39「農業系からギャル系になりました」
「いやー、ごめんねー。まっさか急にお客さん来るとか予想しなかったから、だっせー格好を見せちゃった」
公民館のような立ち位置の建物に案内されたサムたちは、二十人のダークエルフに迎えられた。
「あのさ、サムくん。私の目がおかくしなっちゃったかも」
「……安心していいよ。俺もだよ」
何度目を擦っても、視界に映る光景はかわらない。
――なぜか、セーラー服とルーズソック、ローファーを装備するダークエルフがにこやかにしている。
(……なんで?)
サムは首を傾げてしまう。
日本の女子高生のような格好をしている彼女たちは、褐色の肌、シルバーブロンド、ブロンドヘアーと相まって、ギャル系の女の子見える。
ダークエルフたちは十代半ばから二十代後半ほどの外見をしている。
前者はセーラー服を身につけているのはさておき、後者はちょっといけない感じが気がするのはサムの気のせいではないだろう。
「……まさか農業女子がいきなりギャルになるとは思わなかったです。はい」
「あはははは、ごめんねー。うちらって、ほら自給自足してっから。畑は大事なんだけどー、せっかく異世界人から伝わったダークエルフの伝統衣装を汚すのもあれだし?」
「はーい、また異世界人! どいつもこいつもやりたい放題だな!」
なんとなく予想はできていたが、やはり異世界人の影響を受けているようだ。
ダークエルフにセーラー服を着せたいという気持ちはわからなくもないが、実際にやる奴がいるとは恐れ入る。
「ちーす。お茶でーす」
「あ、どうも」
「ありがとうございます」
「いえいえー!」
元気よくお茶を運んでくれたダークエルフにお礼を言うと、にっこりと笑顔が返ってきた。
全員にお茶が行き渡ったところで、一番年上に見えるダークエルフが口を開いた。
「ってなわけで、ようこそー。ダークエルフの里? に? つーか、ダフネっちとか、めっちゃ久しぶりじゃん。美人になったねー」
「……皆様、ご無沙汰しています。お元気そうでなによりです」
「元気も元気よー。毎日規則正しく生きて、畑と狩猟、釣りと楽しい楽しい!」
カラカラと笑うダークエルフたちからは、決して長年小さな島に閉じ込められている悲壮感はなかった。
「んで、異世界人っぽい人たちもこんちはー。その内、来るとは思っていたけど、意外と早かったねー」
「――わかるんですか?」
「そりゃわかるっしょ」
サム、薫子が驚く。
ダフネは、さすがにサムを転生者とは思っていないようなので、薫子と友也のことだと思っているようだ。
しかし、聞き逃せないこともあった。
「その内来ると思っていたって……俺たちが来ることがわかっていたんですか?」
「もち! そこの友也っちがまた来ることも、サムっちと薫子っちダフネっちが来ることも、ざっくりとだけどわかってたし」
「……なぜ」
サムの言葉には複数の驚きが混ざっていた。
まだ名乗っていないのに、名前を知っていた。
この面子で訪れることもわかっていたようだ。
「……あなたたちは、いったいなんなんですか?」
「私たちはあれだって、あれ、あれあれ」
「あれ、じゃわからないんですけど!?」
「ごめんごめん、名乗りなんて何百年ぶりだから、言葉が出てこねーって」
んじゃ改めて、とダークエルフは笑顔を深めた。
「私たちダークエルフは、世界の巫女、みたいな?」
初めて聞く単語に、サム、薫子、ダフネは驚きを隠せなかった。
そして、一度訪れているはずの友也まで「えぇ……初耳なんですけどぉ」と驚いていた。
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