24「丸投げするそうです」③
「ば、馬鹿な……これが、王だと? これが魔王だと?」
ヴァイゼルが、ロボを信じられないような目で見ていた。
「きっとあなたの中の魔王像はダグラス・エイドなのでしょうが、彼が魔王の中では一番変わっているだけでして、基本的に魔王なんてみんなロボみたいなものです」
ある意味一番の代わり種である友也の言葉には、妙な説得感があった。
ロボが鬱陶しそうに友也に続く。
「お前ももう国へ帰れ。そして、伝えておけ。俺はお前たちに興味がない。新たな王が立とうと、どうでもいいのだと。俺の名を使って好き勝手やっていた奴らは粛清した。だから、お前たちも好きにすればいい、とな」
「……本当にそれでいいのか?」
「しつこい。もう一度、同じことを尋ねたら、貴様の首も刎ねる」
「……承知した」
ロボが脅しでもなんでもなく、言葉通りに動くことを理解したヴァイゼルは、その場に膝をつく。
「魔王ロボよ。私はあなたを誤解していた。あなたが獣の国に興味がないことは十分に知った。ならば、私たちは私たちでよい国を作ろう」
「勝手にしろ」
「……ある意味、あなたは偉大だ。もっと早く、その偉大さに気づけていればと悔やまれる」
「知るか。さっさと帰れ」
「では、そうさせていただく。魔王ロボよ、どうか新天地でお幸せに」
ヴァイゼルはそう言って深く頭を下げると、率いていた獣人たちを連れて背を向けた。
「やったー! 面倒ごとがちゃんと終わったー! 獣人を押し付けられるかと思ったけど、そんなことなかったー! ばんざーい!」
「……サム。どうりで今日は対応がいつもとくらべて冷たいと思っていましたが、そういうことでしたか」
「あのね、爵位とか領地とかでもういっぱいいっぱいなの! たくさんの人に助けてもらっていても、限界なの!」
「僕もそういうのが面倒なので、特定の国を持たずに魔王やっているのでわかりますけど」
「そろそろシャイト伯爵としても活動しなければならないし、貴族同士の付き合いなんてわからないんだよ! どうせ変態ばっかりだろうけどさ! そこに獣人たちを引き取る余裕なんてないの!」
領民や、サムと親しくなって移住してきたのなら面倒をみよう。
だが、強い弱いだけで付いてこられても困る。
生まれてくる子に変な影響を与えられるのも嫌だ。
そもそもロボが生きているのだから、サムが彼らの面倒を見る必要はないと考えていた。なによりも、虎の威を借る狐のような性根が気に入らない。
ロボによって粛清され、ヴァイゼルたちが大人しく帰ってくれたことに感謝さえしていた。
「よし! いい加減、寒いし帰ろう! ――って、ギュンターはさっきから静かだけど何をしているのかな?」
途中から、会話に参加していなかったギュンターを不思議に思って視線を向けてみると、彼は椅子に優雅に座って編み物をしていた。
「おや、終わったかな? 実を言うとね、明日、手芸教室で手芸一級試験があってね。獣人たちのいざこざに飽きてしまったから練習していたのだよ。さあ、サム。即席で編んだもので申し訳ないが、セーターをもらってくれたまえ!」
「短時間にすごいね! ……でも、あの、白地にちらほら金色の糸見たいのがあるんだけど」
「ふふふ。よく気づいてくれたね。僕の髪も一緒に編み込んでおいたよ」
「うわぁ」
ウインクするギュンターにサムは引いた。
セーターだけなら素直に受け取ったかもしれないが、髪入りは嫌だ。
「相変わらず気持ちの悪やつだな」
「ふふん! ゾーイくん! そんなことを言うと、君がこっそり変装して編み物教室に通っていることをバラしてしまうよ!」
「うわぁあああああああああああああああああああ! もう言っているではないか!」
慌て深めくゾーイ。
まさかゾーイが編み物教室に通っているとは知らなかった。
ゾーイは顔を真っ赤にすると、
「しゅ、趣味だ! いいか、別にサムの子供のために編み物でもしてやりたいなんて思ってないからな!」
わかりやすい言葉を発した。
「ツンデレどうもありがとうございます!」
寒空の下で獣人たちのゴタゴタに巻き込まれてしまったが、ほっこりした気持ちで王都に戻ることができた。
帰り間際、領主に報告をして帰ろうとすると、「是非泊まって行ってください」と勧められたが、彼の妻や娘が獲物を狙う目をしていたので丁重にお断りして帰宅したのだった。
■
「ボーウッド、残念だったな」
「ロボ?」
「あの翼人が出てこなければ、お前を獣の王にしてやろうかと思ったんだが」
「ははははは! 俺に王は合わないさ! 兄貴の弟分として、お仕えするだけだ」
「……お前のそういうところは気に入っている。もう少し強くなったら、婿にしてやろう」
「――ほえ?」
なんてやりとりがあったようだが、それはまた別のお話。
〜〜あとがき〜〜
帰宅です。ボーウッドくんにフラグが立った、かな?
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