67「創造神として人としてです」②
なんて美しい魂なのだろう、とギュンターは身震いした。
ウルの魂は気高く美しく、そして強かったのだ。
一瞬で心を奪われたのは言うまでもない。
ギュンターは、その後、なんとか彼女の気を引きたくて、ちょっかいを出した。
人に興味を抱き、気を引くという行為をしたことがないので、とにかく色々なことをした。
――結果として変態になってしまったのは些細な問題だった。
しかし、ウルはいなくなり、色鮮やかな日々がまた灰色の世界となった。
彼女はなにをしているのだろうか。
元気にしているといいな。
そんなことを願い、少しだけもどかしかった。
創造神としての力がれば、彼女を始終見ていられるのにと思ってしまう。
そして、ギュンターは新たな出会いをした。
ウルの弟子であり、愛し合った唯一の少年。
――サミュエル・シャイトだった。
サムの魂は、真夜中の海に映る満月のような穏やかなものだった。
なにかのきっかけで砕けてしまいそうな硝子細工のような繊細さを持ちながら、きっとウルのおかげなのだろう。繊細さに強さをしっかり持った輝かしい魂だった。
ウルの死には衝撃を受けたが、魂は輪廻することを知っているので、またいつかどうかで会えると信じていた。
ギュンターにとって驚いたのは、ウルと同等の美しい魂を持った少年と出会えたことだ。
彼との日々は幸せだった。
愛情は一方通行であったが、彼との日常は色鮮やかで心地いい。
彼を通じて多くの人々の魂が輝いていくのを見て興奮を覚えた。
創造神であることはもう過去のことであり、人としてギュンター・イグナーツは、ウルをサムを、家族を友人を愛した。
愛することの幸福感をようやくわかったのだ。
そして、クリーと出会った。
妻として現れ、変態好意をする幼い少女に引いたのは言うまでもない。
魂の輝きは凡人であり、これと言って興味を引く存在ではない――はずだった。
クリーはいろいろ凄かった。
予想できないことばかりをしては、ギュンターの感情を大きく揺らしていく。
少女相手に怒鳴ったことなど初めてだったし、いろいろな初めてを奪われて枕で涙で濡らしたのも初めてだった。
――しかし、とても楽しかった。
そして、気づけば愛していた。
悔しいから絶対に口にしなかったが、ウルやサムに抱く愛とは違う愛情を抱いていたのだ。
そして、よく理解した。
――彼女に抱く愛は、人として、男として、夫としての愛なのだと。
長く長く行く当てのない旅路を続けていたギュンターは、ようやく『愛』を見つけたのだ。
ただし、ギュンターも良い意味でも悪い意味でも人間となった。
素直になれなかった。意固地だった。
子供ができたときだって、もっと喜びたかった。声を大にして「ありがとう」と言いたかった。
まるで恋する少女に素直になれない少年のようだ。
ゆえに、
――愛を知り、恋をし、愛しい人たちをようやく見つけたギュンター・イグナーツは、とても怒っていた。
〜〜あとがき〜〜
ざっくりまとめると「ウルリーケしゅき! サムしゅき! クリーたんだいしゅきっ!」
次回はお話が進み、しばらくして章が代わり、間話を入れて、また本編へという流れの予定です。
まだまだお話は続きますので、お付き合いよろしくお願い致します。
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