8「友也の相談です」①




 ※注意:今回のお話は【お正月記念「友也とマクナマラの×××です」①②③】をお読み頂いてから読んでいただけますと幸いです。






「サム、少しいいですか? 相談したいことがあるのですが」


 サムの元を魔王遠藤友也が訪れたのは、ハラハラと雪が降る寒い日の午後だった。


「改まってどうしたの? とりあえず、座って。お茶でも」

「お茶はいいので、話を聞いてください。切羽詰まっているんです」

「――何かあったのかな?」


 友也が緊張していることに気づいたサムは、真面目な顔をして彼と向かい合った。

 ラッキースケベの申し子と呼ばれている友也だが、魔王としての力はとてつもないものだ。サムはまだ彼の全貌を見たことがないが、同郷であることを踏まえて戦う未来が来ないことを祈っている。

 そんな友也が緊張して相談したいことがあるとなると、何かよくないことが起きたのだと推測できる。


(神聖ディザイア国が動き出したのか? それとも他の敵が、いや女神関連か?)


 サムも自然と緊張してきた。

 友也は話を始めたいようだが、言葉がなかなか出てこないようだ。しばらくして、サムの顔を真っ直ぐに見つめると、意を決意したように口を開く。


「実は、マクナマラ・ショーンのことです」

「うん?」


 予想外の名前が出てきたので、少し困惑してしまった。

 マクナマラ・ショーンは、サムの母方の伯母である。神聖ディザイア国の聖騎士のひとりであり、枢機卿であるカリアン・ショーンの娘だ。

 メラニーと生き別れていたようだが、生存していることを知り、居ても立っても居られずスカイ王国に来た。

 ついでに、かつてラッキースケベった友也をぶっ飛ばそうともしていた。

 一ヶ月ほど前、腹を括った友也がマクナマラに責任を取ると申し出たが、フラれたことをよく覚えている。

 数日ほど凹んでいた友也を男性陣で慰めたりして大変だった。

 そのマクナマラがどうしたというのだろうか、とサムが首を傾げた。


「先日、その、飲みに行ったんです。和解を兼ねてと言いますか、お詫びといいますか……とにかく薫子さんのお店で飲んだんです」

「えっと、うん。いいことじゃない?」

「ワインでいい感じに酔っ払ったところ、マクナマラさんがサムから奪ったウイスキーがあるから飲もうと誘われまして」

「……そういえば、奪われたね。ちくしょう!」

「マクナマラさんの部屋で飲んだんです」

「あ、もしかして」

「さすがレプシーの後継者サミュエル・シャイトですね。もうお分かりでしょう」

「レプシー関係ないし、この流れだと誰でもわかるでしょう!」

「ご推察の通り、翌朝ベッドでお互い全裸でした」


 サムは想像していた以上にしょうもない話だったことに身体中から力が抜けた。


「一千年以上守り続けていた僕の童貞が! 僕はもう綺麗な妖精さんじゃないんです! ただの変態魔王なんです!」


 童貞を守り続けていたのか、とか妖精さんに謝れとか、変態魔王の自覚あったんかーい、と突っ込みたくなったが、ぐっと堪えた。


「えっと、おめでとう? お赤飯炊く?」

「……お願いします」






 ――あとがき――

 シリアス先輩が続いたので変態後輩の出番です?


 シリアス先輩が大活躍するコミック1巻が好評発売中です!

 何卒よろしくお願い致します!

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