14「祖父が来ました」②





「ちょっと、ギュンター! よりによってお祖父様の前で!」

「ふははははは、リーゼ! 甘い、砂糖菓子のように甘いよ! こういうのは名乗ったもの勝ちなのだよ!」

「そういう問題じゃないでしょう!」


 我れ先にと正妻を名乗った図々しいギュン子に、リーゼたちが抗議する。

 いつも通りの光景だった。

 カリアンにとっては初めてなのだが、彼は少し驚いた顔をしてから、サムに振り向き微笑んだ。


「賑やかで、素敵ですね。きっと楽しい日々を送っているのだと思います。魅力的な奥様たちに囲まれて、サミュエルくんは幸せ者ですね」

「……ありがとうございます。でも、ひとり奥様じゃないんですけど」

「わかっていますよ。おそらく、彼がギュンター・イグナーツ殿ですね」

「ええ、それです。その生物が、ギュンター・イグナーツです」


 サムが疲れたように言う。

 ギュンターの言動はいつものことだったので、流せるようになってきた。

 慣れとは恐ろしい。

 ただ、リーゼたちは、サムの祖父であるカリアンへの挨拶を邪魔されてご立腹だ。もっとも、祖父の前でギュンターに仕置きをするわけにはいかず我慢しているようだが、それぞれこめかみを引き攣らせているのがわかった。

 その後、リーゼ、アリシア、ステラ、フラン、水樹、花蓮、オフェーリア、イーディスと挨拶をしていく。

 そして、準魔王ゾーイ、ジェーン、カル、魔王エヴァンジェリンとも挨拶を交わした。

 ここまではあくまでも妻、婚約者としてだ。続いて、ジョナサン、デライト、蔵人、魔王ダグラスとも挨拶をした。


「いやはやまさか、準魔王殿と婚約しているとは……驚きました」

「いや、あの、婚約というわけでは」

「とくにジェーン・エイド殿はお久しぶりですね。何年も前に、娘が無謀に挑み殺さずに返してくださったこと感謝しています」

「いえ、殺す必要はないと思っただけです」

「そういえば、お前だったな! そのあと魔王遠藤友也に陵辱されたせいですっかり忘れていたぞ!」


 どうやらマクナマラはジェーンに喧嘩を売って敗北したことがあるらしい。そして、どのような経緯かは不明だが、遠藤友也にラッキースケベられていたようだ。


(友也もラッキースケベってない相手の方が多いんじゃないかなぁ?)


 聞けば、ギュンターもされている。


(――しまった。俺、女体化してるじゃん! 今ラッキースケベられたら……大変なことになる!?)


 サムは友也から距離を取る。


「あの、サム? なぜ僕から離れたんですか?」

「いや、あの、今は女の子になっちゃってるし、変なことされたくないなーって」

「……最近、警戒されてばかりで辛いです」


 おそらく最近始まったわけではないが、友也は落ち込んでします。

 そんな友也にカリアンが声をかけた。


「しかし、まさか、魔王の中で最も恐ろしいとされる遠藤友也殿が……こうも可愛らしくなってしまうとは……エヴァンジェリン・アラヒー殿の呪いはさすがですね」

「放っておいてください!」

「こっちは呪いたくて呪ったわけじゃねーんだよ!」

「なんといいますか、この国は不思議です。魔王が魔王ではなく、ただの国民のように普通に暮らしている。これは、この国が異常なのか、それとも懐が深いだけなのか、悩みますね」


 きっと異常の方だよ、と言いそうになってサムは言葉を飲み込んだ。


「そんなことはどうでもいいんです。カリアン・ショーン。あなたはスカイ王国になにをするつもりですか? まさか本当に御息女を迎えにきたついでにサムを祝おうとでも?」

「ええ、嘘偽りなくその通りです」

「……本当でしょうか?」

「いくら私が神聖ディザイア国の枢機卿としての立場があるとしても、ここで魔族とやりあうほど愚かではありません。それに、再会できた娘に失望されたくもありませんしね」

「……狂信者の割には話ができる、と感心するべきでしょうかね」

「さて、どうでしょう。少なくとも、娘を悲しませることはしないと約束しましょう。ところで」

「なんでしょう?」


 カリアンは、至極真面目な顔をして真っ直ぐに友也を見つめた。


「遠藤友也殿は、娘の下半身を強制的に露出させたそうですが、その責任はいかに囮になるつもりでしょうか?」

「うわぁ」


 サムが、ないわー、という顔を友也に向ける。

 ギュンターやリーゼたちも、「ええぇ」と困惑した顔をした。

 そして、責任の話となり、友也は顔を青くした。





 〜〜あとがきですわ〜〜

 友子ちゃんに最大の危機ですわ!


 新作始めておりますので何卒よろしくお願い致しますわ!

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