13「祖父が来ました」①
「これはこれは、サミュエルくん。数日ぶりですね。またお会いできて光栄です」
ライブ中にステージを奪おうとする魔法少女団との戦い。
歌、ダンスのバトルの果てに、助っ人ギュン子の登場で大いに盛り上がった。
途中「お母様! 無理がありすぎます!」という叫びも聞こえ、大笑いが起き、サムとしては本当に文化祭のノリで楽しめた。
一仕事終えて汗をタオルで拭いていると、王宮で陛下が待っていると連絡があり、サムたちが向かうと、
「なんでいるのー?」
神聖ディザイア国枢機卿カリアン・ショーンが王宮の一室でお茶を飲んでいた。
「お、お父様! なぜこちらに!」
驚いたのはサムだけではない。
娘のマクナマラ・ショーンも、まさか父親がスカイ王国まで足を運んでいたとは思わずびっくりしている。
魔王遠藤友子も同様に、驚きを隠せないようだ。
(……俺やリーゼたちだけじゃなくて、お義父様たちや、準魔王、魔王、竜をそろって呼んだわけか。それに……お母さんとクラリス、ティーリング子爵もね)
「あなたが勝手に国を開けたので、なにかやらかす前に迎えに来たのです。そのついでに、サミュエルくんの誕生日もお祝いしてあげたかったのです。これは、些細なものですが、どうぞ」
「あ、どうも」
椅子から立ち上がったカリアンが懐から小瓶を差し出した。
「えっと、これは?」
「精力剤です。かなりクるそうですよ?」
「一週間連続でも余裕なサムに精力剤だって!? さすが神性ディザイア国!」
くわっ、と目を見開き叫んだのはギュン子だ。
サムはあとでクリーに念入りにお仕置きするよう頼もうと誓った。
「さて、サミュエルくんに喜んでもらえたところで」
「いや、喜んでねーし」
カリアンは、丁寧に腰を折り一同に挨拶をした。
「神聖ディザイア国で枢機卿の立場にあります、カリアン・ショーンです。マクナマラがお世話になったようで感謝します。いろいろお聞きしているでしょうが、今日はプライベートで来ましたので、無用な争いは避けましょう。そして」
柔和な笑みを浮かべていたカリアンは、さらに笑みを深め、涙を流しているメラニーの前に立った。
「とても大きくなりましたね。お母さんにそっくりだ。ずっと会いたかったですよ、メラニー」
「お父さん!」
生き別れていたメラニーとカリアンが、抱きしめ合う。
この場で、野暮なことを言う者は誰一人としていない。
ダニエルズ兄弟に至っては感動し、拍手をしようとしてゾーイとジェーンに止められていた。
しばらく抱擁をしていたふたりがそっと離れる。
カリアンは続いて、戸惑いを抱いているように見えるクラリスと、ティーリング子爵にも挨拶をする。
「君がクラリスだね。私はカリアン・ショーン。おじいちゃんと名乗っていいのか迷うところですが、あなたのお母さんのお父さんです」
「おじいちゃん?」
「そう呼んでもらえるのならとても嬉しく思います」
クラリスの頭を優しくカリアンが撫でる。
少し照れたようにはにかんだクラリスは、祖父の登場を喜んでいるように見えた。
「スティーブン・ティーリング子爵殿。娘を、メラニーを良くしてくれているようで感謝します。生き別れていた娘が、今幸せそうなのはあなたのおかげです」
「いいえ。私の方こそ、メラニーに幸せをもらいました」
カリアンとスティーブンが握手を交わす。
続いて、カリアンは妊婦なので椅子に座ってもらっているリーゼたちの前に立ち、腰を折る。
「この流れからお察しいただいていると思われますが、サミュエル・シャイトくんの母親の父です」
「回りくどいから祖父って名乗ってよ」
「よろしいのですか?」
あえて祖父だと名乗らなかったカリアンに、サムは肩をすくめる。
「プライベートなんでしょ?」
「ありがとうございます。では、改めまして、サミュエル・シャイトくんの祖父カリアン・ショーンです」
丁寧にお辞儀をしたカリアンにリーゼたちも、一度立ち上がり挨拶をする。が、声高々に、カリアンの手を握りしめて、ギュン子が叫んだ。
「お初にお目にかかります、おじいさま! 僕は、ギュン子・イグナーツ! サムの正妻です!」
〜〜あとがき〜〜
今はこれが、精一杯……ですわ!
新作もよろしくお願い致しますわ!
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