」①






 ――創造神などと呼ばれると聞こえがいいが、所詮は世界に求められた管理人だ。


 創造神が初めて見たのは、視界いっぱいに広がる闇だった。

 どこまでも果てのない空間に、闇しかなかったのだ。


 創造神は、自らが創造神であると認識し、何を求められているのか理解し、光を与えた。

 星々を作り、数多の世界を構築し、星に合わせた生命を生み出した。


 役目を終えると、世界を観察することにした。

 なんてことはない。ただの暇つぶしだ。


 求められて創造したものであっても、星々や生命は我が子のような存在だ。成長し、数を増やし、進化していく姿を見るのは嬉しかった。


 何万年、いや、何億年そんなことをしていただろうか。

 ふと、ひとつの星に『人』が生まれた。

 新たな生命に創造神は喜び見守ったが、次第に、創造神の表情は曇っていくこととなる。


『人』は争いを始めるようになった。

 争いそのものを否定するわけではない。

 しかし、『人』の争いは醜く、悍ましい。


 他の世界にも『人』が生まれ、やはり同じように争いを始めた。


 創造神は、生まれてきた生命の中で、唯一『人』を愛せなかった。


 そんな創造神ではあったが、『人』を見守ることはやめなかった。

『人』の進化は早く、興味深かったからだ。

 だが、守りながらも、顔を顰めたことは何度もあった。


 創造神は、ふと『人』の中でも優れたものに注目した。

 各世界から数人見繕い、死後、管理神として部下にしてみた。

 創造神の創造した世界は限られているが、以後、まるで世界が求めるように増えていくのだ。そんな世界の管理と、また管理神たちが新しく星を創造することで変化が訪れると考えたのだ。


 その後、何千年と星々を見守っていたが、『人』は変わらなかった。魔法を手に入れても、魔術を手に入れても、化学を手に入れても、争いは続く。

『人』と『人』が些細な違いで殺し合う。

 実に愚かだと思った。

 幾度となく、人を滅ぼそうと考えたが、管理神たちによって止められてしまう。


 創造神だからといって、公平であるべきではない。

 創造神だからこそ、思うがままにできる。


 だが、創造神はそれよしとせず、悩んだ。

 悩み、悩み抜いてひとつの結論を出した。


 ――それは、創造神自らが『人』となること。


 創造神の力を全て排除し、『人』に転生した。

 幾百の世界を転々とし、生まれ、死んだ。

 何度、『人』ととしての生を体験しても、何も感じなかった。


『人』は変わらず愚かで、些細なことで争い、奪い合う。

 一度、『人』として平和を説いたが、為政者に邪魔だと思われすぐに排除された。


 もう『人』には諦めた。

 そんな時だった。

 数えきれないほど転生を重ね、世界を渡ってきた創造神はギュンター・イグナーツになった。

 両親は愛情を注いでくれ、兄もよい人だ。親類にあたる貴族や王族も今まで生きてきた世界の『人』より善良だった。

 だが、期待していなかった。

 いなかったのだ。


 だが、ギュンターは出会ってしまった。


 鮮烈なウルリーケ・ウォーカーに。


 まるで太陽のような真っ赤な魂の力を持つ、強くまっすぐな少女に出会ったのだ。







 ――この出会いをきっかけに、創造神ではなく、ギュンター・イグナーツが本当の意味で生まれたのだった。







 〜〜あとがき〜〜

 もう少し続きます。

 要約すると、「何この子しゅごい、しゅき!」


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