32「コーデリア様の心配です」③
「……おっと、すまない、レイチェル。デライトよ。そなたたちにとってめでたい日でありながら、暗い話をしてしまった」
お世辞にも懐妊に喜んでいるレイチェルとデライトの前でする話ではないと、いまさらながらに気づいたクライドが謝罪し、コーデリアも頭を下げた。
「いいえ、お父様。エミルはわたくしの弟です。恋破れる姿を見守るのも姉の役目ですわ!」
「……レイチェルよ、そなたは立派になったな」
「傷心のエミルにざまぁしてさしあげますわ!」
「……レイチェルよ、もっとそなたは成長しなさい」
姉と弟の関係ゆえか、成長し、変わったと思われたレイチェルだったが、エミルへの対応は微妙だった。
これにはクライドも頭痛を覚えた顔をしている。
「とりあえず、エミルの件は頼んだぞ、サミュエル」
「へ?」
コーデリアの言葉にサムは目を点にした。
「お前とエミルは、義兄弟。親には話せぬことも、兄になら話しやすかろう」
「ちょ、まってください! 兄ならセドリック様が!」
「……セドリックは子作りに忙しいから役に立たぬ!」
「セドリック様ぁ!」
「私はセドリックの母ではないが、気持ちはわかる。念願叶って想い人と結ばれたのだ……朝昼晩と励むのは無理もない」
「そんなに励んでいるんだぁ!?」
その内、セドリックとルイーズの懐妊も聞くことになるだろう。
「あらあら、お兄様ったら。旦那様、わたくしたちもより励まなければいけませんね」
「いや、レイチェルは身重だろうが。安静にしていてくれ、頼むから」
「そうですよ。レイチェル様、安定するまでは我慢ですよ」
シナトラ一家はもちろん、
「サム、エミル様を頼むぞ」
ジョナサンも、
「サムならエミルを正しく導くだろうさ!」
ギュンターも、
「いつものことですね。頑張ってください」
友也も、
「さすが兄貴! 面倒見までいいぜ!」
ボーウッドも、エミルの件を丸投げされたサムに笑顔を向けている。
(みんなの信頼が重い……いや、これはみんな面倒だから丸投げされているだけだよね!?)
とはいえ、サムにとってエミルはステラの弟であり、義理の弟だ。
ひとり悩んでいるエミルを放っておくのも気が引けてしまう。
「わかりました。わかりましたよ。エミルと会って話をします! それでいいんでしょう!」
というわけで、後日、サムはエミルを訪ねて王宮に行くこととなった。
■
「あのさ、アリシア」
「どうしましたか、サム様?」
「メルシーって恋愛面ってどうなのかな?」
「メルシーちゃんの恋愛面ですか……今は、毎日が楽しいって感じですから、異性にどうという気持ちはないと思われます。それに、普段から接している方々が、メルシーちゃんを娘として扱ってくださっていますので、そういう面で発展することはないかと思われますわ」
「……実は、エミル殿下のことなんだけど」
「はい。わたくしもフラン様、ステラ様から聞いています。それとなくメルシーちゃんに訪ねてみたのですが……」
「ですが?」
「『誰それ?』と、言われてしまいましたので、残念ですが」
「あー。はい。でもそれでいいんだよ。殿下にはメルシーを諦めてもらわないといけないんだから」
「あの、もし、メルシーちゃんがエミル殿下と相思相愛でしたらどうしていましたか?」
「そりゃ、全力で応援しましたとも!」
「さすがサム様ですわ!」
――この後、めっちゃいちゃいちゃしたそうです。
〜〜あとがき〜〜
エミル殿下とメルシーちゃんには決着をつけるべきかどうか悩んでいます。
サムはあくまでも「パパ枠」なので、関係が発展することはないかなと考えております。
次回はちょっと、また別のお話です。
コミック1巻、好評発売中です!
コミックの続きは、comicWalker様にてお読みいただけますのでぜひ!
書籍1巻、2巻もよろしくお願い致します!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます