23「丸投げするそうです」②





 地面に真っ赤な血溜まりを作ったロボが、不快そうな顔をして拳から血を払う。


「翼人。お前にも、お前の上に興味がない、だが、俺は早く帰りたいのでサービスをしてやろう」

「なにを」


 ヴァイゼルが動揺を隠せない声を出したと同時に、ロボの姿が消えた。

 次の瞬間、獣人たちの首が宙を舞い、血飛沫が吹き出す。


「あーあー」


 呆れたような声を出す友也に、サムは慌てて尋ねる。


「お、おいおい、いいのか、これ?」

「いいんですよ。もともとロボは群れません。僕だって、どういう理由でアリシア殿にロボが懐いているのかわかりませんし、奇跡だと思っています。というかですね、ロボは元からこんな感じです。今まで興味も関心もなかったので獣の国も放置していたんでしょうが、まさかあの獣人たちが自分の名を使って好き勝手していたなんて、馬鹿ですよねぇ」

「友也は知らなかったの?」

「獣の国にちょっかい出してロボと喧嘩するくらいなら放置でいいんです。まあ、探りは少しだけ入れていましたけど、個人的には普通の国だな、と」

「でもさ、実際、不満に思っている奴らもいるわけだろ」

「そりゃそうでしょう。獣人は強い者に従います。強さとは、単純な戦力であったり、心の強さであったりします。しかし、逆に言うと強ければ叛逆されるんです。なによりも、魔王ロボならいざしらず、自称配下がロボの名を使って好き勝手やっているのならば、誇り高い獣人たちが不満を覚えないわけがないですよ」


 友也の説明を聞いている間も、ロボを頼ってきた獣人たちの首が飛んでいく。

 中には「ロボ様のためを思って」と言う者もいるが、ロボの耳には届いていないようだ。

 女子供がいれば、サムはロボを止めただろうが、獣人たちは男ばかりなので放置することにした。


 冷たいかもしれないが、サムは獣の国の人間ではないし、行ったこともない。興味もない。

 サムにだって優先順位があるので、わざわざロボを止めて敵対する気はない。


「人間だろうと魔族だろうと、手に入れた権力に溺れることはよくある話だ。魔王や準魔王共が変わり者のため、あまりそう感じないだろうが、魔族も人間と変わらず誰かを蹴落とし、上に昇り、不正を行い、民を虐げる者がいる」


 長く生きていたゾーイが、実感のこもった声を出す。

 きっと彼女は、そんな者たちを見てきたのだろう。


「おっ、終わったようですね」


 友也の言葉に、サムがロボの方を向くと、涙を流して命乞いをしている獣人の首を刎ねた。


「手が汚れてしまった、不愉快だ。おい、ボーウッドなにか拭くものをよこせ」

「へい!」


 懐から布を取り出すと、ボーウッドがロボに差し出す。

 サムも気を利かせて、水魔法で作った水の塊をロボの前に浮かべてやると、彼女はその水で腕を洗い、布で手を拭いた。


「お、お前は、こいつらの仲間ではないのか?」


 一部始終を唖然として見ていたヴァイゼルが、震える声でロボに尋ねた。

 ロボは鼻を鳴らすと、吐き捨てるように言った。


「俺に仲間などいない。国は勝手に造り、俺の名前を使っていただけだ。害がなかったので放置していたが、勝手に名を使って好き勝手されていたとは不愉快だから殺した。それだけだ」

「……魔王ロボよ、お前は王にふさわしくない」

「だから何度も言っている。俺は王ではない。ウォーカーさんちのペットだ!」

「いや、それでいいんかーい!」


 仮にも魔王ともあろう方が、堂々とペットだと公言してしまったので、サムは反射的に突っ込んでしまった。







 〜〜あとがき〜〜

 補足:狼族の獣人の一部は、ロボさんのお名前でいろいろやっていました。民を虐げることはしませんでしたが、ロボの配下というだけで王気取りの彼らに他種族が反感を持たないはずがなく……。でも結局、ロボさんてきにも「うぜえし、不快だし」という理由で退場となりました。数百年甘い汁を吸っていたので、きっと満足でしょう。

 酷いかと思われますが、興味のない相手なんてこんな感じです。


 コミック最新話は本日comicWalker様にて公開です!

 よろしくお願い致します!

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