25「帰宅して温まります」
「そうでしたか。もふもふパラダイスにはならなかったのですね、残念です」
帰宅したサムたちを出迎えてくれたのは、アリシアとメルシーだった。
「もふもふパラダイスって……そんないいものじゃありませんって」
(首刎ねパラダイスだったことは黙っていよう。うん。家に帰ってくる前に、一度、ロボにお風呂に入ってもらってよかった)
獣人たちの首を刎ねたロボは、手こそ洗ってもらったが、完全に綺麗になったわけでもなく、血の匂いもしていた。
おそらくロボは帰宅後すぐにアリシアの部屋に直行すると思われていたので、宿屋で風呂を借りて無理やり入ってもらった。
当初、風呂など入らん、とゴネていたが、アリシアに血の匂いを移すことをよしとしない旨を伝えると、渋々だが、入ってくれた。
そんなこんなで帰宅して、とりあえずサムたちも風呂にはいることとなった。
ゾーイは、お風呂セットを持ってるんるんでひとり、浴室に向かった。彼女が利用するのは来客用の浴室だ。シャワーと、バスタブが置かれた簡易なものだが、ゾーイはのんびりお風呂に入ることを好んでいるので、使用頻度が高い。女性たちでお風呂に入ることもあるそうなのだが、ときには浴室で読書をしたいときもあるようなので自由にしている。
ロボは早々にメルシーを肩車しながらアリシアの部屋に行ってしまい、男同士でのんびりすることにした。
「ふー、染み渡りますねぇ」
「あー、たまんない」
「どこもかしこも雪だらけですからねぇ。西側も寒いっすけど、東側の寒さとまた違いますね」
タオルを頭に置く友也、額に巻くサム、タオルをちゃんと浴槽の外へ置いておくボーウッド、ひとりだけシャンプーハット装備にギュンターは、湯船に浸かって、冷えた身体を温めていた。
「火照った身体も美しいね、サム」
「黙れ、変態。あと、なんで頭洗ったあともシャンプーハットを装備しているんだよ、お前は」
「イグナーツ公爵家では、代々シャンプーハットはお風呂の中では常に装備なのだよ。これも僕のための特注でね」
「いらねー。普通の使えよ」
「シャンプーハットは大事だよ、サム。ちゃんとフィットしたものを使わないと、シャンプー中に目が染みるではないか!」
「いや、目を瞑りなさいよ」
「代々イグナーツ家では、みんなシャンプーが苦手なのだよ」
「……相変わらず狂った一族ですねぇ」
「お黙り! ラッキースケベしかしない変態魔王に言われたくないのだがね! 今だって、いつ僕の聖槍をまたにぎにぎされるのか気が気ではないよ!」
「誰が好き好んで、変態の槍を握りたがると思いますか!? こっちだってやりたくてやっているわけじゃないんですよ!」
そんな軽口を叩く友也とギュンターの声を聴きながら、サムはウトウトしてきた。
ウルと各地を転々としていた頃は、寒くなると「暖かい場所へ移動するぞ!」とウルに引き摺られていたことが懐かしい。
それでも結局、途中で雪に捕まってしまい、寒い寒いと震えたことを思い出す。
ひどい時なんて、「戦闘すれば暑くなる!」と脳筋な理由で、モンスターを駆逐しながら移動したこともあった。
ウルとの旅を終えてからまだ一年が経っていないのが嘘みたいだ。
スカイ王国王都に来てからの日々は目まぐるしい。新しい出会い、変態、リーゼたちとの恋、変態、王家との関わり、変態、変態、変態、変態、ウルの復活と別れ、そして変態、と変態ばかりだ。
おかげで寂しいなんて思っている暇もない。
(リーゼたちとも出会えたし、家族も増えた。スカイ王国に来てよかった)
睡魔に襲われて瞼を閉じるサム。
もちろん、しばらくしていたずらをしようと企み手を伸ばしてきたギュンターの淫らな気配に気づいて跳ね起きるのだった。
〜〜あとがき〜〜
休憩回です。
次回、デライトさんとレイチェルさんがくーるーよー!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます