31「コーデリア様の心配です」②
「しっかし、メルシーの恋愛模様か。まあ、メルシーを嫁にしたければ、俺と玉兎は最低でも倒してもらわないといけないんだけど」
「それは無理だろう! 魔王と竜王候補にどうやって勝てるんだよ!」
親バカなサムが腕を組んでそんなことを言うと、たまらずデライトがツッコミを入れた。
サムだけでも勝てる存在はそうそういないのに、そこに玉兎まで加わったらメルシーは一生結婚できないだろう。
デライトとしてもメルシーを可愛がっているので、サムの気持ちがわからなくもないが、メルシーのような子は、自分でちゃんと相手を見つけてくるだろうと思っている。
「待ってください、サム。別にコーデリア殿はメルシーをエミル殿の嫁にと言っているわけではなく、むしろ反対しているのです。かわいそうではありますが、エミル殿にメルシーくんを諦めてもらうことを相談したいのではないでしょうか?」
「さすが魔王殿、それが言ったかったのです」
「……うーん。そこはお父さんとお母さんが息子さんを説き伏せていただくのではダメなんでしょうか?」
サムのもっともな言葉に、クライドとコーデリアが唸った。
「私たちとて何もしなかったわけではない。しかし、エミルに……ステラはサミュエルと、レイチェルはデライトと、セドリックはルイーズと結ばれているのに、なぜ自分だけいけないのだと言われてしまうと……なんと言っていいものか」
「そもそもエミル殿はメルシーくんに相手にされていないんですけどね」
「魔王殿のお言葉はもっともだが、エミルはまだ諦めていないのだ。時間があるなら、口説いて見せると意気込んでおり……悩ましい」
コーデリアは額に手を当てて嘆息する。
「俺たち獣人は、好き嫌いがはっきりするから簡単なんですがねぇ」
ボーウッドの呟きに、視線が集まった。
彼は咳払いをすると、説明してくれる。
「俺たちは、好き、嫌いはあるんですが、まず家族です。そりゃ家族の中にも好き嫌いはあるんでしょうけど、度が超えていると血族でも家族として受け入れないので、まずは家族という括りが大事でさぁ。恋人や妻も家族に入りますね。次に、敵対している相手です。ですが、敵対していても好ましい相手はいます。尊敬すべき敵もですね。そうなると俺たちの嫌いって言うのはかなり強い感情っていうか、興味がない場合もあるくらいでして」
「メルシーもそうかな?」
「さあ? こればかりは本人か、竜に聞いてみないことには。しかし、一番の疑問なんですが……」
「どうしたの、ボーウッド?」
「いえね、兄貴。そもそもメルシーは恋をするんでしょうか? いえ、そりゃいつかはするでしょう。しかし、メルシーは成長しやしたが、まだ精神面では幼いでさぁ。となると、エミル殿下が頑張っても、発展するかどうか」
「あー」
ボーウッドの言葉にサムたちは納得した。
メルシーは実年齢は知らないが、精神目では幼い。子竜からステップアップしているが、それでもまだ子供は子供だ。
もちろん、未成年という子供という括りでサムやクリーは結婚しているが、竜の場合はどうなのだろうと考える。
そもそも竜と人間では、生きる時間が違いすぎる。
家族として、友としてならまだしも、伴侶となると竜にとっては間違いなく早すぎる別れが来るはずだ。
仮に、メルシーがエミルと一緒になったとして、まだ幼い彼女にそれが耐えられるかどうかも不安である。
「こんなことを言うのも酷な話ではあるがね――」
話を静かに聞いていたギュンターが静かに口を開いた。
「メルシーくんの近くには、サムという世界に降臨した勇者のような美少年が存在している」
「おい、褒めんなよ。拳しか出ないぞ!」
「ふっ、まさかサムからご褒美をもらえる日が来るとは……ありがとうございます!」
「……いいから話を進めて」
「外見年齢の近いサムは、さておき、他には僕のような絶世の美男子、ボーウッドくんのようなもふもふ系イケメン、遠藤友也くんのような変態系イケメン、デライト殿のようなちょいワル系イケオジ、ジョナサンおじさまのような生真面目系イケオジ、そしてクライド陛下のようなビンビン系イケオジがいるのだよ。こんなことを言ってはなんだが、まだお子様なエミルくんの存在はメルシーくんの中では薄いだろうさ!」
いつもだったらギュンターの言葉など聞き流すのだが、さすがに今回の彼の意見には「うん、確かに」と納得してしまった。
メルシーの周りには、男女問わず濃い面々が揃っている。
スカイ王家の生まれでありながら、「普通」なエミルが、果たしてメルシーにどれだけ覚えてられているのか、大変疑問だった。
〜〜あとがき〜〜
エミルくんどんまい!
コミック1巻発売中です!
書籍1巻、2巻と揃ってよろしくお願い致します!
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