65「ギュンターの決断です」④
地上に戻ったギュンターは、あくまでも自分が人間であり神としての力がないことを確認する。
「――少しだけズルをさせてもらおう。クリーを救うためならなんでもするさ」
ギュンターは目を瞑り、サムのいる竜の里を見た。
多くの竜が亡くなり、里は破壊されている。
サムは血相を変えてカルに詰め寄っているが、カルも困惑した顔を隠せていないのがわかった。おそらく転移が阻まれているのだろう。
よくここまで対策したものだと感心さえしてしまう。
「サム、こんな時まで君を頼ってしまう僕を許してほしい――祝福を」
ギュンターの呟きが世界に響くと、竜の里に光の雨が降り注いだ。
光の雨は、傷ついた竜を癒し、息を引き取っていた竜に再び呼吸を与えた。誰もが驚きを禁じ得ない中、サムたちも何が起きているのだ、と困惑顔だ。
そんなサムたちがまるで近くにいるように手を伸ばしたギュンターの手が虚空を掴み、手繰り寄せるように引いた。
次の瞬間――ギュンターが吐血し、目や鼻から血を流す。同時に、サムたちが部屋にいた。
「は? え? なんで? おい、ギュンター!? なんでお前血まみれ」
「サム!」
「お、おう」
血を流しているだけでも驚きなのに、普段と雰囲気の違うギュンターにサムは耳を傾ける。
「君たちの疑問に対する答えは後にしよう。サム、君にはなによりも告げなければならないことがある」
「ああ」
「――リーゼが拐われた。クリーもだ。神聖ディザイア国の教皇アルフレッド・ポーンが、聖女として拐ったんだ」
「リーゼとクリーが聖女?」
「クリーは聖女だが、リーゼは違う」
「え? じゃあ」
「リーゼのお腹にいる君との子供が、聖女だ」
「――っ」
ギュンターから告げられた言葉に、サムだけならず他の面々も驚愕を浮かべる。
「……俺は何をすればいい?」
「冷静でいてくれて助かるよ。さすが、サムだ」
「怒りが爆発しそうだ」
「僕も、内心はらわたが煮え繰り返っているさ。だが、すべきことをしよう」
「ああ」
「僕と一緒に、アルフレッド・ポーンを殺し、愛しい人たちを救出しよう」
〜〜あとがき〜〜
補足・ギュンターについて。
神は世界への干渉は最低限しかできません。創造神でも創造神が作ったルールなのでできないのです。ただ、ちょっと裏技で人間のまま神の力を使えます。が、限界があり、今回のように負担が大きいのです。
力でクリーとリーゼを取り戻さなかったのはアルフレッドがいる以上、問題解決しないのでサムを呼びました。
いろいろ書きましたが、まとめると「クリーたんちゅき」でいいと思います。
次回はギュンターにいままでを。
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